TOPICS 2022.05.26 │ 12:00

特『刀剣乱舞-花丸-』〜雪ノ巻〜
プロデューサー・礒部慧利インタビュー②

「とある本丸における刀剣男士たちの花丸な日々」を描く『刀剣乱舞-花丸-(以下、花丸)』が、テレビから飛び出し、劇場へ。2018年3月に2期の放送を終えた物語が、4年の時を経て帰ってくる。刀剣男士たちの花丸な日々を3部作で描く特『刀剣乱舞-花丸-』〜雪月華〜のプロデューサー・礒部慧利氏のインタビュー後編をお届けする。

取材・文/えびさわなち

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

フィルムスコアリングによる臨場感のある音楽を楽しんでほしい

――本作のこだわりを教えてください。
礒部 音楽はTVシリーズから変わらず川井憲次さんに続投していただいています。TVシリーズのときは事前に音楽を発注して、完成した音楽をダビングのときに当てていくという作り方をしていたのですが、今回は劇場上映ということで十分な時間もあったので、川井さんのご厚意で映像に合わせて音をつけるフィルムスコアリングで録(と)っています。とくに新曲の文久土佐まわりの音楽はカッティングロール(編集)にあわせて音をつけているので、劇場ならではの臨場感を楽しめるのではないかと思っています。見どころはいっぱいあるので、細かいところまで見ていただけるとうれしいです。「雪ノ巻」は70振ちょっとの刀剣男士が登場しますが、その人数をアニメーションで動かしている動画工房さんは本当にすごいとあらためて思いました。メインに映っているキャラクターの後ろで動く刀剣男士の様子まで、ひと振ひと振こだわりをもって描いてくださっているので、ぜひ劇場でご覧ください。

――フィルムスコアリングで録ったとのことでしたが、いかがでしたか?
礒部 映像にあった音楽を作っていただけたことが、すごくありがたかったです。『花丸』は日常系なので、これまではかわいい曲が多かったのですが、文久土佐の話では今までにないような戦闘曲や少しダークな感じの曲もあり、さらに世界観が広がったと思います。

――特命調査でのそれぞれの刀の戦い方や見せ方でこだわったのはどのようなところでししょう?
礒部 刀種が「剣」の白山吉光は治癒能力を持っているので、戦闘の中でぜひそこを見せたいと思いました。ただ、ゲーム内では具体的にどう治しているかの描写は出てこないので、アニメではどのようにするか、その動きのひとつひとつをニトロプラスさんに確認をとりながら作っていったので、白山の治療シーンもぜひ見てもらえたらと思います。

――安定と清光のふたりが物語を動かす役割を担っていますが、彼らの魅力を教えてください。
礒部 86振が顕現している、という状況でひとつのお話を作るときに、この86振全員をどのように動かせばいいのかという問題にぶつかるのですが、『花丸』は安定と清光というふたりを軸にして、他の刀剣男士たちの活躍を見せることができる作品なので、あのふたりの存在は大きいです。今回、安定や清光がずっと出ているわけではありませんが、「雪ノ巻」で起こるいろいろな出来事のベースには清光の気持ちの変化があります。本作では、最終的に清光が修行に行くことを決意するまでを、他のキャラクターの話を描きながら着地させるという作りにしました。そして、清光が修行に出てしまったあとの役割は安定が引き継ぐことになります。

「明日から頑張ろう」と思ってもらえる作品に

――「雪ノ巻」を振り返って大切にしたことを教えてください。
礒部 「とある本丸の花丸な日々」を描くことをいちばん大事にしています。なおかつ今回は「映画館で見てよかった」と思っていただける作品を作りたいと思いました。お客様の大切な時間を使って見ていただくものなので、ストーリーはもちろん、劇場ならではのいろいろな楽しみを用意しています。鑑賞後に「楽しかったな」「明日からも頑張ろう」と思ってもらえるような作品にしたいと考えながら作りました。

――今、お話が出た「劇場ならではの楽しみ」として、公開から週を重ねると特典映像である「花丸日記」が見られたり、3週目ではエンディング曲が変化します。どうしてそのような企画にしたのでしょうか?
礒部 86振もいるのでとにかく尺が足りず、刀剣男士の魅力をそぎ落とさなくてはいけない部分もあったので、特命調査をしながら、出陣しない刀剣男士たちをどう描くべきか悩みました。本丸シーンを挟み込んで、カメラを振るような演出も入れたのですが、それでも足りなくて。本編はどうしても作中のドラマに沿って進むので、全員に触れることは難しいんです。そこで「花丸日記」でいろいろなキャラクターをたくさん描けたらと思い制作しました。

――3週目のエンディングは、山姥切国広と長義が歌う「離れ灯篭、道すがら」ですが、なぜこの2振での歌唱になったのでしょうか?
礒部 TVシリーズでは、AパートかBパートでお当番の刀剣男士が歌う習わしがありました。今回も物語と楽曲につながりを持たせるために、Bパートのメインとなった文久土佐の3振にエンディング曲を歌唱していただき、Aパートの(山姥切)国広と長義の曲を3週目に持ってきました。

――では、最後に「とある本丸の物語」、『花丸』の魅力を教えてください。
礒部 たくさんの刀剣男士が出てくることです。当たり前ですが、ゲームに出ることが決まっている刀剣男士までしか登場させられないんですよね。(「雪ノ巻」の)制作を始めた2019年のときに出せたのがこの86振だったんです。今ではもっといますから、続編が許されるならば「目指せ! ゲームと同じ数!」という想いでこれからも作れたらいいなあって思います。たくさん刀剣男士が出てきて、人の身を得た刀剣男士の日常の喜びが見られるところが、他の(『刀剣乱舞』の)メディアミックスにはない魅力だと思うので、そこもお楽しみいただければと思います。endmark

礒部慧利
いそべえり 東宝株式会社プロデューサー。TVアニメ『からかい上手の高木さん』(2018年)アニメ 続『刀剣乱舞-花丸-』(2018年)『ヤリチン☆ビッチ部』(2018年)などの作品に音楽プロデューサーとして関わる。
作品情報

雪ノ巻:5月20日(金)より3週間限定上映
月ノ巻:7月8日(金)公開 /華ノ巻:9月1日(木)公開

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