TOPICS 2021.09.23 │ 12:00

最終回直前! Sonny Boyを解き明かす、夏目真悟監督各話コメンタリー①

不可思議な世界を漂流してしまうことになった中学生たちを描くSF青春群像劇『Sonny Boy』。多次元論や量子論まで取り入れた複雑なルール設定と、各回で舞台や演出のテイストがダイナミックに変遷していく構成が話題となっている。その各話のコンセプトや狙いを、挿入歌の解説も含めて夏目真悟監督に語ってもらった。

取材・文/森 樹

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

『Soony Boy』の挿入歌 Part 1(第1~6話)

夏目 各回の挿入歌は、その時点で完成していたアニメ素材をすべて渡して制作していただいています。打ち合わせでは、曲を使いたいと考えている場面と、そのときのキャラクターの心情を説明させてもらいました。ただ、基本的にはその内容だけお伝えして、あとは自由にやってくださいという流れでした。アーティストさんの中にはテンポや雰囲気を確認してくださる方もいたのですが、こちらからは「自由にやってください」と。それが自分としては楽しかったというか、贅沢でしたね。新しい曲が上がってくるのが毎回楽しみでしたし、どれもいい楽曲ばかりで、アニメ制作へのモチベーションになりました。

第1話は挿入歌がなく、エンディングに銀杏BOYZの「少年少女」がかかります。この回は、この曲を流すために作られたと言っても過言ではありません。第2話の落日飛車は台湾のバンドです。映像素材をお渡しして、「このシーンからこのシーンまで音楽をお願いします」と依頼しました。なので、映像を見ながら楽曲を制作してくださったと思います。第3話はVIDEOTAPEMUSICのインストゥルメンタルですね。基本的に挿入歌は、キャラクターの気持ちが変わる瞬間や、動きはじめる瞬間にかけようと考えていて、この回では、長良が決意して動き出すところに使いました。

音楽コーディネイトを手がけてくださった渡辺信一郎さんは、すべてのジャンルに詳しい人なんです。最初に「どういう音楽が好きなの?」と聞いてくださって、そこで僕が銀杏BOYZやミツメ、toeの名前を出したら、「じゃあ、こういうのも好きじゃない?」と、他のアーティストをすぐさまピックアップしてくださいました。ザ・なつやすみバンドは愛聴していたのですが、自分からは名前を出さなかったんですよ。だけど渡辺さんから「合うんじゃない?」とオススメされて、第4話の野球回に使わせてもらいました。あの南国風なサウンドが、サルの野球の絵にうまく重なりましたね。第5話はミツメに提供してもらいましたが、彼らの書く楽曲は温度感が低くて、長良の心情にすごく合うと思いました。長良と希がただ夜釣りをしているだけのシーンに書き下ろしてもらったのですが、真っ暗で怖いくらいの新月の夜に、ふたりで浮きを眺めているシーンはけっこう思い入れがありますね。第6話では落日飛車の別楽曲を使っていますが、これは第2話と対になるイメージで発注しました。ミツメも第5、9、12話でお願いしたのですが、それは各話数のつながりをもたせたいと思ったためです。endmark

夏目真悟
夏目真悟 なつめしんご アニメーション監督・演出家。『スペース☆ダンディ』で初監督を務めたのち、『ワンパンマン』や『ACCA13区監察課』『ブギーポップは笑わない』などを監督。『四畳半タイムマシンブルース』でも監督を務めることが決定している。
後編(②)は9月28日公開予定
作品情報

『Sonny Boy』
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