TOPICS 2022.11.28 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」
第2回 学校生活を思い出して自己投影してしまうSHISHAMOさんの「中庭の少女たち」(前編)

20歳を迎えた声優・伊達さゆりのお気に入りや、心に残っているものを取り上げながら自らを語るフォト&インタビュー連載。第2回では、3ピース・ガールズ・ロックバンド、SHISHAMOの「中庭の少女たち」をピックアップ。ティーンの心情と共鳴する楽曲の魅力とともに、学校に通っていた頃の思い出を振り返る。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

「学校」同士、似ているところ、違うところ

――今回は「3331 Arts Chiyoda」という、中学校を改装したアートセンターを借りての撮影だったのですが、どんな印象でしたか?
伊達 すごくおしゃれなところでびっくりしたのですが、中庭の階段など、私の通っていた学校と似ているなと思うところもありました。私は学校が大好きだったので、今でも行きたいなと思うことがあって、学校独特のにおいや、友達との何気ない会話を思い出せました。すごくうれしかったです。

――逆に、地元の学校とは違うなと感じたところはありますか?
伊達 まず、学校のまわりに学校より高い建物が建っている光景にハッとしました。撮影中、屋上に登ったときに気づいたのですが、私が通っていた学校のまわりには木が生えていたり、2階建ての家が建っていたくらいで、とにかく学校がいちばん大きくて高い建物という印象が強かったんです。でも、東京だとそういうわけでもないんだと。もし、私が子供の頃ここに通っていたら、きっと今とは違う考え方を持っていた気がしますし、環境の違いって、こういうところに表れるんだなと思いました。

「わかってる」の繰り返しは本当に「わかってる」

――連載第2回のテーマに挙げてもらったのは、SHISHAMOの「中庭の少女たち」という楽曲です。発表は2016年ですね。
伊達 最初に聞いたのは発表直後ではなく、わりと最近だったと思います。『SHISHAMO 3』というアルバムに収録されているのですが、収録順に聞いていてイントロが流れているあいだに歌詞が気になって、先に歌詞を読んでから楽曲を聞いた記憶があります。SHISHAMOさんは、恋愛系の曲が多いというイメージを勝手に持っていたので、こういう青春路線の楽曲もあるんだと驚きました。歌詞に書かれている気持ちと自分の思い出がすごくリンクしたんです。きっと書かれている歌詞は中学~高校生くらいの女の子の気持ちだと思うのですが、「私もあのとき、こんな気持ちだったなぁ」と思ったことをそのまま歌ってくれているような気がして。もちろん、メロディも大好きなのですが、まず歌詞に強く惹かれました。

――歌詞の中で、とくに心に響いたフレーズはありますか?
伊達 サビ前の「わかってる」という歌詞が3回続いている部分、ここが好きです。その直前に「いつまでも一緒は 絶対ないよね」というフレーズがあるのですが、本当にそれは「わかってる」ことなんですよね。私も高校時代、卒業が近くなった頃に友達とおしゃべりをしていて「こんな風に笑い合えなくなる日が来るのかな」と考えることがあって、だからこそもっとこの場を盛り上げたいな、もっと思い出を作りたいなという気持ちになりました。あと、「私たち、ずっと一緒だよね」と面と向かって言うのは照れくさい気持ちがあって(笑)。

――たしかに、直接伝えようとすると勇気が必要な言葉ですね。
伊達 たとえ言ったところで、実際にずっと一緒にいられるわけでもないじゃないですか。だから自分にずっと言い聞かせている「わかってる」なんだと思います。いかにも年頃の女の子が言いそうなフレーズだなと。私も両親によく「わかってる」と言っていましたし(笑)。

――でも、当事者だった中高生時代には書けない歌詞ですよね。懐かしさとか寂しさと一緒に振り返らないと出てこない気がします。
伊達 そうですね。私も当時だったら絶対に言葉にできなかったと思います。サビの最後の「なんて、私だけなのかなぁ」という部分も、(ボーカルの)宮崎朝子さんの歌い方ともあいまって、切ない響きですよね。大人になって、仲よしだった子たちと集まる機会があっても、制服を着てお弁当を食べたり、面白い先生の話をしたり、勉強やテストの話をしたり……といった同じようなことはもうできないので、離れ離れにはならなくても、もうあのときの私たちではないんだよね、という寂しさが伝わる絶妙な歌詞だなと思います。

卒業が寂しかったのは、それだけ楽しかったから

――小学校、中学校、高校時代のうち、いちばん楽しかったのはどの時代ですか?
伊達 高校ですね。じつは高校生活の後半くらいから新型コロナが流行し始めたんです。体育祭や文化祭は開催できたのですが、やはりある程度、制限があったので、行事の楽しさは高校よりも中学のほうが大きかったと思うんですよね。でも、卒業がいちばん寂しく感じたのは高校だったので、寂しいということはそれだけ楽しかったんだろうなと。

――その寂しさは、やはり地元を離れることになったのが大きかったですか?
伊達 それは絶対にあると思います。高校卒業と同時に学校の友達だけでなく地元の友達みんなとバイバイしないといけなくなりましたから。だから、やっぱり高校時代がいちばん印象に残っていますね。endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。
撮影協力

3331 Arts Chiyoda
住所/東京都千代田区外神田6-11-14
電話/03-5817-8988
開館時間/10:00~21:00(内部で行われる展覧会の時間はそれぞれ異なります)
アクセス/銀座線末広町駅4出口徒歩1分

2022年12月10日(土)~12月25日(日)
『ポコラート全国公募展 vol.10』開催
『ポコラート全国公募』は障がいのある人、ない人、年齢・経験にかかわらず、
自由な表現の場を生み出すべく 2011 年よりスタートした全国公募です。
※詳細はポコラートの公式HPで順次公開いたします。