Febri TALK 2021.07.21 │ 12:00

佐藤大 脚本家

②『重戦機エルガイム』
アニメから卒業できなくなった分岐点

脚本家・佐藤大が影響を受けたアニメについて語る、連載インタビューの第2回。今回は、ファッションセンスに惹きつけられたという『重戦機エルガイム』、そしてオタク街道に突き進んだ高校時代について語る。

取材・文/宮 昌太朗 撮影/須崎祐次

スタイリッシュなメカデザインにノックアウトされた高校時代

――2本目は、富野由悠季監督のTVシリーズ『重戦機エルガイム(以下、エルガイム)』。1984年放映ということは……。
佐藤 中学生ですね。『エルガイム』はアニメファンを卒業できなくなった、その原因になった作品です(笑)。というのも当時、アニメってダサいなって思っていたんですよ。

――あはは。
佐藤 アニメと同時並行で、YMOとかも好きになるわけじゃないですか。しかも、当時は『テクノデリック』が出たあとで、ファッション的にもめちゃくちゃカッコいいんですよ。一方のアニメはというと、たしかにブームにはなっていて飽和状態みたいな感じ。ただ、出てくる洋服とかファッションはどれもカッコよくなかったんです。加えて僕自身、思春期に入っているから「モテたい」っていう気持ちも当然ある。あと、その頃って少女マンガを熱心に読んでいたんですよ。雑誌の『LaLa』とかフラワーコミックスとか……。『前略・ミルクハウス』って最高だなって思っていたし、あと日渡早紀とかなかじ有紀とか、出てくるファッションがみんなカッコいい。しかも、そうこうしているうちに、吉田秋生が『BANANA FISH』の連載を始めて「大友克洋か!」みたいな(笑)。

――たしかにどれもファッショナブルですね。
佐藤 そんなこともあって「もうそろそろアニメも卒業かな」と思っていたんです。富野(由悠季)監督の作品は――それこそ富野作品という自覚はないけど『無敵超人ザンボット3』も『無敵鋼人ダイターン3』も見ていたし、『機動戦士ガンダム』以降はずっとリアルタイムで追いかけていました。ファンタジー寄りになった『聖戦士ダンバイン』で「ちょっと趣味と合わないな」と思っていたんですけど……。ちょうどそのタイミングで『エルガイム』が始まっちゃうんですよ。

――「始まっちゃう」なんですね(笑)。
佐藤 キャラクターの着ている洋服がどれもカッコよくて、いわゆるストリートファッションだったんですよね。加えて内容的にも音楽ネタで……。のちにスタッフとして永野護さんが参加していたのを知ることになるんですけど、とにかくロボットがスタイリッシュでカッコよかったんです。

――なるほど。当時のポップカルチャーを踏まえたビジュアルだったのも大きい。
佐藤 当時好きだった『ポッパーズMTV』とか、洋楽、ニューウェイヴっぽい感覚が、作品内に普通に存在していたんです。あらためて考えると、永野さんがこっそり入れ込んだ要素をガチッと受信したっていうか。で、そうこうしているうちに、東映動画でアルバイトしていた友達から「スタジオビーボォーってのがスゴいらしい」みたいな話を聞いて。その流れでアニメーターの北爪宏幸さんのファンクラブに入るんです(笑)。

――ファンクラブですか!?
佐藤 ファンクラブといっても、ファンが勝手に集まって北爪さんが参加している話数を調べて、同人誌にまとめるっていう活動なんですけど(笑)。で、同人誌の内容を北爪さんにも確認してもらうんですけど、そのとき一緒に原画のコピーもさせてもらって掲載したり。振り返ると、おおらかな時代だったなって思いますね。

――あはは。
佐藤 個人的に、北爪さんが描くガウ・ハ・レッシィがいちばんかわいいと思っていたんですけど、のちに『ニュータイプ』についてきたフォウ・ムラサメのポスターを描いたのが北爪さんだったことを知って、「ああ、俺のリビドーがここに……」と(笑)。まあ、初恋の相手がガウ・ハ・レッシィですからね。

――当時はファンと制作現場の距離が今より近かったんですね。
佐藤 その頃、僕も東映動画でアルバイトしていたんですよ。当時は『G.I.ジョー』とか『トランスフォーマー』とか、アメリカとの合作がすごく多い時期で。アメリカと日本でタイムシートの書き方が違うから、アメリカのタイムシートをコピーして日本のタイムシートに合わせて貼り直すっていう――今ならExcelで5秒で終わる仕事を、高校生4人が夏休み中、東映の会議室みたいなところに詰めてやっていたんです(笑)。で、そこのバイトの先輩たちって、やっぱりみんなすさまじいアニメ知識の持ち主ばっかりなんですよ。

――東映動画にバイトに来るくらいだから、それはそうですよね。
佐藤 今だとハラスメントみたいに捉えられがちですけど、当時は自分の知っている知識を人に教えることを是とする、そういう雰囲気があって。しかも、聞くほうも「それ、知らない」って言うのが悔しいからメチャクチャ勉強する、みたいな。そのときの知識自慢は、僕にとってすごく勉強になったんです。

――アニメを巡る熱気というか、渦の一端に触れたという。
佐藤 そうですね。先輩と一緒に『DAICON FILM』のビデオを見て「この庵野(秀明)ってヤツはすげーんだよ」って話したり。東映動画でアルバイトをしていたから、そういう情報がバンバン入ってきて……。まあ、いろいろな意味で『エルガイム』はアニメから卒業できなくなったきっかけの作品なんです。endmark

KATARIBE Profile

佐藤大

佐藤大

脚本家

さとうだい。1969年生まれ、埼玉県出身。専門学校在学中から放送作家として活動をスタートし、1997年に放映された『永久家族』で初めてアニメ脚本を手がける。主な代表作に『交響詩篇エウレカセブン』『怪盗ジョーカー』など。2021年7月22日公開の『サイダーのように言葉が湧き上がる』に脚本として参加。