Febri TALK 2022.07.18 │ 12:00

藤原さくら ミュージシャン

①音楽やカルチャーのルーツとなった
『ポケットモンスター』シリーズ

10代の頃から活躍するシンガーソングライター・藤原さくら。マンガ、アニメに幼少の頃から親しんできた彼女が選ぶ「人生を変えたアニメ」を聞くインタビュー連載。第1回は、幼少期から熱中し、文化的な素養を作り出した『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』シリーズについて。

取材・文/森 樹

放送に間に合わないと号泣するほど夢中になった

――藤原さんと『ポケモン』の出会いはいつ頃だったのでしょうか?
藤原 幼稚園、小学生くらいから『ポケモン』のアニメを見ていた記憶があります。もちろん、アニメだけではなくて、ゲームもカード、ごっこ遊びも。それと当時から絵を描くことが好きだったので、ポケモンたちの絵をよく描いていました。

――幼少期の藤原さんにとって、『ポケモン』はそれくらい大切な作品だったわけですね。
藤原 そうですね。鮮明におぼえているのが、友達とプールへ遊びに行ったときに「今日は木曜日だから『ポケモン』の放送日じゃん!」と途中で気づいて、放送に間に合わず号泣したことです。一緒に行った友達の親を困らせました(笑)。

――子供にとっては死活問題ですよね(笑)。
藤原 劇場版の中でも『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神(まもりがみ) ラティアスとラティオス(以下、ラティアスとラティオス)』が大好きで。あの作品でアコーディオンの音色に初めて触れて、音楽や主題歌を担当しているアコーディオン奏者・cobaさんのことも知りました。今思うと、ワールドミュージックの哀愁のあるメロディや音色が好きになったきっかけも『ポケモン』だと思います。

――『ポケモン』がアニメや音楽、イラストなど、藤原さんの文化的なルーツのひとつになっていると。
藤原 それはあるかもしれません。ポケモンの中ではピカチュウやプラスル、マイナン、ミュウやサニーゴとか、コロッとしていてキュートなキャラが好みでした。そのあとハマったアニメを振り返ってみると『おそ松さん』や『オッドタクシー』のようにキャラがデフォルメされた作品が多くて、そういった好みにも影響があるのかなと。あと『ラティアスとラティオス』では、ラティアスが擬人化して女の子(カノン)になるんです。それで最後、サトシにチュッとキスして終わるんですよ。あれが私にとって最初の「萌え」だったのかも。

――「萌え」を実感した作品も『ポケモン』だった。
藤原 子供ながらに、あのキスのシーンには「なにかすごいことが起こった!」と思ったんです(笑)。サトシがあまり動揺する様子を見せなかったのも印象的でした。

サトシとポケモンの関係を見直すようなセオリーから外れた展開が印象深かった

――印象深いエピソードはありますか?
藤原 個人的にはチコリータの回が印象に残っていますね。あとは、サトシたちがポケモンたちと離れてしまう回とか。小学生の心には、そういうセオリーから外れた展開がすごくショッキングに感じられたんです。たとえば、「ピカチュウのもり」(カントー編 第39話)で、ピカチュウが仲間たちと楽しそうに過ごしているのをサトシが見てしまって「ここにいたほうが幸せなんじゃないか」と悩むシーンとか。同じように、サトシとリザードンが別れる回(ジョウト編 第136話「リザードンのたに! またあうひまで!!」)もいいですね。

――いつもとは違うテイストの回が印象に残ったわけですね。
藤原 チコリータがサトシと喧嘩して出ていった回(ジョウト編 第138話「チコリータはごきげんななめ!?」)でも、ロケット団のメカに攫(さら)われそうになったチコリータをサトシが助けようとして仲直りするじゃないですか。ロケット団の余計な行動から互いの誤解が解けていく流れは好きですね。

――ゲームでは描ききれない関係性が描かれたり、キャラクターが掘り下げられたりするのもアニメの特徴ですよね。
藤原 『ピカチュウのなつやすみ』や『ピカチュウのふゆやすみ』みたいに、ポケモンたちの視点で進む短編も好きでした。ポケモンたちがワイワイしている様子を見ていると、なんで現実世界にはいないんだろうか……って真剣に思ってしまいますよね(笑)。

――アプリで『ポケモンGO』が出たり新作ゲームが出たりと、今でも展開が続いていますね。
藤原 ハリウッドで実写の映画(『名探偵ピカチュウ』)になるなんて思ってもみなかったです。すごい。あとゲームの話になりますが、『ポケモン』はコミュニケーションツールでもありました。地下の洞窟の中に秘密基地を作ったり(『ポケットモンスター ダイヤモンド/パール』)、『ポケモンレンジャー』も好きだったし、みんなで通信して遊んでいたので。それこそミュージシャンの草野華余子さんと意気投合したのも、お互い「『ポケモン』が好き」というところでした。

――かつてアップしていた動画で『ポケモン』主題歌の「めざせ!ポケモンマスター」をカバーしていましたが、主題歌をやってみたいと思いますか?
藤原 今でもカラオケに行くと絶対に歌います(笑)。『ポケモン』の主題歌を歌うのが夢なので、これまで主題歌を担当されたアーティストの方々に対しては、お会いしたことがなくても「うらやましい!」って勝手にライバル視しちゃっています(笑)。endmark

KATARIBE Profile

藤原さくら

藤原さくら

ミュージシャン

1995年生まれ。福岡県出身のシンガーソングライター。シンガーソングライターとしてのみならず、役者としても活動。 天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。2022年3月に「わたしのLife」を配信リリース。現在は全国各地を回る弾き語りツアー 2022-2023 “heartbeat”を開催中。