TOPICS 2026.04.10 │ 12:00

アニメ『桜蘭高校ホスト部』放送20周年記念 豪華スタッフ座談会②

『桜蘭高校ホスト部』放送開始20周年を記念したメインスタッフ座談会の第2回。今回は、キャラクターデザインのポイントや、当時の五十嵐監督とスタッフとのやり取りをめぐるエピソードをお届け。「見ていると、当時作っていたときのムードを思い出すんです」と話す、五十嵐監督が気に入っているエピソードとは?

取材・文/宮 昌太朗

■座談会参加者(カッコ内は当時の役職)
葉鳥ビスコ(原作)
五十嵐卓哉(監督)
榎戸洋司(シリーズ構成)
髙橋久美子(キャラクターデザイン・総作画監督)
中山しほ子(色彩設計)
大薮芳広(制作デスク)
南雅彦(プロデューサー)

「この表情を使いたい」と思わせる完成度の高いキャラクターデザイン

――『ホスト部』はギャグの要素もたくさんある作品ですよね。
大薮 わりとボンズの人たちはギャグ絵をそれほど描かない――というと『クッキングパパ』とか『ミスター味っ子』をやっていたんだけど、と怒られるんですけど(笑)。そういうなかで髙橋さんの描く絵は、すごく柔らかい印象があって、いろいろなバリエーションを出してくれそうだなと思ったんですよね。
髙橋 葉鳥先生に初めてお会いしたときに「こういう風にできたらいいな」と、ダメ元で絵を持っていったんですね。私は少女マンガが得意なほうではないので、どうかなと思っていたんですけど、それを見た葉鳥先生に喜んでいただけて。だったらいけるかもしれないな、というのはありました。

――当時の設定資料を見ると、メインのキャラクターの設定を3種類、用意していますね。
髙橋 ノーマルとデフォルメが入ったものと、あと描き込んだ設定ですね。描き込んだ顔はギャグで使うことが多かったりするんですけど、これまではわりと原画さんにどの絵柄を使うのかをお任せすることが多かったんです。でも『ホスト部』では、そこをあらかじめ、わかりやすく決めておく。そうすることで、あとの作業がスムーズに行くんじゃないかなと思ったんですよね。
五十嵐 僕から「こうしてほしい」みたいなことを言った記憶はないですね。もちろん、演出的な部分についてはお話したと思いますけど、髙橋さんのキャラクターデザインはどれもちゃんと雰囲気があるように描かれていて。むしろ「この表情を使いたい」と、こちらが思うくらい完成されていましたね。

周囲のスタッフに助けてもらいながら作った

――中山しほ子(色彩設計)さんはどういうタイミングで制作に参加したんでしょうか?
中山 『鋼の錬金術師』のあとだったかな。大薮さんから「はい、次の仕事はこれね」と。
大薮 さすがに、そんな雑にはお願いしていないですよ!(笑)
中山 最初は「できるかな?」と思ったんですけど「仕事だからやるか」みたいな(笑)。ただ、五十嵐さんとは初めてだったので、そこはちょっと緊張しましたね。五十嵐さん自身、初めての人が苦手だという噂を聞いていて。
五十嵐 そりゃあ緊張もしますよ(笑)。これまで20年くらい東映アニメーションにいて、そこから初めて外に出て一緒にやるのが業界の中でブイブイ言わせているスタジオだったわけで……(笑)。たぶん、僕のことなんて「なんぼのもんじゃい」と皆さん思っているんだろうな、って。
中山 いやいや、そんなことはないですよ(笑)。
五十嵐 もともと人と話すのが得意じゃないんです。とくに取り留めのない世間話とか(笑)。ただ、ボンズの人たちと話していて、シリーズディレクターと監督ってちょっと違うな、と思いました。監督のほうがより中央集権的なシステムだな……と。僕が冗談めかして言ったアイデアに対しても全力で事に当たるわけです。コストを度外視して(笑)。これは慎重に言葉を選ばなければいけないと最初に思いました。
髙橋 今の話を聞いて思い出したんですけど、五十嵐さんが色チェックをするとき、とりあえず上がってきたものを見て「いいですね」と言ってくださるんです。ただ、そのあとで「ここだけちょっと……」と。
中山 そこからが長い(笑)。
髙橋 でも、そういうことって大事だなと思いました。「いいですね」と言ってくれる人はなかなかいないから。
五十嵐 そうなの!?
髙橋 そうなんです(笑)。だから、五十嵐さんはすごいなって思っていました。
五十嵐 そうだったんだ。最初に「いいな」と思っているのは嘘じゃないんですよ。本気で「いい」と思っていて……。ただ、最近、撮影さんとかに「監督が最初にいいねって言ってくれたのと、(最終的な仕上がりが)全然違うんですけど」と言われるんですけど(笑)。
中山 五十嵐さんは、いろいろやっていくうちに迷路に入っちゃうところがありますよね。で、そうなったときに突然、こっちに振ってくる(笑)。「ああして、こうして」とやっていくうちに、「もうわかんないや。何かいい方法ない?」みたいな。「えっ、私が決めるの!?」って(笑)。もちろん、最終的には監督が決めてくださるんですけど、わりとそういうことがあります。
五十嵐 結構いい加減なんですよ(笑)。最初に「いい」と思っているのは本当なんです。けど、見ているうちに「こうすればもっとよくなるんじゃないか」と思う。そこがやっぱり大事で。しかも僕の提案に対して、スタッフの皆さんがさらに思考してもうひとアイデア乗せてくれる。素晴らしいスタッフです。そういう意味では、本当に周囲に助けられているなと思います。

『ホスト部』のおかげで、ボンズが僕の居ていい場所になった

五十嵐 じつはこの座談会の前に、全話見直しました(笑)。それこそ20年前のフィルムなのに、手前味噌で申しわけないんですけど、めちゃくちゃ面白かった(笑)。笠野田君の話があるでしょう(第23話「環の無自覚な憂鬱」)。あれを見ていたときに、笑いが止まらなくなっちゃって。

――自分の作品なのに(笑)。
五十嵐 「これはマズい。誰かに見られたら、おかしい人だと思われる!」と焦ったんですけど(笑)。見ていると、当時作っていたときのムードを思い出すんですけど、ネガティブな印象が一切ないんですよね。それこそ第1話のアフレコが終わったときに、南さんが僕のところに来て「次、こういう作品があるんだけど」って言われたこととか。

――もうその時点で、次の作品(『ソウルイーター』)の監督をお願いしたい、と。
五十嵐 そうそう。ずいぶん先の話だなと思ったんですけど(笑)、第1話のアフレコでそういう話をもらえるってことは、南さんからしたら「もう少しこいつとつきあっていいかな」と思ってもらえたんだろうな、と。ボンズで初めて手がけた作品が『桜蘭高校ホスト部』だったおかげで、ボンズが僕が居ていい場所になったし、その原作を描かれた葉鳥先生には本当に感謝しています。
 あの頃って、監督自体、それほど人数がいなかったんですよね。だから、第1話のアフレコを見たときに「こんな面白い演出ができるヤツを離しちゃいけない」と。endmark

葉鳥ビスコ
はとりびすこ マンガ家。主な作品に『千年の雪』『ウラカタ!!』『プティトゥ・ペッシュ!』『でたらめ妄想力オペラ』など。
五十嵐卓哉
いがらしたくや アニメーション監督、演出家。主な監督作に『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
榎戸洋司
えのきどようじ 脚本家。主な参加作品に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
髙橋久美子
たかはしくみこ アニメーター、キャラクターデザイナー。主な参加作品に『カードキャプターさくら』『Witch Hunter ROBIN』など。
中山しほ子
なかやましほこ 色彩設計。主な参加作品に『T・Pぼん』『モブサイコ100』『赤髪の白雪姫』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
大薮芳広
おおやぶよしひろ ボンズ取締役、プロデューサー。主なプロデュース作に『僕のヒーローアカデミア』『DARKER THAN BLACK』など。
南 雅彦
みなみまさひこ アニメスタジオ・ボンズの代表取締役。『カウボーイビバップ』『鋼の錬金術師』など、数多くの作品にプロデューサーとして参加。
第3回は4月13日(月)公開予定
作品情報

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  • ©葉鳥ビスコ/白泉社・VAP・NTV・BONES