TOPICS 2024.11.01 │ 11:01

【個展開催記念】
イラストレーター・LAM×Febri オリジナル企画 太陽に仕える12人の星娘たち(後編)

11月1日より開催中のLAMの個展「千客万雷」。4年半ぶりに開催される個展では商業作品とオリジナル作品から厳選されたイラストが一挙に展示される。今回は個展準備中のLAMに個展のみどころとFebriで1年間連載を担当した「太陽に仕える12人の星娘(ほしむすめ)」のイラスト制作について聞いた。

取材・文/編集部

※2024年10月16日に取材

そこでしか味わえない感動体験を届けたい

――LAMさんの個展「千客万雷」の開催を控えた今の気持ちを聞かせてください。
LAM 4年半前に表参道で行った初個展「目と雷」以来なので、すごく久しぶりでワクワクしています。同時に、今までにない規模感でたくさんの方々にご協力いただきながら準備をしているので、必ず前回以上に喜んでもらえる展示にするぞという気持ちでいます。とても面白い個展になっていると思うので、 楽しみにしていてください。

――今回の個展のコンセプトを教えてください。
LAM 「千客万雷」というタイトルは、前回の個展がコロナ禍で人が足を運びづらい状況になってしまったので、今回はたくさんの人が来てくださったらいいなという願掛けの意味を込めています。画面を通してではなく物理的な空間全体を作品にした、いつもと違う手法でファンの皆様に感謝の気持ちと感動体験を届けたかったんです。SNSやYouTubeなどで上質なイラストやミュージックビデオなどを無料で見られる時代です。会場にただ絵を飾るのではく、お金を払って見ていただく以上、遊園地やテーマパークに来たみたいな気分になってほしいという想いもあります。

――個展ではお客さんの「体験」を大事にしているんですね。
LAM はい。今回の会場は10以上の空間で構成されています。ありがたいことに今までたくさんの商業作品にかかわらせていただいたので、会場の前半はお仕事で描かせていただいた絵のエリアで、後半はオリジナル作品のエリアの2段構えになっています。各空間の見せ方は作品の内容に特化したものを準備しています。Febriさんで連載した「太陽に仕える12人の星娘たち」のエリアは、宇宙空間みたいな部屋を作ってそこに天体のように絵を並べました。

――個展の見どころを教えてください。
LAM 全部と言いたいところですが、強いて言うなら会場後半のオリジナル作品の展示エリアをぜひ見ていただきたいです。これまでにやったことのない出力方法でチャレンジしたので、見ごたえのある面白い空間になっていると思います。

バリエーションにあふれた魅力的な女の子を描きたかった

――とても楽しみです。では「太陽に仕える12人の星娘たち」の話に移らせてください。前編では火星まで聞いたので、木星からお願いします。
LAM 木星は『takt op. 運命は真紅き旋律の街を(以下、takt.op)』で同名のキャラクターを描かせていただいたあとだったので、同じ天体をルーツにしているものをどう描き分けるか悩みました。もともと木星は怪しいガスに覆われている惑星、そしてすごく美しい惑星というふたつのイメージがあったので、今回は惑星自体が持つ特徴や歴史、天体としての他の惑星との違いに焦点を当てて描きました。結果的にキョンシーになるとは全然思っていなかったのですが(笑)。

――イラストを公開したときのコメントを見ると、木星はキョンシーのふりをしているとありますね。
LAM 彼女たちはあくまでも星娘という天体の女神なので、キョンシーそのものではなく、キョンシー好きという設定にしました。キョンシーにすると関節が動かない設定になってしまい、今後この娘を物語で動かしていくときにハードルになると思ってやめたんです。

――次は土星について教えてください。
LAM 土星は輪っかがいちばんの特徴なので、それを活かせるようなデザインにしたいというのが最初にありました。そこから輪っかが帽子のつばになっていたら面白いんじゃないかと思って「魔女」というイメージを考えていたんです。で、魔女っ娘にするところまで決まって、なおかつ土星の持つ色味の美しさや、ローマ神話に登場するサートゥルヌスやサターン(サートゥルヌスの英語名)というワードそのものの持つ歴史的な魅力や中二病的な要素を詰め込むなら、キャッチーなモチーフで固めたキャラクターにすれば、その複雑さに耐えられるだろうと。今回かなり遊び心を入れたデザインにしたので、個人的にもお気に入りのキャラクターです。

――次は天王星です。
LAM 最初は「のぺっとした惑星だな……」くらいの印象でした。今回描かせていただくにあたっていろいろ調べたところ、天王星はその衛星にシェイクスピアやアレキサンダー・ポープの作品に登場する人物の名前が付けられた、文学的なニュアンスや歴史のエッセンスを持った惑星だったんです。文学にからめて名づけるくらい神秘的な存在なんだろうと思ったので、その「文学」というエッセンスを持たせた女の子にしました。もうひとつは眼鏡っ子をずっと描きたいと思っていたので「文学好きで眼鏡っ子のおさげの女の子」という僕の好きな古き良き文学少女をイメージしました。なので、本好きということから頭の飾りに「本の虫」をあしらっています。

――次は海王星です。これはラフから少しポーズが変わりましたね。
LAM 「星娘シリーズ」を連載していくにあたって、つまらない連載になったら終わりだとずっと考えていました。そして星娘だからといって美しくて可憐なキャラクターじゃなきゃダメだとは一切思っていなかったので、僕からの提案は基本的に尖ったものが多かったと思います。12個の天体を描かせていただくとなったときに、ひとつたりとも似たようなものがなかったり、逆に意外なところで共通項があったりするのが惑星の面白さなので、モチーフにするなら魅力的でバリエーションにあふれた女の子たちを描いてあげたかったんです。

海王星についていえば、まず海のイメージからウミネコ、ネコというワードから猫耳を付けました。さらに「ダイヤモンドの雨」というイメージがあったので、とにかくたくさんダイヤモンド描こうと決めていたんです。そして宝石をたくさん描くなら、人間らしい丸みのある有機的な身体つきと対比させたかったのと、ポセイドンという神様のイメージからクレオパトラみたいなエキゾチックさも意識して露出が高い水着的な衣装にしました。

「テーマに沿ったキャラクターデザイン」が好きなんだとあらためて感じた

――次は、このシリーズでも珍しいふたりで構成された冥王星です。「死と再生」というテーマから「白と黒」「蝶」「髑髏」のイメージがあったとか。
LAM 冥王星が衛星のカロンとあわせて二重惑星とみなされることもあるという話を聞いて「これしかない!」と思い、双子のイメージで描きました。「星娘シリーズ」はすべて正面のバストアップで描いているのですが、これは決められたフォーマットで対称的な美しさを描きたいと思っていたんです。なので、冥王星は真ん中に合わせて、なおかつ左右上下対称は崩さず、ふたりが相対するような白と黒の女の子にしました。

――だから12人を並べても違和感がないんですね。
LAM そうです。冥王星は扱うモチーフがダーク寄りになりそうだったので、黒色の寒々しい絵にしすぎないように背景の色をショッキングピンクにしてガーリーな双子の女の子、そして死と再生の女神様みたいなイメージで描きました。蝶は冥界の地獄蝶をイメージしています。

――次はハレー彗星です。
LAM ハレー彗星と言えば「凶兆」いうイメージで、世界に恐怖や不安を与える存在なので、ダークな占い師みたいな娘がいいんじゃないかと思いました。この連載ではストーリーを並行して考えていたので、この娘たちは普段どういうことをして、どんなときに集まって、どんな話をすんだろう、みたいなことを考えたときに、物語を動かす狂言回し的な存在が欲しいと思ったんです。ハレー彗星という約75年周期で一度現れる謎の彗星が奇妙な占いを告げて物語が動き出す……みたいなストーリーです。星娘たちの間でも勢力やパワーバランスがあると思いますが、ハレー彗星はその理(ことわり)から外れた異質な存在として描きました。なので、惑星由来のエピソードから汲み取ったというよりは、「星娘シリーズ」という物語の役割を踏まえてデザインをしています。

――最後はバルカンです。これは架空の惑星ですね。
LAM これまでの星娘たちは天体の特徴や歴史的なエピソードから着想を得て描いてきましたが、バルカンは一転して実在しない仮説上の惑星なので、どんなものを描いてもいいという(笑)。なので、僕なりにバルカンという惑星を好きに描こうと思いました。同時に、先ほど「他の星娘とハレー彗星は違う」という話をしましたが、ハレー彗星とバルカンのふたりは他の10人の星娘たちとは明確に区別しています。

バルカンは仮説上の惑星なので、背景は惑星ではなくキューブの集合体みたいなものを描きました。これはデジタルデータやフィクション的な表現を意識しています。さらにイラストの上部に「VULCAN」というアルファベットを変形させて歪ませていますが、文字を入れるのも初めての試みでした。あと、このバルカンは僕が考えたイメージの惑星なので、僕のアイコンをたくさん入れています(笑)。ハレー彗星が物語上の狂言回しだとするなら、バルカンは物語の外からメタ的な存在としての狂言回しといったイメージです。なので、服装も現代的で今までの星娘たちの持つトンマナ(デザインやスタイル)とは異なるようなビジュアルになっているんです。

――1年間にわたる今回の連載はLAMさんにとってどんな仕事になりましたか?
LAM Febriさんにはご迷惑をおかけしてばかりだったのですが、最後まで一緒に作ってくださったおかげで無事12人の星娘たちを描き上げることができました。本当に楽しかったです。僕ってつくづく「テーマに沿ったキャラクターデザイン」が好きなんだなとあらためて感じました。「星娘シリーズ」は天体、『takt.op』はクラシック音楽をモチーフにしたキャラクターデザインと、お題があってそれにどう答えるのかを考えるのがすごく好きなんだと。他の人がしないような解釈や、自分だからこそできる解釈が絵を描くモチベーションになっていました。

――こちらもとても楽しかったです。
LAM うれしいです。ひとつのテーマで 10枚以上、オリジナルのイラストを描かせていただく機会もなかなかないですし、1年間通してFebriさんというメディアの看板を担当させていただけたことが光栄なことだと思うので、テーマを預けてくださってありがとうございますという気持ちでいっぱいです。endmark

LAM
らむ デジタルアーティスト。クールでキャッチーな作風が人気を集め、キャラクターデザインやビジュアルワーク、書籍イラストなどを手がける。『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』キャラクターデザイン、『ZONe ENERGY』オフィシャルアンバサダーなど活動は多岐にわたる。

◎LAM先生直筆サイン入りレイヤードグラフ®ご予約受付中
お申し込みはこちらから
<LAM個展-千客万雷-にてサンプルを展示中>
LAM先生がWebメディア「Febri」のサイトで1年間連載をして描き下ろした「太陽に仕える12人の星娘たち」のレイヤードグラフ® が遂に登場。
LAM先生の直筆サイン入りオリジナルグッズです。
本商品は受注生産となります。ぜひ受付期間内にお申込みください。

個展情報

LAM個展-千客万雷-

<東京会場>
開催期間:2024年11月1日~12月2日まで
会場:Space Galleria
   〒170-0013
   東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店8F
開催時間:月~金 11:00~21:00
     土・日・祝 10:00~20:00
最終入場は閉場の30分前まで※最終日12月2日は17:00閉場(16:30最終入場)
状況により営業時間は変更になる場合がございます。
入場は入れ替え制ではございません。
運営状況については公式X(旧Twitter)でご案内いたします。

<大阪会場>
開催期間:2025年1月10日~2月3日
会場:Space Gratus
   〒556-0005
   大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F
開催時間:月~金 11:00~20:00
     土・日・祝 10:00~20:00
最終入場は閉場の30分前まで ※最終日2月3日は17:00閉場(16:30最終入場)
状況により営業時間は変更になる場合がございます。
入場は入れ替え制ではございません。

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