■座談会参加者(カッコ内は当時の役職)
葉鳥ビスコ(原作)
五十嵐卓哉(監督)
榎戸洋司(シリーズ構成)
髙橋久美子(キャラクターデザイン・総作画監督)
中山しほ子(色彩設計)
大薮芳広(制作デスク)
南雅彦(プロデューサー)
ハルヒのキャラクターを思いついたとき「いける」と思った
――アニメ『桜蘭高校ホスト部(以下、ホスト部)』が放送から20周年ということですが、今日は当時のことを振り返りつつ、いろいろと話をしてもらおうと思っています。まずはアニメ化の経緯から聞かせてください。
南 じつは、この前に別口で一度、『ホスト部』アニメ化の話をいただいていたんですよ。ただ、そのときはスタジオで作れる本数(ライン)が限られていたこともあって、お断りしているんです。それから1~2年経って、今度は日本テレビさんかバップさんから声をかけていただいて、という。
大薮 ちょうどそのタイミングで、同じ白泉社さんが原作の『獣王星』の話も来ていたんですよね。で、『獣王星』はなんとなくボンズっぽい感じがあって(笑)、そちらは僕の先輩が担当することになったんです。
南 そうかそうか、『獣王星』と『ホスト部』はほぼ同時期だった。
大薮 それで南から「少女マンガ原作の企画が来ているんだけど、ウチにこれ(『ホスト部』)ができる人はいるかな?」と相談されたんです。もし、僕のほうで心当たりがあるなら、企画を成立させる方向で動きたい、と。(シリーズ構成の)榎戸洋司さんは以前、『ラーゼフォン』にも参加していただいていたし、僕は『少女革命ウテナ』も『美少女戦士セーラームーン』も大好きだったので、ぜひやってほしいなと。あと五十嵐さんに関しては、五十嵐さんが監督された『おジャ魔女どれみ』シリーズが大好きで、ずっと一緒に仕事をしたいと思っていたんです。実際、この前に『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』でコンテをやっていただこうと思って、コンタクトを取ったことがあったんですよね。
五十嵐 ただ、ちょうど同じタイミングで『劇場版 金色のガッシュベル!! メカバルカンの来襲』の監督の話をいただいていて。「やはりコンテよりも監督だ!!」と思いまして(笑)、お断りさせていただいたんですよね。そこからしばらく時間が空いて、僕が東映アニメーションを離れたタイミングで大薮君から連絡をもらったんですけど……。『桜蘭高校ホスト部』っていうタイトルを聞いて、ちょっと僕には無理なんじゃないか、って。
葉鳥 あはは(笑)。監督が「ホスト」って単語に引っかかったように、私も最初は「ホストって……」と思ったんです。というのも、『ホスト部』は最初に編集部からいくつかキーワードをもらっていて、お金持ちの学校で美男子がいっぱい、ホスト、男装女子で描きませんか?みたいな(笑)。それをもらったときに、わりと難しいなというか、私には向いていないなと思ったんです。ただ、「ホスト部」という設定をバカバカしく描けたら相当面白いことになるなと思ったのと、あとはハルヒのキャラクターですね。彼女のキャラクターを思いついたときに「これはいけるかも」と思えたんです。バカバカしい青春もので、人情ものというか優しいお話が描けたらな、と。
――そうだったんですね! ちなみにハルヒのどういう部分が「いける」と思えたポイントだったんでしょうか?
葉鳥 やっぱり男装女子って、あまりにも名作が多すぎるじゃないですか。私にはこれ以上、新しいものを生み出せないなと思ったんですけど、でも「重い理由がない」というのは、いいかもしれないと。とくに重い理由があるわけじゃなくて、ただ男装しているだけ(笑)。ホスト部のキラキラした男子に対しても全然興味がない女の子だったら、私に合っているんじゃないかなって思えたんですよね。
「カニは好きカニ」にハマって、これならできると思った。
――榎戸さんは、打診を受けたときの印象を覚えていますか?
榎戸 僕も監督と同じで、最初に話をいただいたときは原作をまだ読んでいなかったんです。だからタイトルを聞いた瞬間にパッと思い浮かんだのが、「どこかの男子校で、年齢を偽ってホストクラブで働いている少年たちのBLなんだろうな」というイメージで。
葉鳥 それはそれで面白そう(笑)。
榎戸 でも、読んでみたら全然違って、すごく面白かった。面白かったというか、これを描いている先生は、かなりポピュラリティを意識して描いていらっしゃるんだな、と思ったんですね。
五十嵐 そうそう。読ませていただいたいたときに「これはアニメにしたら面白そうだな」と思ったんです。ある意味、ボンズと僕の利害関係みたいなものがうまく合致した、というか。南さんがさっきおっしゃっていたように「少女マンガ原作なんて、ウチで作れるの?」と思っていたスタジオがあって、その一方で、そういう作品を長年やってきた人間がたまたま、ふわふわしている状態で。それがうまくはまって、作品ができたという。
大薮 そうですね。たしか五十嵐さんとお会いしたときにも、五十嵐さんから榎戸さんのお名前が出ていたんです。だから双方の思いが一致したところで、いいスタートが切れたというのはありましたね。
葉鳥 私もスタッフのお名前を聞いて、ちょっとこれはありえないというか(笑)。私自身、『セーラームーン』オタクで『明日のナージャ』も『少女革命ウテナ』も大好きだったし、『ラーゼフォン』も見ていたし。本当にやっていただけるのであれば、お任せするしかないなって感じでした(笑)。
――髙橋さんにキャラクターデザインをお願いしたのは、どういう流れで決まったんでしょうか?
大薮 これまたご縁があって『鋼の錬金術師』のテレビシリーズのあと、映画(『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』)にも参加していただいていて。あと五十嵐さんと話していくなかで「キャラクターをシルエットで見せたい」とか「マンガっぽくやりたい」という話が出てきたんですね。で、南さんや逢坂(浩司)さんにもご相談して、最終的に髙橋さんにお声がけするのがベストなんじゃないか、と。
髙橋 そのあたりのことは全然覚えていないんですけど(笑)。あるとき、スタジオに『ホスト部』の原作が置かれていて、最初は自分の得意な絵柄じゃないかも、と思ったんです。でも、せっかく声をかけてもらったんだし、と思って読んでいたら「カニは好きカニ」というセリフにすごくハマっちゃって。
大薮 それ、ずっと言っていましたよね(笑)。
髙橋 これならできるかな、と思ったんですよね。
大薮 あと髙橋さんは『鋼の錬金術師』のときに、原画の上がりと一緒にコミカルな猫のイラストを描いてくださったりして、上品なギャグ絵を描く人だなってずっと思っていたんですよね。![]()
- 葉鳥ビスコ
- はとりびすこ マンガ家。主な作品に『千年の雪』『ウラカタ!!』『プティトゥ・ペッシュ!』『でたらめ妄想力オペラ』など。
- 五十嵐卓哉
- いがらしたくや アニメーション監督、演出家。主な監督作に『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 榎戸洋司
- えのきどようじ 脚本家。主な参加作品に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 髙橋久美子
- たかはしくみこ アニメーター、キャラクターデザイナー。主な参加作品に『カードキャプターさくら』『Witch Hunter ROBIN』など。
- 中山しほ子
- なかやましほこ 色彩設計。主な参加作品に『T・Pぼん』『モブサイコ100』『赤髪の白雪姫』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 大薮芳広
- おおやぶよしひろ ボンズ取締役、プロデューサー。主なプロデュース作に『僕のヒーローアカデミア』『DARKER THAN BLACK』など。
- 南 雅彦
- みなみまさひこ アニメスタジオ・ボンズの代表取締役。『カウボーイビバップ』『鋼の錬金術師』など、数多くの作品にプロデューサーとして参加。























