Febri TALK 2021.10.15 │ 12:00

鈴木貴昭 企画/文芸/脚本

③アニメ業界へ飛び込む転機となった
『赤ずきんチャチャ』

豊富なミリタリー知識を生かし、『ストライクウィッチーズ』をはじめ数多くの作品で世界観設定や軍事考証などを務めるライター・鈴木貴昭が選ぶアニメ3選。3本目はアニメ業界を目指す直接的なきっかけとなった『赤ずきんチャチャ』。

取材・文/岡本大介

ハイテンションな掛け合いに激しく萌えた

――3作目は1994年放送の『赤ずきんチャチャ』です。本作はいわゆる女児向けの変身ヒロイン作品ですよね。
鈴木 僕がまだ会社員をしていた頃、風邪をひいて数日間寝込んだことがあったのですが、そのときに大学時代の先輩が「これを見ろ」と送ってきたのが『赤ずきんチャチャ』のビデオでした。当時、その先輩がハマっていて、言わば布教活動の一環で私に送りつけてきたんですが、実際に見てみたらまんまとやられました。ハイスピードな掛け合いとシュールなギャグセンスに度肝を抜かれ、さらに作画もよかったですし、いわゆる「チャチャ三羽烏」と呼ばれた演出陣(大地丙太郎、佐藤竜雄、桜井弘明)の才能もスゴくて。女児向け作品にこんなものがあるのかと衝撃を受けて、風邪で朦朧としながらも延々と見続けました。

――それまで女児向けアニメは鑑賞の対象外だったんですね。
鈴木 はい。姉がいるので子供の頃から少女マンガはよく読んでいたんですけど、アニメとしてはほとんどフォローしていなかったですね。

――このくらいから、男性が見ても楽しめる女児向けアニメも増えてきました。
鈴木 そうですね。私のまわりにいたオタクたちは、前番組の『姫ちゃんのリボン』からハマっていた人も多かったですし、世の中的にも、男性が女性向け作品を見てもいいという風潮になってきたタイミングだったと思います。実際、本作も、女児向けではありつつ、男児や我々オタク層も意識して作られていたと思います。

――原作と比べると設定やストーリーが大幅に変更されているんですよね。
鈴木 もともとは玩具メーカーの意向だと思いますが、結果的に作品としてもスゴく面白くなっているんですよ。「マジカルプリンセス」という変身ヒロイン要素を取り入れたことは作品としては大改編ですけど、それによってリーヤとしいねの存在意義がよりはっきりしましたから、そこはやはり「設定」の勝利ですよね。

これまでになく

「キャラ萌え」を強く感じて

初めてアニメに関わる仕事を

したいなと思ったんです

――なかでも好きなキャラクターはいましたか?
鈴木 私はお鈴(おりん)ちゃんが好きだったので、エピソードとしては第12話の「お鈴ちゃんの初恋」がいちばん好きです。あとはやっこちゃんもいろいろとかき回してくれる存在で、マリンちゃんと絡むとだいたいロクなことにならないオチも見ていて面白かったです。このふたりに限りませんが、とにかくキャラクター同士の掛け合いが本当にかわいくて、ハイテンションギャグの威力を思い知りました。これまでになく「キャラ萌え」という感覚を強く感じて、初めてアニメ作りに関わる仕事がしたいなと思ったんです。

――アニメ業界へ転向するきっかけになった作品なんですね。
鈴木 そうですね。『赤ずきんチャチャ』を見て「アニメってすごいな」と思っていた時期に脚本家の山口宏さんと知り合って、それで会社を辞めてフリーになったんです。それからは山口さんの紹介でゴンゾ (GONZO)に出入りさせていただくようになり、最初はゲーム関連の仕事をしていたんですが、『LAST EXILE』でアニメのお手伝いをさせていただくことになり、それから今に至ります。だから、あのときに『赤ずきんチャチャ』を見ていなければ、おそらくアニメ業界で仕事をしようとは思わなかったです。しかも風邪で朦朧としながら見たことも、今にして思えば良かったのかもしれません。普通の状態で見るよりも、強い衝撃を受けたと思いますから(笑)。

――ご自身のお仕事に影響を与えているところもありますか?
鈴木 あると思います。『ストライクウィッチーズ』など、登場人物が多い作品でキャストの配置を考えるときなどは意識しましたね。『赤ずきんチャチャ』って、どれだけ掛け合いが速くなってセリフ数が増えても、ちゃんとそれぞれの声が聞き取れるんです。まずチャチャが普通のヒロインボイスではないですし、ほかのキャラクターの声も尖っていて、誰がしゃべっているのかがすぐにわかる。それにやっこちゃんなどは、ここぞというときには九州弁になったりして、それも耳に残りますし、要所でのセリフの置き方もうまいんです。『ストライクウィッチーズ』もたくさんの女の子が登場するので、そこは声質がかぶらないように考えたり、セリフが少ないキャラクターはひと言でもインパクトを与えられるように特徴的な声質にするなど、『赤ずきんチャチャ』の聞き取りやすさを意識した部分はありますね。

――なるほど。これまで3作品について聞いてきましたが、いずれもよくできた世界のなかでキャラクターたちが自由奔放に暴れまわっている作品ばかりですね。
鈴木 ストーリーにはあまりこだわりはなくて、王道であればいいと思っているタイプなんです。それよりは「設定」と「キャラクター」が絶妙に絡み合っている作品が好きで、私が関わる作品に「萌えミリタリー」が多いのは、まさにそういうものが作りたいからでもありますし、幸いなことに需要があったからだと思います。これからアニメの流行がどうなっていくかはわかりませんが、私としてはミリタリーにこだわっているわけではなく、ファンタジーでも歴史ものでも、そこに刺激的な世界と魅力的なキャラクターさえあれば満足なんです。クリエーターとしてもアニメファンとしても、これからも変わらずにそういう作品を楽しんでいきたいなと思います。endmark

KATARIBE Profile

鈴木貴昭

鈴木貴昭

企画/文芸/脚本

すずきたかあき 北海道出身。『LAST EXILE』の脚本・文芸担当として初めてアニメ制作に携わり、以降多くのSF・ファンタジー作品で世界観設定や軍事考証などを務める。代表作は『ストライクウィッチーズ』『ガールズ&パンツァー』『ハイスクール・フリート』など。

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