――先日、放送された第22話は拓海にスポットライトが当たるエピソードでした。振り返ってみての印象は？
内田　まだそれほど拓海のキャラクターが掘り下げられているわけではありませんが、彼は自分がお世話になった人たちに対して、まっすぐ向き合って力になりたいと考える、そういう子なんだなと思いました。やっぱり、ゆいたちといるときは「カッコいい自分を見せたい」みたいなところが前に出てきがちだと思うんです。でも、このエピソードではそうじゃない、素直な拓海が描かれていたかな、と。僕自身、彼のそういう姿を見たのは初めてだったので、うれしかったですね。

――拓海の内面が少し見えたようで印象的でした。作品に参加する前は『プリキュア』シリーズに対して、どういうイメージを持っていましたか？
内田　僕が『プリキュア』を見ていたのは初期の頃で、それこそ中学生になったくらいのときにやっていた『ふたりはプリキュア』ですね。決して熱心に見ていたわけではないんですけど、主題歌も印象的で強く記憶に残っています。実際に現場に入ってみたら、『プリキュア』シリーズは見ている人をすごく大切にしている作品なんだな、と強く感じました。もともと小さな女の子たちに向けて作られているシリーズですけど、そういう子たちが見てもよくわかるストーリーだし、お芝居にしてもやっぱり、わかりやすさみたいなものが求められる印象です。

――視聴者にしっかり伝わる表現ということですね。
内田　僕は普段、お芝居をあまり大きくしない作り方をしているんですけど、『プリキュア』に関しては、デフォルメしたお芝居と自然な流れのなかで生まれてくる表現、その間（あいだ）を取ってお芝居をしている感じですね。そうやってわかりやすいお芝居をすることでストーリーが際立つというか。子どもが見て楽しめるし、僕らみたいな世代の人が見ると、大事なものを思い出させてもらえる。それは、きっとどのシリーズもしっかりとテーマを持って作られているからこそなんだろうな、と。そこは強く感じました。

――なるほど。少しさかのぼって聞きたいのですが、オーディションを受けた際の拓海に対する第一印象は？
内田　演じるにあたっては、拓海は中学生なので、その年齢なりの感じをどうお芝居で表現するのかいいのかな、とまず考えました。これまでの『プリキュア』シリーズを振り返ると、あえて若く作らずに、そのキャラクターの人間性みたいなものが前に出たほうがいいのかなと思ったので、最初のオーディションのときは声もあまり若く作らず、むしろ彼が持っている一生懸命な部分だったり、ぶっきらぼうだけど根っこのところにある優しさを大事にする。そう意識していました。

――実際に収録が始まって、その印象に変化はありましたか？
内田　拓海に関しては現場に持っていったものをわりと尊重していただくことが多いんですけど……。ただ、拓海のかわいらしい部分というか、好きな子に対して素直になれないところや、ちょっとした心のブレが大きく出てしまう部分は大切にしてほしい、という話はありました。おそらく、カッコいい拓海とかわいい拓海、その両方を見せたいということだと思うんですけど。ゆいに対して年上っぽく振る舞っているつもりなんだけど、でも外から見るとちゃんとたじろいでいたりする（笑）。そういう感じに見えるといいのかな、と。

――年齢なりのかわいらしい部分も、ちゃんと見せておきたい、と。
内田　むしろ大変だったのは、ブラックペッパーのほうですね。外見は変わっているんですけど、中身は品田拓海のままなんですよ。にもかかわらず、シリーズディレクターの深澤（敏則）さんからは「ブラックペッパーはちょっとカッコよく、落ち着いた感じに見せたい」という注文があって。単純に声を変えることはできるんですけど、それだとちょっとニュアンスが違ってしまう。視聴者に拓海を愛してもらうためには、ブラックペッパーがカッコよく振る舞っている理由が、普段の拓海からちゃんとつながるようにしたほうがいいだろうと考えました。

――拓海とブラックペッパーが別人格に見えないように、ということですね。
内田　そうですね。で、僕の中での結論として、ゆいたちに正体がバレたくないから、というのがひとつ（笑）。あと、変身したことによって、拓海としてもちょっと「決めたい」という気持ちがあるんだろう、と思ったんです。ある意味、大人な男を演じていて、だから一人称も「私」になったりする。それが拓海の想像する「大人っぽさ」とか「紳士」のイメージなんだろう、と。だから落ち着いて話せる状況では、ちゃんと大人っぽく装っているんだけど、そうじゃないとき――たとえば、バトルシーンのリアクションなんかは素の拓海が出てくる。そういう印象で演じていますね。

――第22話は、まさにそういう拓海の自然な感情とカッコいいブラックペッパーの姿が描かれたエピソードになっていました。
内田　そうですね。まあ、（第13話で）クローゼットにしまってあるブラックペッパーの衣装を見て迷っているところで、ミステリアスな印象は消えたと思っているんですが（笑）。あのエピソードはきっと「闘うことを選んだ」ことの象徴だったんだと思います。ブラックペッパーは、ゆいたちにとって憧れの存在なんかではなくて、あくまでも自分が守りたいものに対して、同じ目線で闘う同志みたいな存在なんだろう、と。

――なるほど。
内田　ゆいは「ごはんは笑顔」だって言いますけど、彼女にとって、ごはんから生まれるみんなの幸せを奪うことは決して許せないことです。それと同じように、拓海にとってゆいの笑顔はすごく大切なもので。その笑顔を守りたいと思っているから、一生懸命に戦う。ミステリアスなところよりも、その一生懸命な部分が、彼のいいところなんだろうなと思いながら演じています。