TOPICS 2023.03.06 │ 12:00

『東京リベンジャーズ 聖夜決戦編』 キャラクターリコメンド⑦柴大寿

現在「聖夜決戦編」が放送中のTVアニメ『東京リベンジャーズ』。本連載記事では、物語を彩る個性豊かなキャラクターたちをFebri視点で紹介していく。第7回は「聖夜決戦編」のキーパーソンである「黒龍」十代目総長の柴大寿をピックアップ。人の心を支配するほどの異次元の暴力性をはらむ大寿を、「強さ」と「弱さ」という観点から掘り下げよう。

取材・文/後藤悠里奈

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

暴力と破壊の権化が持つ「強さ」と「弱さ」

「私はッ二人も家族を殺めなければならないのですかぁ!!? こんなにも愛しているのに!!!?」

『東京リベンジャーズ』にはさまざまな「強さ」の形が描かれる。佐野万次郎(以下、マイキー)の、人の心を魅了する唯一無二のカリスマ性という強さ。龍宮寺堅(以下、ドラケン)の、喧嘩の強さと人を思いやる心の強さ。そして、橘日向(以下、ヒナ)の、花垣武道(以下、タケミチ)を想い続ける愛の強さ……。一方で「東京卍會(以下、東卍)」の敵対勢力「黒龍(ブラックドラゴン)」の十代目総長である柴大寿は、これまでのどのキャラクターとも異なる「強さ」を持っている。

彼の強さは異次元の暴力性に由来したものだ。同世代の者よりひと回り以上も大きい肉体は筋骨隆々としていて、その身体から繰り出す攻撃はまるで重機のように相手を破壊する。そして、たとえ相手がなんの恨みもない人間であろうと、華奢で小柄な女性であろうと、手をあげることに一切の躊躇(ためら)いがない。まさに、暴力と破壊の権化と呼ぶにふさわしい男である。だが、何よりも恐ろしいのは、大寿が「人を支配する強さ」を持つことだろう。

大寿の暴力は単に相手を痛めつけるためだけの中途半端なものではない。心もへし折るほどに徹底的にぶちのめし、自分と相手の圧倒的な差を見せつける。逆らうことなど許さない。いや、逆らおうという発想すらも奪い取ろうとするように。そして何より人の心をつかむ術に長けていた。それゆえに彼の取り巻きたちは大寿を絶対的な存在と認識し、彼に従属・心酔するのである。柴家の次男・八戒はそんな大寿を「子供の頃から“王”だった」と評していた。

また、大寿は暴力だけでなく言葉も使って人の心を絡めとる。亡くなった母と、家にほとんど寄りつかない父に代わり、幼くして柴家を仕切るようになった大寿は、圧倒的な暴力で八戒を屈服させると、「オレはオマエを殴りたいワケじゃない」「愛しているぞ八戒」と優しい言葉をかけて彼を籠絡(ろうらく)。さらに、八戒を守ろうとする長女の柚葉を見せしめのように痛めつける「恐怖政治」で、長年八戒の心を縛ってきた。八戒が東卍の仲間たちに「柚葉をずっと守ってきた」という嘘をついたのも、仲間からの期待と大寿への恐怖のあいだで板挟みになったがゆえの行動だった。

暴力と言葉で人を服従させる絶対的な強さをもった大寿。だが、それは裏を返せば、彼の「弱さ」の表れなのかもしれない。柚葉いわく、大寿の暴力が始まったのは母を亡くした直後から。もしかしたら、大寿が周囲に向けて振り上げた拳は、当時の彼なりの悲しみの発露だったのではないか。だが、身体が人よりも大きく、力のあった大寿は誰かに頼ることもできず、自分の弱さと向き合う機会を持たないままここまで来てしまったのだろう。

それに対して、タケミチはどうか。喧嘩には負けてばかりで泣き虫な最弱の東卍隊長だが、ヒナの愛を獲得し、数々の戦いを経てマイキーやドラケン、東卍の仲間たちと固い絆を育んできた。それはひとえに、タケミチには「弱さを受け入れ、立ち向かう強さ」があるから。自身と向き合うことはある意味で、喧嘩で勝つことや人を言葉で縛ること以上に「強さ」を必要とする。だからこそ、タケミチのまわりにはたくさんの人が集まってくるのだ。自分とはまったく異なる「強さ」をもったタケミチと拳を交えながら、大寿はいったい何を感じるのか――? その答えは、聖夜決戦が決着したときに明らかになるだろう。
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第8回(乾青宗&九井一)は3月7日公開予定
作品情報

TVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編
好評放送中
ディズニープラスにて世界定額制動画配信(SVOD)独占配信

  • Ⓒ和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会