黒崎一護と石田雨竜の関係は?
死神と滅却師の因縁
『BLEACH』の主人公・黒崎一護と、『千年血戦篇』のキーパーソンである石田雨竜の関係について、ここであらためて振り返っておこう。そもそもふたりは同じ高校のクラスメイト。「死神代行(※1)」となった一護の前に現れた雨竜は、自分が「滅却師(クインシー)(※2)」の末裔であることを告げ、一護に対し敵意をあらわにする。その敵意の理由は、死神と滅却師という立場の違いによるもの。死神と滅却師は千年以上にわたって対立しており、200年前、死神が滅却師の一族を滅ぼしたという過去がある。雨竜はその数少ない生き残りなのだ。
では、なぜ死神は滅却師を滅ぼしたのだろうか? 現世に現れた「虚(ホロウ)(※3)」を退治するという意味では同じ役割を持つ死神と滅却師だが、対立する理由は虚の扱いの違いにある。退治した虚の魂魄を「尸魂界(ソウル・ソサエティ)」に返すことで現世と尸魂界、つまり世界の均衡を保とうとしている死神に対し、滅却師は虚をこの世から完全に消滅させることを目的としている。簡単に言えば、悪霊を成仏させてあの世に送るか、悪霊そのものを根絶するかの違いである。作中で開示されている情報によると、虚を根絶すると魂魄の均衡が崩れ、世界が消滅してしまうとされており、死神が滅却師を滅ぼしたのは、世界を守るためにやむを得ない措置だったとされている。
- (※1)死神代行 尸魂界から能力を買われ、死神としての権利を行使することができるようになった者。一護の場合は朽木ルキアから死神の力を譲渡されたことで、虚退治をするようになった。
- (※2)滅却師(クインシー) 虚と戦い、殲滅(せんめつ)することを目的とする集団。死神が自らの霊力で戦うのに対し、大気中の霊子を集めて己の力とするなど、戦闘スタイルは死神と大きく異なる。200年前、死神たちの手によってほとんどの滅却師は殺されている。
- (※3)虚(ホロウ) 生者・死者を区別なく襲い、魂を喰らう存在。もともとは普通の人間の魂だが、さまざまな原因により邪悪化し、現世に現れて人間に危害を加えようとする。虚を倒すことで、その魂魄を尸魂界へと昇華し、現世と尸魂界にある魂魄の量を均等に保つことが死神の大きな役割。
“因縁”を越え戦友に
一護と雨竜は本当に険悪な仲なのだろうか? じつは、そうでもない。虚を倒すために一護と共闘したことをきっかけに、雨竜は一護たちの戦友となる。滅却師という立場上、死神のことは憎んでいるし、一護に対するライバル心もあるが、なんだかんだでピンチには駆けつけてくれるなど、一護や仲間たちのために戦ってくれる。さらに、一護や仲間たちとともに死線をくぐり抜けていくうちに、当初は生真面目で頑固だった姿勢も徐々に軟化、一護とは口喧嘩こそ絶えないものの、次第に心を許すようになってきた。『千年血戦篇』第2話で井上織姫が「石田君、黒崎君と仲良くなったなあって思って」と指摘しているのは、こうした長いふたりの関係性を、そばで見守ってきた織姫だからこそのセリフなのだ。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:2より
一方で、雨竜は滅却師の末裔であることに誇りを持っており、死神に対して全面的に協力するということはない。これまでにたびたび一護に協力してきたのは、戦う相手が虚や一護たちと敵対関係にある死神であったことや、一護が正式な死神ではなく死神代行という立場であったことが大きい。『千年血戦篇』第2話において、雨竜が一護たちに協力できなかったのは救出する相手が「破面(アランカル)(※4)」、つまり滅却師の敵だったからだ。そういう意味では、一護も『破面篇』で多くの破面たちと戦ってきた過去を持つが、自分を頼ってきたネルたちとは友好関係を築いており、ゆえに見捨てるわけにはいかなかったのだ。己の信念にしたがい、敵でも救おうとする一護と、あくまで滅却師という立場を守り続ける雨竜。お互いの立場を尊重し、決して強要はしない絶妙な距離感が垣間見えたシーンだ。
- (※4)破面(アランカル) 仮面を外し、死神の力を手に入れた虚。死神と同じく「斬魄刀(ざんばくとう)」を持ち、人間に近しい外見をしている者も多い。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:2より
雨竜の決断、その真意は?
『千年血戦篇』がこれまでと大きく異なる点は、一護たちの敵が、ユーハバッハ率いる滅却師の一団「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)(※5)」であるということだ。雨竜はそれまで自分のことを滅却師最後の生き残りだと思っていたが、それは師匠だった祖父の宗弦が死んだことと、父・竜弦が滅却師として活動をしていないというのが理由だった。しかし、『千年血戦篇』に入って、その状況は大きく変化した。すべての滅却師の始祖であるユーハバッハが復活し、再び滅却師の一団が現れたこと、さらには母親の死にユーハバッハが関与していたことなど、ここへきてあらためて己のルーツを突きつけられた雨竜の心境はどのようなものだろう?
ちなみに『千年血戦篇』第3話で、キルゲ・オピーが「石田雨竜の神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)が私より弱い? 妙ですね。そんなはずはない」と発言しているが、これはユーハバッハが雨竜のことを高く評価していることを聞き及んでいたのか、あるいはキルゲ自身が雨竜の潜在能力を見抜いていたのか、今のところは不明である。
- (※5)見えざる帝国(ヴァンデンライヒ) ユーハバッハが率いる滅却師の帝国。かつて「光の帝国(リヒト・ライヒ)」と名乗り、千年前に尸魂界へ侵攻するも、山本元柳斎重國の率いる初代護廷十三隊を相手に壊滅。ところが、千年の時を経てユーハバッハが復活し、死神たちに再び牙を剥く。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:3より
そして『千年血戦篇』第13話は、目の前に現れた雨竜に対する「さあ、ともに戦おう。我が息子よ」というユーハバッハのセリフで締めくくられることとなった。このラストシーンには多くの視聴者が衝撃を受けたことだろう。一護のライバルであり友でもある雨竜は、果たして本当に死神と敵対する道を選んだのだろうか? 彼の言動の真意は、このあと描かれていくに違いない。
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:13より
TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」Episode:13より