TOPICS 2024.06.26 │ 18:00

『響け!ユーフォニアム3』
黒沢ともよに聞いた久美子の3年間②

吹奏楽青春アニメ『響け!ユーフォニアム』シリーズのTVアニメ第3期『 響け!ユーフォニアム3(以下、ユーフォ3)』が4月より放送中。高校3年生となり、吹奏楽部部長として悲願の全国金賞を目指す黄前久美子の奮闘を中心に、さまざまなキャラクターたちのドラマが描かれていく。残すところ最終話のみとなり、ファンの盛り上がりも最高潮に達しているなか、今回は久美子を演じる黒沢ともよさんのインタビューを前後編でお届け。後編は、印象的なシーンや最終話の見どころを中心に語ってもらった。

取材・文/岡本大介

久美子はお姉ちゃんの前でだけ素直に話すことができた

――第12話までで、とくに印象深いシーンはどこになりますか?
黒沢 第11話での、久美子とお姉ちゃん(麻美子)の会話ですね。お姉ちゃんに髪を結ってもらいながら、オーディションでソリに選ばれなかったことなどを淡々と話すのですが、久美子が自分の感情をそのまま口に出したのって『ユーフォ3』ではこの場面しかなかったような気がするんです。お姉ちゃんのように、久美子の話をただ「うんうん」って頷きながら聞いてくれる相手っていなかったですから。

――今回の久美子は「部長」としての言動が多いですからね。
黒沢 そうなんです。だからこそ、短いシーンではあるものの、100%自分のために話せたこのシーンがとても印象に残っています。第12話で、オーディションに落ちた久美子が麗奈の前で号泣するシーンがありますが、あれは「走ったら汗をかく」のと同じ感覚で、またちょっと違うんですよ。

――このシーンをセレクトしたのは意外でした。黒沢さんならではですね。
黒沢 本作には印象的なシーンが多いですよね。石原監督や小川(太一)副監督がおっしゃっていたことなのですが、『響け!ユーフォニアム』シリーズはこの『ユーフォ3』が最終章になるので、演出家の皆さんにとっては、担当話が「自分がやる最後の『ユーフォ』」になるかもしれない。それだけに力が入りすぎちゃったみたいで、全員が全力投球しすぎた結果、まるで短編映画のような話が13本揃っちゃったんです(笑)。だからこそ、ふと冷静になったときに「ココってこんなに綺麗なシーンでしたっけ?」という箇所も出てきたりして。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――具体的におぼえているシーンはありますか?
黒沢 第10話に久美子があすかに相談を持ちかけるシーンがあるんですけど、最初はあすかのセリフを受けた久美子が微笑むような演出がついていたんです。でも、この瞬間の久美子にそこまでの余裕はあるのかなとか、この微笑みにどんな意味があるのかなとか。アフレコの際にスタッフさんとそんな話をして。最終的には絵も芝居も含めて、ニュアンスが変更になったところもありましたね。

――久美子とあすかのシーンはわりと淡白な印象で、もっとガッツリと絡むシーンも見たかった気がします。
黒沢 その気持ちもわかります。とはいえ、そもそもあすかってそういうタイプではないですよね。常に「今」を生きている人なので、今さら高校時代の後輩の相談事なんて、言い方は悪いですけど、さほど興味がないというか(笑)。それが彼女のいいところでもあって、いい意味で過去を振り返らないんですよね。

アニメという芸術を愛する人なら、ぜひ愛してほしい作品

――今シーズンでは進路に悩む久美子の姿がたびたび描かれます。黒沢さんは子役時代から芸能界でお仕事をしていますが、進路に悩んだタイミングってありましたか?
黒沢 ありますよ。私が子役だった時代って、中学生になったら引退するのが不文律(ふぶんりつ)だったんですけど、ご縁のあるお仕事を引き受け続けているうちに、気がつけば大学生になってしまって(笑)。それでも大学卒業後は普通に就職するものだと思っていたので、まわりのみんなと一緒に就活をする予定でいました。

――そうだったんですね。結果的に芸能のお仕事を続けることになったのはなぜですか?
黒沢 ありがたいことではあるんですけど、学生時代から出演していた某アイドル作品が終わらなくて(笑)。すでに来年のライブのスケジュールが出ていたりして「これが続く限りは辞められないぞ」っていうところで覚悟を決めたのが大きかったですね。だから、今でも就活用に買ったリクルートスーツだけが残っています(笑)。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――そうだったんですね。本編の話に戻りますが、残すところ最終話のみです。個人的にどんなところが見どころだと思いますか?
黒沢 音楽が関わるシーンに尽きますね。音響監督の鶴岡(陽太)さんが「『ユーフォ』は音楽ものである」と言い続けている通り、この作品の根幹は音楽にあると思うので「すべての答えは音楽に託した」と言えるくらいに圧巻のシーンになっていると思います。エピローグではとある楽曲が使われているのですが、石原監督曰く「この曲を聞いた瞬間、絵コンテが動き出した」とおっしゃっていたので、どんな曲がかかるのかにも注目してください。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――第1期の放送から約9年が経過しました。最後に作品のファンに向けてメッセージをお願いします。
黒沢 9年前から応援してくださっている方も、最近になって好きになってくださった方も、ここまで応援してくださって本当にありがとうございます。久美子たちの高校3年間を描いたお話ですが、クリエイターの皆さんの10年間の情熱がギュギュッと詰まっています。ぜひその高い熱量を感じていただけたらうれしいです。よりよいアニメにすることだけを考えて作られた、極めて健やかで稀有な作品だと思いますので、アニメーションという芸術を愛する人であれば、ぜひ愛していただきたい作品だと思います。本当にありがとうございました。endmark

黒沢ともよ
くろさわ ともよ 埼玉県出身。東宝芸能所属。幼少時より子役として活躍し、2010年に劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』(小山夏紀役)で声優デビュー。声優としての代表作は『アイドルマスター シンデレラガールズ』(赤城みりあ役)、『魔女の旅々』(サヤ役)、『アークナイツ』(アーミヤ役)などがある。
作品概要

TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』
NHK Eテレにて 毎週日曜午後5時より好評放送中!

  • ©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024