TOPICS 2024.07.26 │ 12:00

『機動武闘伝Gガンダム』
30周年 ドモン・カッシュ役 関 智一インタビュー②

放送30周年を迎えた『機動武闘伝Gガンダム』。ここでは、主人公ドモン・カッシュを演じた関 智一さんへのインタビューの後半戦をお届けします。役者陣の温かい関係、音響監督・浦上靖夫さんの愛ある厳しさ、そして総監督・今川泰宏さんへの熱い想いを、じっくりと語っていただきました。刮目して読むべし! 見よ、東方は赤く燃えている!!

取材・文/前田 久

「お前はプロじゃない」と最終回の打ち上げで浦上さんに言われた

 浦上さんの指導は、国語の授業みたいな感じでしたよ。

――どういうことですか?
 台本を見て「このセリフはどこにかかっているのか?」「このセリフは前のくだりの何を受けてのセリフなのか?」というのを、ひとつひとつ確認される。そのたびに考え込んで、しばらくすると「これがあって、ここのセリフにつながってくるんでしょ。それを踏まえてやりなさい」と説明してくださって、手取り足取り教えてもらいました。でも、それだけやっていただいたのに、最終回でも、レインと想いを通わせる大事な長いセリフが全部録り直しになったんです。しかも一気に録り直すんじゃなくて、セリフのブロックごとにちょっとずつの録り直しになってしまった。一緒に演じる天野さんのほうは問題なかったので、僕ひとりで録り直しです。

――胃が痛くなりそうな状況ですね……。
 僕も下手なりに「最終回だし、変なものを残したくない」という気持ちが強かったから、それまで自分から言ったことは一度もなかったんですけど、最終回の収録が全部終わったあと、浦上さんのところに走っていって「みんなが帰ったあとでいいので、もう1回やらせてくれませんか」と頼んだんですよ。

――録り直したものを、さらに自主リテイクでもう一度。
 はい。それで録らせてもらったんですが、あとで浦上さんからめちゃくちゃ怒られて。「本番の出来が非常に悪かったから録り直しを申し出てくれてよかったけど、でも、お前にとって本番って何なんだ?」と。「またやり直せるみたいな甘い気持ちがあるから、そんな芝居になるんだろう」と最終回の打ち上げで怒られたんです。「お前はプロじゃない」とも言われました。

――厳しい……。
 でも、浦上さんのその言葉は、闇雲に言っているわけじゃないんですよ。そのときに聞いたのが、浦上さんが『火垂るの墓』を作ったとき、娘さんと見に行ったら、娘さんがいちばん感動する場面で笑っていたそうなんです。「なんで笑っていたの?」と聞いたら「だって、嘘泣きしてる」と。その経験で「子供に見せるものは、本当のものを作るように心がけないと見破られてしまう」と考えるようになられたそうなんです。

――『火垂るの墓』は本当に素晴らしい作品ですが、それでもなお、と。
 浦上さんはそこから一層厳しく「本当にそれはお前の心から出ている芝居なのか」というのを、自分への戒めもあって、僕らにもそれをわからせようと指導してくれていたのかなと思います。だから本番の大事さもあらためてその言葉で教わりましたし、さらに「1年やったけど、お前は大して育たなかったな」と最後に言ってくださった。そう言われても、嫌な気持ちは全然しなかったです。悔しかったけど、愛もすごく感じたから。先輩たちもみんな優しかったですし、今振り返っても『Gガンダム』の収録で過ごした時間は、とても良い1年間だったなと思います。

当時、今川さんが語っていた『Gガンダム』続編のアイデア

――放送当時はシリーズの異色作といわれた『Gガンダム』ですが、あらためて見るとたしかにケレン味はすさまじいものの、キャラクターもストーリーも足腰がしっかりしているというか、骨太で正統派なところがあるなと。
 今川さんの才能だと思いますよ、本当に。今回の30周年で、今川さんがスピンオフ的なものを作ることが発表されてうれしいです。『Gガンダム』のノリって濃すぎちゃって、今川さんしか作れないじゃないですか。見ている人にも「今川さんが作らないんじゃ『Gガンダム』じゃない」みたいな雰囲気もちょっとある。これまでマンガの連載はありましたけど、今川さんが久しぶりに新しいものを作ろうという気持ちになってくださったのが、ただただうれしいです。今川さんによる新しい『Gガンダム』、あの世界で新しく紡がれるお話にはめちゃめちゃ期待しています。じつは今川さんは、『Gガンダム』本編を収録しているときから続編のアイデアを言っていたんですよ。

――え、そうなんですか。
 「ワシが考えている続きは……」みたいに話してくれたことがあるんです。ドモンとレインが結婚していて、レインが攫われる。ドモンとレインの間には子供がいて、子供も拳法をやっていて、ふたりでお母さんを助けに行く親子拳法ものだ……なんて。敵は10人の東方不敗。ノッポだったり、チビだったり、ガリガリだったり、太っていたりするやつで、でも全員が東方不敗。ドモン親子の前にそんな多彩な東方不敗が立ち塞がるような、そういうものを考えていると言っていました。今度の作品は全然違うものになっていると思いますけどね(笑)。

――では最後に、放送開始から30年の月日が流れ、役者人生を振り返ったとき、『Gガンダム』という作品はキャリアの中でどんな位置づけになりますか?
 「あれがなければ今はない」という感じで、実家みたいなものですかね。愛がいっぱいあって、あそこで育って良かったなと思えるような、ふるさとと言っていいかもしれません。あそこでご一緒した人たちは、役者の皆さんにも、スタッフの皆さんにも、今でも特別な気持ちがあります。なかなか集まる機会はないんですけど、ずっと大事に思っています。endmark

関 智一
せきともかず 東京都出身。アトミックモンキー所属。主な出演作に『ドラえもん』(スネ夫役)、『PSYCHO-PASS』(狡噛慎也役)、『鬼滅の刃』(不死川実弥役)、『呪術廻戦』(パンダ役)など。
作品情報


今川泰宏総監督書き下ろし
『機動武闘伝Gガンダム外伝 天地天愕』

公式サイトにて公開中!
https://g-gundam.net/sidestories/

【あらすじ】
第13回ガンダムファイト決勝大会開会式を前に新生シャッフル同盟となったドモン達は各国のガンダムファイター達から代替わりの意図を問われ、答えに窮する。答えが出ないまま、マスター・アジアとドモンの演武とともに決勝大会の開会が宣言された。そこへ謎の五体のガンダムが現れ、《ダーク・シャッフル》と名乗るのだった…。

 

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