Febri TALK 2025.04.21 │ 12:00

社築 バーチャルYouTuber

①ありえないオタクの夢を叶えてくれた
『ハッカドール THE あにめ~しょん』

豊富なオタク知識を活かしたトークや高いゲームスキルなどで人気のVTuber社築(やしろきずく)に、大きな影響を受けたアニメについて語ってもらうインタビュー連載。第1回で取り上げるのは、VTuberグループ「にじさんじ」での活動を始めたあと、「最初の夢を叶えてくれた」ギャグアニメだ。

取材・文/丸本大輔

アニメとして大好きだったけど、より特別な作品になった

――最初の作品は、スマートフォン向けニュースアプリ「ハッカドール」から誕生した作品、『ハッカドール THE あにめ~しょん』。見習いパーソナルエンタメAIのハッカドール1号、2号、3号が、さまざまな場所に派遣されて、誰かを「捗(はかど)らせる」ために奮闘していく作品です。
 僕は、2018年の6月にVTuberとしてデビューしたのですが、それ以前から大好きなアニメでした。そして僕がデビューする少し前(2018年3月)に、「ハッカドール」のキャラクターもVTuberとして活動を始めていたんです。ただ、最初は「ハッカドール」が好きだってことは、配信でも話していませんでした。変に好きだとアピールして、つながろうとしているみたいに見えたら嫌だし、迷惑もかけたくなかったので、陰から見ている感じでした。ただ、アニメをきっかけに使っていた「ハッカドール」のアプリの通知が配信中に鳴ってしまって(笑)。

――何かのニュースが届いて、生配信でバレてしまったと。
 バレたならいいやと思って、「『ハッカドール』が好きなんです」って話をしたら、それが『ハッカドール』の公式さんにも伝わったみたいで。声をかけていただき、1号ちゃん(ハッカドール1号)とコラボ配信ができたんです。

――2019年の2月13日に社さんが「ハッカドール」のアプリをPRする配信を行い、ゲストとしてVTuberのハッカドール1号が登場しました。
 アニメの好きなキャラクターとお話しできるって、普通に考えるとありえないオタクの夢なんですよね。好きなキャラクターの声優さんとお話しできるのとは、全然違うことなので。

――本来は、実現できることではなく、妄想止まりの夢ですね。
 お互いにVTuberだからこそ実現できたことなんです。僕の前に、ねこますさん(当時は、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん)が、『狼と香辛料』のホロとVR上でお話ししたことがあって。僕の知る限り、たぶん、初めてのオタクとアニメキャラの邂逅(かいこう)だったと思うんですけど、それを自分もできたことがうれしくて、夢を叶えてもらったというか。VTuberは、こんな夢も叶えられる活動なんだって、視野がすごく広がったし、活動に対するモチベーションもかなり上がりました。

――その後の活動にも大きな影響があったわけですね。
 VTuberって基本的に何かを供給する側ですが、受け手の気持ちも忘れちゃいけないと思うんです。それに、僕はオタクであることを隠していないし、オタクであることが誰かに元気を与えられるんじゃないかなとも思っているんですね。1号ちゃんとのコラボでは、1号ちゃんと話せたことをオタクとして喜んで、それをそのまま配信に乗せられた。受け手になりつつ供給もするみたいなことをできたという意味でも、すごく印象深くて。あのときの感動は、自分の活動の原点です。もともと、アニメーションとして大好きだったんですけど、それとは別軸で、より特別な作品になりました。

「今日も一日がんばるぞい!」を本家よりも先にアニメでやった

――『ハッカドール THE あにめ~しょん』の作品としての魅力を教えてください。
 メインキャラクターがみんな可愛いんですけど、可愛いだけのアニメではなく、パロディネタがいっぱい入ったギャグアニメなんです。可愛い子たちが身体を張って汚れ仕事もしているみたいな(笑)。僕は、当時からIT企業で社畜として働いていて、毎日すごく疲れていたんですね。そんな中、アニメを見るのは数少ない楽しみで、『ハッカドール』のやりたい放題で自由な感じが大好きでした。3人に作画崩壊をネタにした歌を歌わせたりして(笑)。

――第2話でアイドルになったハッカドールたちが歌う「キャベツ検定」ですね。その他にも、とくに好きなエピソードやシーンを教えてください。
 いろいろありますが、『SHIROBAKO』をモロにパロディした(第7話の)『KUROBAKO』とか好きです。

――タイトルからして隠す気がないですよね。
 ド直球なんですよ。『SHIROBAKO』は、アニメ業界の素敵なところも大変なところも描いた作品でしたが、『KUROBAKO』は、ブラックな労働環境とか嫌なところしか描いてない(笑)。アニメの制作サイドが、本当に自由に作っていることが伝わってきて、すごく好きなんです。

パロディだけでなく、キャラクターも個性にあふれていて魅力的

――怒られたりしなかったのかな、と心配になるくらいの自由さを感じる作品です。
 いちばん好きなのは、「今日も一日がんばるぞい!」を本家の『NEW GAME!』よりも先にぶっ込んで来たことですね(笑)。

――ネットミームにもなったマンガ『NEW GAME!』の有名な台詞を、第11話でハッカドール1号に言わせています。
 『NEW GAME!』がアニメ化するよりも前にアニメで音にしていて、「俺が最初に言ったことになんね~かな」を地で行っているんですよ(笑)。オンラインゲームの回(第9話)では、『ソードアート・オンライン』をネタにしているし、本当にやりたい放題。1分間に5パロディぐらい平気で入れてくる。1話10分くらいの作品ですけど、短い中に入れられるものは全部入れちゃおうみたいな感じもすごく良かったです。あと、ハッカドールの中でも3号君はとくに人気が高くて。

――ハッカドール3号は、いわゆる「男の娘」なキャラクターですね。
 すごく可愛いし、個性的なキャラなので、僕も最初は、3号君がきっかけでアニメを見始めたんです。その3号君がメインの(第6話)「思い出のナーニー」という回があるんですけど。

――放送の前年には、スタジオジブリの『思い出のマーニー』が劇場公開されています。
 その回では、「ナーニーがなくなる」っていうド下ネタをやっているんですよ(笑)。あれもひどくて良かったなあ……。でも、そういったパロディだけではなくて、1号、2号、3号のそれぞれのキャラクターがすごく個性的でちゃんと魅力的なんです。全員、誰かを捗らせるために頑張るキャラクターだから健気だし。そんな健気な子たちがブラックなパロディをやるから、さらに面白いんだと思います。

――社さんは、約7年間の活動の中で、さまざまな作品とコラボをしたり、公式イベントに出演したりしていますが、『ハッカドール』とのコラボは、今も特別な思い出ですか?
 比較するわけではないですが、やっぱり原点にして頂点というか。ありがたいことに、その後も自分の大好きなコンテンツとは、たくさんコラボなどをさせてもらっているんですけど、『ハッカドール』とのコラボは、本当に大きな第一歩でした。すごく大きな感動をVTuber活動の初っ端に味合わせてもらえたと思っています。だから、自分にとっては、ずっと特別な作品。XとYouTubeチャンネルのバナーにも、ずっと1号ちゃんがいるんですよ。

――YouTube配信のサムネイルによく登場しているミニキャラの社さんも、ハッカドール1号のTシャツを着ていますね。
 あの絵もかなりお気に入りですね。最近、僕の配信を見てくれるようになったリスナーさんの中には、「この金髪の子は誰?」って思っている方もいるみたいです(笑)。

――この記事を読んでもらえたら、あの子のルーツがわかりますね。
 そうですね。ぜひ、アニメも見てほしいです。endmark

KATARIBE Profile

社築

社築

バーチャルYouTuber

にじさんじ所属。IT企業に勤務する33歳のプログラマー。2018年6月5日に活動開始。『beatmaniaⅡDX』(通称:弐寺)、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(通称:プロセカ)など音ゲーに関しても造詣が深い。