■座談会参加者(カッコ内は当時の役職)
葉鳥ビスコ(原作)
五十嵐卓哉(監督)
榎戸洋司(シリーズ構成)
髙橋久美子(キャラクターデザイン・総作画監督)
中山しほ子(色彩設計)
大薮芳広(制作デスク)
南雅彦(プロデューサー)
第1話の脚本がいちばんハードルが高かった
――葉鳥先生は当時、制作現場とどういうやり取りをしていたんですか?
葉鳥 シナリオや絵コンテをいただいて、それをチェックする、という感じですね。最初に1回だけ、会議にも参加させていただいたのかな。
榎戸 じつは僕、マンガ原作をやるのが初めてだったんですよ。
葉鳥 そうなんですか!?
榎戸 『美少女戦士セーラームーン』は原作ものではありますけど、話はほぼオリジナルだし。さっき髙橋さんが、仕事を引き受ける前に一度、自分なりにキャラクターを描いてみたって話をされていましたけど、じつは僕もお仕事を受ける前に「とりあえず第1話の脚本を書いてみよう」と。
――そんなことをしていたんですか!
榎戸 少女マンガテイストの作品というと、この前に『セーラームーン』と『少女革命ウテナ』をやっていたわけですけど、ギャグテイストが盛り込まれている作品は『ホスト部』が初めてで。そのときに考えたのが、少女マンガっていうだけでハードルを感じる人もいるだろうな、と思ったんですね。日常生活で髪の毛にカールを巻いている人がいるだけで「何これ」と思う人もいるだろう、と。そこの壁をどう越えられるかな、というのを考えていました。で、そのときに使えるなと思ったのがテロップ。もともと原作にあるテイストなんですけど、そこをさらに強調していくことで、誰でも楽しめるかたちになるかなと。
葉鳥 なるほど、なるほど。
榎戸 登場人物は全員ボケ。で、ちょっとハードルっぽい箇所が出てきたら、作り手のほうからテロップでツッコむ、と。前回(第2回)、五十嵐さんがおっしゃっていた「環の無自覚な憂鬱」はそれがいちばん極まった回かなと思うんですけど、『ホスト部』の脚本をやったことで、自分の作風がひとつ確立したところはあるなと思います。
髙橋 あとは第1話のランプ。あれがすごく面白くて(笑)。
――あれは原作にない仕掛けですよね。
榎戸 脚本をお見せしたときに、葉鳥先生から最初に「このランプは何ですか?」って聞かれたんですよね。でも、うまく説明できない(笑)。なので「これは映像で見ると、全然気にならないですよ」って言い訳をして。
葉鳥 その節はすみませんでした(笑)。
榎戸 いえいえ(笑)。じつを言うと、僕の中では第1話がいちばんハードルが高かったんです。というのも、主人公のハルヒが女の子だとわかるのが第1話のラストで。それまで登場人物は全員、ハルヒのことを男子生徒だと勘違いしているわけです。原作だとそこがわりと抽象的に描かれていて、読んでいても違和感がないんだけど、映像化したときにそこを有耶無耶にすると、見ていてよくわからなくなりそうだと思っていたんです。で、苦肉の策でひねり出したのが、ランプがひとつずつ点灯していくという手法。まず最初に勘のいい鏡夜は出会った瞬間からハルヒが女の子だと気付いていて、勘のいい部員から次第に気付いていく。最後はいちばん勘の悪い環が気づく。で、視聴者もどの段階で気づくかによって「あなたはハニー先輩レベルです」みたいな構造になるのが面白いかなって。
髙橋 めっちゃ「うまい!」と思っていました(笑)。
――制作中、中山さんが苦労したところはどういうところでしたか?
中山 各話で出てくる衣装がわりと大変だったかな。
榎戸 脚本としては、わりとサービスのつもりでコスプレ回とかを用意したつもりだったんですけど(笑)。原作にももともと新選組のコスプレをする回があったりするので、いろいろなコスチュームを着せたら、原作ファンの皆さんも喜んでくれるかなと思っていたんですけど……。でも、衣装をデザインしたり、色指定をする方は大変ですよね(笑)。
中山 着物の柄の貼り込みなんかは、今みたいキレイに貼り込みができない。それでも無理矢理(撮影で)貼り込んだりしましたね。
五十嵐 ああいう技法を使った、わりと初期の作品かもしれないですね。
中山 そうかもしれない。あ、でもこの前にある作品があって。あそこで一度、流行ったんですよね。どれだけ絵が動いていても、貼り込みは止まっているという。その作品のおかげで「ああいうやり方でもOKなんだ」と思ったんです。
アニメ版『ホスト部』と20年間ずっと一緒に生きている
――葉鳥先生のお気に入りのエピソードというと?
葉鳥 じつは私も、五十嵐監督と同じように見返してきたんですけど(笑)。語ってよければ延々、第1話から好きなところを語りたいくらい(笑)。ヅカ部のエピソードとかゲラゲラ笑って見ていて……。でも、久しぶりに見直していると、脚本の文字とか五十嵐監督の絵コンテがパッと頭に浮かんでくるんです。
――当時の思い出と結びついているという。
葉鳥 結びついていますね。年を経るごとに、なんて贅沢な思いをしたんだろうと感じます。というか、むしろこのアニメ版が私の中でいちばん大きなプレッシャーになっていて。このあと『ホスト部』は実写ドラマや舞台になったんですけど、ファンの方もきっとこのアニメ版をまず思い浮かべるんじゃないかと思うんですよ。そういう人たちに受け入れてもらうには、どうすればいいんだろうかと毎回、思っちゃうんです。それこそアニメ版が『ホスト部』という作品の土台になっていて、私は20年間ずっとそれとともに生きてきている、みたいな(笑)。それくらい大きな存在になっていますね。
榎戸 そういえば、『ホスト部』をやっていたときは、葉鳥先生と一緒にミュージカルを見に行ったりしましたよね。それこそ学生時代みたいな感じで、夜中に長電話したり。
葉鳥 していましたね(笑)。
榎戸 確認が必要なときに電話していたんですけど、先生は連載中だから、そんなにお邪魔してはいけないなと思っていて。
葉鳥 私も、榎戸さんに対して同じことを思っていました。
榎戸 でも、お互い「じゃあ、10分だけ」って話し始めたら、いつの間にか4~5時間経っていた、みたいな。
葉鳥 楽しかったですね。なんで長電話しなくなったんでしょうか(笑)。
榎戸 なんでだろう(笑)。いや、だって、アニメスタッフが連載中の原作マンガ家先生の仕事の邪魔をするのは、やっぱり駄目でしょう(笑)。そのときに「ああ、僕は作品というコミュニケーションツールで遊んでいるんだな」と当時思ったんです。子供の頃はゲームの話題とかで友達とつながっているんだけど、大人になるに従ってそれが仕事になるというか。どっちが目的というわけではないんだけど、一緒に仕事をしている人は、仕事で一緒に遊んでいる――ってヘンな言い方ですけど(笑)、そんな風に仕事に対する捉え方が変わってきた時期でもあったんです。![]()
- 葉鳥ビスコ
- はとりびすこ マンガ家。主な作品に『千年の雪』『ウラカタ!!』『プティトゥ・ペッシュ!』『でたらめ妄想力オペラ』など。
- 五十嵐卓哉
- いがらしたくや アニメーション監督、演出家。主な監督作に『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 榎戸洋司
- えのきどようじ 脚本家。主な参加作品に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 髙橋久美子
- たかはしくみこ アニメーター、キャラクターデザイナー。主な参加作品に『カードキャプターさくら』『Witch Hunter ROBIN』など。
- 中山しほ子
- なかやましほこ 色彩設計。主な参加作品に『T・Pぼん』『モブサイコ100』『赤髪の白雪姫』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 大薮芳広
- おおやぶよしひろ ボンズ取締役、プロデューサー。主なプロデュース作に『僕のヒーローアカデミア』『DARKER THAN BLACK』など。
- 南 雅彦
- みなみまさひこ アニメスタジオ・ボンズの代表取締役。『カウボーイビバップ』『鋼の錬金術師』など、数多くの作品にプロデューサーとして参加。


























