TOPICS 2021.10.05 │ 12:00

アニメでよみがえる「兄弟」の物語『NIGHT HEAD 2041』
飯田譲治インタビュー①

1990年代にカルト的人気を博したTVドラマ『NIGHT HEAD』。超能力を持つがゆえに苦悩する兄弟の姿を描いた作品が、約30年ぶりにTVアニメ『NIGHT HEAD 2041』としてよみがえった。ここでは、原作・構成・脚本を務める飯田譲治氏にインタビューを敢行。第1回は、本作のストーリーの前半について振り返ってもらった。

取材・文/日詰明嘉

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

第1~2話

飯田 第1話で、最初にミラクルミックの潜入場所に保安本部特務部隊が押し入るシーン。アニメ作品はアクション表現が得意なので、まずここを見せ場にできると思って書き進めていきました。そこから黒木タクヤ・ユウヤと霧原直人・直也の対峙構造を見せる流れは、自然と組み上げることができましたね。第1話のバーのシーンは、30年前の実写作品と重なる展開なのですが、ここも筆が乗って。でも、書いていて「また同じこと書いて、俺は成長しているのか?」と思ったりもしました(笑)。

第2話のダイナーでの一連のシーンは30年前も構想していたのですが、当時は予算がなくダイナーで撮れなかったので、念願のシーンになりました。アニメ作品は動きも含めて尖ったものを作れるので、こうした作品に向いた表現形態だったと思います。ただ、だからといって制約がまったくないわけでなく、CGで作る以上はモデリングの工数がかかってくるので、登場するキャラクターの人数制限があります。脚本を書き始めた当初はCG作品になると決まっていなかったので、あとから軌道修正をしました。

第3~6話

飯田 第3話から立花正幸の連続殺人の話に入っていきます。この作品の舞台は2041年、つまり今の時代から20年後です。では、我々の暮らしが20年前と比べてどこまで変わったか? たしかにスマホやネットなどは登場・普及しましたが、実生活において大きな意味での変化はないのではないかと。だから、20年後にも「こっくりさん」のようなアナログ的なおまじないなどは消えずに残っているだろうと思って、黒魔術に傾倒する大沢たちを描きました。正幸にしても、あれだけ悪いことをするからには、彼の中で大きな節目のようなものがあるはずだと考えてキャラクターを作っていきました。そのあたりを絡めて話を作るのには正直苦労しましたが、そのおかげで本作のテーマ性をハッキリ提示できたかなと思います。

また、レジスタンスの話は最初からこの物語の中で描こうと思っていました。人間というのは自分で自分を規制するのが大好きなので、放っておくと保安部隊側のような体制に行きがちなんですよね。自分が世の中を管理する側にいることを誇示したくて、「○○するのはダメ」って言いがち。新しい表現とは他の人と違うことをすることですから、そんな人たちがはびこる世の中はどんどんつまらなくなってしまいます。そして、そういった締め付けには必ず反動があり、それがレジスタンスになります。ただ、どんな時代でも抵抗すること自体が自己目的化してしまう人がいて、『NIGHT HEAD 2041』では結局いいように利用されてしまったという話でした。レジスタンス「言論自由同盟」の藤木マイクは2023年の次元移動が起きたときに日本にいて、そのまま住み着いているという設定で、その間にいろいろな出来事があってレジスタンス活動をしているというわけです。12話の中で語り切れなかったエピソードのひとつですね。また、テレビ局のシーンでコメンテーターの灰谷がいい加減なことを言っているのは、これも先ほどの話と同様に、20年後も現代と同じような番組があり続けるだろうという予測です(笑)。

第7話

飯田 第7話は見終わったときに自分でも「おお、こんな尖がった話をTVアニメでできたんだ」という感慨がありました。ながら見では理解できない情報量なので、この話数は何度も見返してほしいですね。ふたつの地球というモチーフは、ある種の界隈ではよく語られている話なんです。いろいろな意味で二極化が進行して、人間の進化が遅れているので地球が次元移動しようとしている、という。それとネガティブな発想を持った人たちによると、地球の総人口は今の1/3になったほうが地球にも人間にとっても望ましいとされているそうで、そのアイデアも盛り込みました。この脚本については、稿数を重ねたというほどではありません。ただ、御厨(みくりや)とロシアの関係や岬(みさき)老人についてはもう少し詳しく語りたかったのですが、12話の中ではこれが精一杯でした。ちなみに、御厨がロシアへ向かった理由ついてですが、ロシアは積極的に超能力の研究・開発をしていると取りざたされる国ですので、この地が重要なポイントになるのはTVドラマ版のときから念頭に置いていたことでした。

飯田譲治
いいだじょうじ 1959年生まれ。長野県出身。映画監督、脚本家、演出家、小説家。TVドラマ『NIGHT HEAD』演出・脚本、『沙粧妙子-最後の事件-』脚本、『アイアングランマ』原作・脚本・演出、映画『アナザヘブン』原作・監督・脚本などを担当。
作品情報

FODにて独占配信中!

  • © 飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会