テンポの早いギャグが小気味いい、桜井弘明監督作品
「きららアニメ」と呼ばれる、『まんがタイムきらら』関連コミックが原作のアニメといえば、かわいい女の子たちのキャッキャウフフ♡でハートフルな日常を描いたものをイメージするだろう。そう、今あなたの脳裏に浮かんだ作品、それである。日々の学業や仕事に疲れた視聴者に癒しと潤いを与えてくれる「きららアニメ」は、まさに心の清涼剤。一杯やりながら見ると面白さが8割増しになる(筆者調べ)合法サプリメントといえる。
そんな“癒し”に特化した「きららアニメ」の中にあって、『まちカドまぞく』は異色の存在だ。かわいい女の子がキャッキャウフフ♡なのは他作品と同様だが、“コミカル”のパラメーターが突出して高いのである。「桜井弘明の監督作品」といえば、アニメ通の方には伝わるだろうか。『デ・ジ・キャラット』や『斉木楠雄のΨ難』など、シュールなギャグを間断なくぶっこんでくる桜井監督の妙味は本作でも健在。「きららアニメ」のフォーマットにあわせてぶっ飛んだテンションこそ抑え気味だが、早めのテンポでポンポンとコミカルなやりとりが飛び交う様はじつに小気味いい。
そして『まちカドまぞく』最大の魅力は、なんといってもポンコツまぞくのシャミ子と、魔法少女である桃の微笑ましい関係性だ。シャミ子は宿敵として桃をライバル視しているが、実力差がありすぎて相手にならず、逆に桃に「他の魔法少女に討伐されないように」と体力向上の特訓をさせられる始末。それでも“闇の女帝”として悪っぽく振る舞おうとするシャミ子だが、純粋で人の良い彼女は悪になりきれない。桃がそんなシャミ子のポンコツっぷりにほだされてしまうのも頷ける。
やがてふたりの間に絆が芽生え(わりとすぐだったが)、“宿敵でありながら親友”という不思議な関係に至ったのも、じつに『まちカドまぞく』らしいゆるさのほっこりポイントだった。第1期ではシャミ子に対する桃の“好き”が徐々に増していく過程が描かれていたが、『2丁目』ではその思いがより増しているようだ。ふたりの関係性の微妙な変化にも注目してほしい。
『まちカドまぞく』に初めて触れる人は、配信サービスなどで第1期から見るのをおすすめしたいが、とりあえず以下のポイントさえ押さえておけば『2丁目』から見ても内容を理解できるだろう。
本作の舞台は、まぞくや魔法少女が当たり前に存在する世界。シャミ子の遠いご先祖であるリリスは、今は邪神像に封じられており、封印を解くには宿敵である魔法少女の生き血が必要。そのため、シャミ子は桃に戦いを挑み続けているのだが、実力差がありすぎてうまくいっていないという状況だ。
また、まぞくであるシャミ子の父・ヨシュアは家にあるミカン箱に封じられている。その封印を施したのは、孤児だった桃を引き取って義理の姉となった魔法少女・桜なのだが、彼女は9年前から行方不明。なぜ桜はヨシュアを封じたのか。そして9年前に何が起こったのか――。本作の基本は“コミカルでゆるゆる”なのだが、『2丁目』ではそうした“謎の真相”に迫っていくところも、大きな見どころとなる。
ゆるふわな「きららアニメ」よりもちょっぴり刺激が欲しくて、適度な癒しとともにガツンとエネルギーをチャージしたい。『まちカドまぞく』はそんなあなたにオススメのアニメだ。