Febri TALK 2022.07.20 │ 12:00

藤原さくら ミュージシャン

②音楽制作を通して想いが深まった
『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズ

近年はヒップホップテイストのサウンドにも取り組むなど、音楽的な探究を続けているシンガーソングライター・藤原さくら。彼女が選ぶ「人生を変えたアニメ」のインタビュー連載第2回は、劇場版の主題歌を提供した『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズ。ロボットアニメに興味がなかった藤原を惹き寄せた魅力とは?

取材・文/森 樹

互いの正義がぶつかり、人が命を落としていく切ない物語

――2本目に挙げた『コードギアス』は、劇場版(『コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道』。以下、叛道)で藤原さんが主題歌を提供することになった作品です。
藤原 最初に作品のことを知ったのは高校生のときです。ロボットものやバトルものを見る機会がそれまでなかったのですが、まわりの友達から「伝説の作品」と聞かされていて、そのときに見ました。

――藤原さんが知ったときには、すでにそのような作品として認知されていたわけですね。
藤原 そうなんです。本格的にハマったのは、主題歌を歌わせていただいた『叛道』のときですね。少し大人になったからなのか、ナイトメアに詳しくなくても刺さるシーンがたくさんあって。ユフィ(ユーフェミア・リ・ブリタニア)の虐殺シーンとか、けっこうショッキングな場面も多いのですが、作品の大きなテーマとしては「愛」を描いていると思うんです。ルルーシュ(・ヴィ・ブリタニア)から見れば、妹のナナリー(・ヴィ・ブリタニア)が過ごしやすい世界を作りたいという純粋な想いだったはずなのに、(枢木)スザクと傷つけあってしまう。『デスノート』の夜神月に近いですよね。ルルーシュは正義感を持ってただ状況を良くしたいと思っているだけなんだけど、別の視点だと「それは正義ではない」というところまで描かれていて。

――ルルーシュとスザク、どちらの正義も描かれています。
藤原 見ているほうとしては、どちらが本当の正義なのかわからなくなっていきます。ルルーシュは「綺麗事では世界は変えられない」というヒールの立場で、誰かが勝てばすべてが終わるし、そこに至るまでにたとえ人を殺したとしても、そのあとに幸せな世界をつかめればいいと思っている。一方のスザクは、間違って手に入れた勝利に価値はないという立場ですよね。過程が間違っていたら、いくらキレイな世界が手に入っても意味がないと考えていて。どちらも間違っているとは思わないですけど、結果的にそれがぶつかったとき、人の命が失われていくというすごく切ない物語だと思って見ていました。しかもルルーシュとスザクは敵対する者同士ではあるけれど、友達でもありますし。

――そういった関係のルルーシュとスザクの心情を丁寧に描いているのが『コードギアス』の特徴ですよね。
藤原 ロボットで戦っている部分はあるにしても、私たちが生きている現実の世界とつながっているというか、リアルだし、残酷だなと思いますね。それこそシンジュクゲットーで戦うシーンも、アッシュフォード学園に通っている人たちはみんな情報操作されているから、そんな状況だとはつゆ知らず普通にワチャワチャ学生生活を楽しんでいる。それが戦争なんだなというのが、今の日本にいてもよくわかるというか、目の前で起きていないから他人事に見えてしまう部分も描かれていますよね。

ルルーシュのことはやっぱり憎めない

――日常と戦争の対比が強調されていましたね。
藤原 その中でどう考えても悪役ではあるのに、私はルルーシュのことをやっぱり憎めなくて。やっていることを冷静に見ればヤバすぎるんですけどね……。

――それがあのラストシーンにもつながっていくというか。
藤原 そうですね。『コードギアス』が伝説たる所以(ゆえん)は、あのラストシーンにあると思います。

――ちなみに『叛道』の主題歌である「The Moon」はどのように制作したのでしょうか?
藤原 この曲は、私にとって初めてのアニメタイアップだったんです。小さい頃からアニメやマンガが大好きだったので、こういう機会をいただけた「The Moon」はすごく大切な作品になりました。制作中はスタッフもみんな『コードギアス』モードで盛り上がっていたので、LINEで連絡を取り合うときも「イエス、ユア・ハイネス」のスタンプを使っていたり(笑)。

――それくらい作品の世界観に思い入れて作ることができたのは大きいですよね。
藤原 だから私は「この楽曲は二次創作です」とずっと言っていました。『コードギアス』を見て、マンガや小説を描く方たちがいるのと同じく、自分は音楽でそれをやったという感覚ですね。作品を何度も見返しながら物語を読み解いていくなかで、愛することの難しさ、もどかしさを込めることができたかなと思います。

――作品の根幹となるテーマに寄り添って作曲することができたと。
藤原 ただ作品を見ているだけではなく、音楽としてアウトプットできたことで、『コードギアス』への想いはより強くなりました。

――ちなみに、いちファンとして、好きなキャラクターはいますか?
藤原 やっぱり、キャラクターとしてはルルーシュになりますね。ルルーシュの視点で物語を見ているというのも大きいですし、その言動に関してはいろいろ思うところもありますが、『R2』も含めた最後の最後、彼にすべて持っていかれたなという感は強くあります。昔の私のようにロボットアニメということで敬遠している方にも、ぜひ最後まで見てほしい作品です。endmark

KATARIBE Profile

藤原さくら

藤原さくら

ミュージシャン

1995年生まれ。福岡県出身のシンガーソングライター。シンガーソングライターとしてのみならず、役者としても活動。 天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。2022年3月に「わたしのLife」を配信リリース。現在は全国各地を回る弾き語りツアー 2022-2023 “heartbeat”を開催中。

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