TOPICS 2024.08.26 │ 12:00

『ガールズバンドクライ』
シリーズ構成・花田十輝が「バンドもの」で描きたかったこと①

怒りも喜びも哀しさも、全部をぶち込んだバンドものとして、2024年春クールに旋風を巻き起こした東映アニメーション発のオリジナルTVアニメ『ガールズバンドクライ』。そのクリエイティブの謎に迫るインタビュー企画の第1弾に登場するのは、シリーズ構成の花田十輝。「バンドもの」に込めた、その熱い思いとは?

取材・文/前田 久

仁菜はもともとキャラクター紹介文通りの女の子だった

――それぞれのキャラクターはどのように生まれていったのでしょうか? おそらく主人公の井芹仁菜が最初に生まれたのだと思うのですが、「上京してくる女の子が主人公」というアイデアも花田さんからの提案だったとか。
花田 主人公が上京してくるシチュエーションは、じつは前々からずっとやりたいと思っていて、別のオリジナル作品でも提案したことがあったんですけど、監督のOKが出なかったので実現しなくて。なら、この企画でやってみようと思ったのがきっかけです。その時点で、自分の中で「上京もの」と聞いて思い浮かぶ展開……第2話あたりで描いた内容のイメージはありました。それに加えて、なんとなくですが、バンドもので上京してくる主人公は鬱屈していて、なにか爆発するものを抱えていてほしいな、という気持ちがあったんです。そこで仁菜のキャラクターの土台ができて「上京もの」でやりたかったストーリーを書いているうちに、あんな感じに固まっていった……というのがおおまかな流れです。ちなみにファンの方がよくおっしゃっていますけど、公式サイトに掲載されているキャラクター紹介文と実際の井芹仁菜のキャラクターは乖離がありますよね?

――はい。
花田 最初は僕も、あの公式サイトの紹介文みたいなキャラクターのつもりで書いていたんです。だけど、動かしていくうちにどんどん変わっていっちゃったんですよ(笑)。じつは放送前に平山さんから「実態と乖離しているから、紹介文を直してください」と言われたのですが、「(本編の)あのままのキャラクターを紹介文に書いたら、誰も見なくなっちゃうよ」と言って直しませんでした(笑)。

この子たちにとって「間違っていない」とはどういうことだろう?

――オリジナル作品で脚本の初稿をどんどん書き進めることのメリットは何でしょうか?
花田 作品を最初に書いたときの初期衝動って、粗いこともあるんですけど、その中にある面白さが意外と大事だったりするんですよ。とくに今回に関しては、勢いを生かしておいたほうがいいだろうなと思ったので、とりあえず話数を進めてみようと考えました。平山さんも酒井さんも、僕がそういう進め方をするのは、これまでの付き合いでなんとなくわかっていたと思うんですよね。それもあって、気になることがあってもひとまず先に進んでみる作り方にしました。ただ、結果的には話数をかなりさかのぼって直してはいますね。

――そうやって直していく前に、花田さんの中でうっすらとあった当初の構想では、どんな作品をイメージしていたのでしょう?
花田 バンドである程度成功して「自分たちが抱えているものは間違っていなかったんだな」と思うようなかたちに結実していくのかな……と、じつは当初は考えていたんですよ。でも、終盤の話数まで書いたとき、「どうもしっくりこないな」と。「結局、この子たちにとって『間違っていない』とはどういうことだ?」と考えてしまったんです。それは別に「武道館に立つ」とかじゃないよな……と。そこを考え始めて、ようやく「『ガールズバンドクライ』ってこういう話だよな」という輪郭が見えてきたんです。当初思っていたのといちばん大きく変わったのはそこかもしれないですね。「間違っていない」って、たぶん「成功する」ことではないな、と。なんとなくそう思えたのが大きかった気がします。

――この作品の大きなポイントですね。
花田 もう少し細かい構成の話をすると、当初は第4話あたりで海老塚智とルパが出てくるはずだったんです。その予定で書き始めたんですけど、仁菜がどうもその流れでは動かない。「私、まだ納得してません!」と言い出すわけですよ(笑)。これ、比喩じゃなくて、脚本を書いていると耳元で「私、バンドをやることに、まだ納得してないんですけど!」ということを延々と言われているような気がしてきた(笑)。それで「こいつ、面倒くせえ〜!」と思いながら作ったのが第5話だったんです。あそこまで書いて、やっとバンドに前向きになってくれた。そこまできて「じゃあ、新しいメンバーを入れましょう」となったのが第6話でした。endmark

花田十輝
はなだじゅっき 1969年生まれ。宮城県出身。アニメ脚本家になるため大学在学中に小山高生に師事し、1992年『ジャンケンマン』第46話「ジャンケン村の宝を探せ!」で脚本家デビュー。シリーズ構成を担当した主な作品に『ラブライブ!』『響け!ユーフォニアム』『宇宙よりも遠い場所』などがある。
作品情報


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トゲナシトゲアリ 2nd ONE-MAN LIVE『凛音の理』

[開催日時]
2024年9月13日(金) 開場17:00/開演18:00

[会場]
川崎・CLUB CITTA’

[配信チケット詳細]
https://girls-band-cry.com/news/post-213.html

 

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