TOPICS 2022.07.06 │ 12:00

2期放送直前!『メイドインアビス』を振り返る特集
原作者・つくしあきひとと紐解く アビス・7つの深層

小さな“探掘家”が超ド級にハードなストーリーを繰り広げる、異色ファンタジー『メイドインアビス』。一切妥協しない描写の数々が話題を呼んだこのアニメ版は、いったい何を達成したのか。原作者・つくしあきひと氏へのインタビューの際、アビスとその周辺に関する質問をさせていただいたところ、コミックスにも描かれていない話が次々飛び出した。膨大な設定の一部ではあるが、ここに紹介しよう。

構成/塩田信之

※雑誌Febri Vol.44(2017年10月発売)に掲載されたインタビューの再掲です。

ゴンドラの仕組み

つくし アビスの出入りに使われる大ゴンドラは、流れ落ちる滝で水車を回して巻き上げたり下ろしたりできる機械式の仕組みです。ハボルグが白笛を持って戻ってきた桟橋の大ゴンドラは凱旋用に造られた特別なものなので、電力を使っています。その他の、いくつもあるゴンドラの動力は電力ではなく、水力です。

アビスの中の陽光

つくし 三層から下は、むしろ下からくる光のほうが強いんです。その光もおそらく太陽由来のものだということを、探掘家たちは肌感覚でわかっています。ナナチ曰く「奈落の隅々まで栄養を届ける『奈落の血管』とも言える力場がそうさせているんだろう」。その光を浴びるといろいろなものの具合がよくなるんです。ちなみに一層あたりが夕焼けくらいの光、というイメージです。

深度計とは?

つくし アビスで採れる鉱物に、深さによって性質が変わるものがあるんです。深度計はそれを利用します。アビスは力場のせいで気圧計が使えないのです。装置の中で鉱物が少し気体に変化したり固体に戻ったりします。もちろん、アビス以外の場所でも深さを測ることができます。リコとレグが使っている深い深度が測れるものはけっこう貴重で、本来は黒笛クラスが使います。

生息生物の不思議

つくし 「アビスの呪い』はそこに棲む生物にもかかりますが、現れる症状は人間とは異なります。人間に近い感覚を持つものほど、呪いが作用するんです。たとえば、昆虫が五感以外の不思議な能力で環境を把握していた場合、アビス五層の呪いでもそれは奪えません。また、外からアビスに入って二層で適応したオットバスみたいなの生物もいます。適応できなければ食べられてしまうので、アビスはガラパゴスのように独自の生態系が築かれているんです。

アビスの呪い(上昇負荷)

階層症状
深界一層めまいや吐き気
深界二層重い吐き気、頭痛、末端のしびれ
深界三層二層の症状+平衡感覚に異常、幻覚や幻聴
深界四層全身に激痛、穴という穴からの流血
深界五層全感覚の喪失による意識混濁、自傷行為
深界六層人間性の喪失、もしくは死に至る
深界七層以降確実な死

ベオルスカの設定

つくし 『オース』はアビスを含む孤島と街を指す名前で、『ベオルスカ』はそれらをさらに含んだ、諸島などの全体の名称なんです。ベオルスカは諸島をまとめた国の名前です。国家としてのベオルスカは非常に強い力を持った大国で、一帯の諸島だけでなく、もっとも近い大陸の一部も領土としていました。しかし、いろいろあって今は東ベオルスカや西ベオルスカなどいくつかに分かれている、という設定です。オースがあるのは南海ベオルスカで、アビスは他の国から来た者が荒らしたりできないよう国によって保護されています。笛を探窟家のライセンスとしていることも保護政策のひとつです。

ベオルスカ諸島は、地球でたとえるならミクロネシアあたりに近いイメージです。赤道に近い熱帯に位置していますが、オースはアビスの大穴から吹き上がってくる冷たい風があるため、暑くはありません。とくに穴の周辺がひんやりとした気候だということが、街の住人の服装にも表れています。オースと外部は断絶しているわけではありません。昔は潮の流れが複雑で飛行船でしかたどり着けなかったのですが、現在は船舶技術が発達して、船での往来も可能になりました。「キャラバン船」と呼ばれる商業船団が護衛を伴いながら行き来しています。なぜ護衛が必要なのかというと、遺物を狙った海賊の襲撃が頻繁にあるからです(笑)。ちなみに、アビスの生物は力場に適応しているためほとんど外には出ないですし、海を渡る能力がほぼないので、他の島で新たに繁殖するというようなことはありません。

この世界の動力は?

つくし 滝がたくさんあるので、水力発電に特化したタービンが動力源として使われています。遺物を売った収入で技術者を呼んでいるんでしょうね。孤児院の電力も水力タービンです。風車は効率が悪いので、ほとんどが「粉を挽くこと」に使われています。

探掘家たちの必需品である石灯。原作コミックス第4巻(31話)では、レグがボンドルドを牽制するため、石灯爆弾を使用する描写も登場する。

また、探掘で使われる明かりはほぼ石灯で、アビスでしか採れない鉱物です。一定の振動を与えると光り、大きな衝撃や圧力で爆発する危険物でもあります。街は建物が密集しているので火は使いません。炊事には熱を発する遺物を使っています。

探掘家という職業

つくし 他国の人も探掘家にはなれますが、リコたちと同様にまずは鈴付きからスタートします。国の定める作法を習って笛を獲得する、という過程が必要です。

赤笛クラスの探掘家は、盗掘者を見つけても基本的には手を出さない決まりになっている。報告だけして、取り締まるのは別の人たちが行うとのこと。

笛は免許制です。作法を習い、赤笛をもらったあとに実技試験を行い、ようやくライセンスが取得できるという仕組みになっています。正式に探窟家になるには時間がかかるので、それが面倒くさい人は岸壁街に行き、盗掘に走るわけです。もちろん、監視基地の近くにはそんな輩はいないです。オーゼンが怖すぎるので(笑)。endmark

つくしあきひと
1979年生まれ、神奈川県出身。ゲーム会社でデザイナーとして活躍したあと、フリーのイラストレーターに転身。『メイドインアビス』は、初の商業コミック作品。
作品情報

TVアニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』
2022年7月6日より放送

  • ©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会