TOPICS 2024.07.26 │ 12:00

『機動武闘伝Gガンダム』
30周年 ドモン・カッシュ役 関 智一インタビュー②

放送30周年を迎えた『機動武闘伝Gガンダム』。ここでは、主人公ドモン・カッシュを演じた関 智一さんへのインタビューの後半戦をお届けします。役者陣の温かい関係、音響監督・浦上靖夫さんの愛ある厳しさ、そして総監督・今川泰宏さんへの熱い想いを、じっくりと語っていただきました。刮目して読むべし! 見よ、東方は赤く燃えている!!

取材・文/前田 久

今川泰宏さんの演出に魅了されていた

――第12話で東方不敗マスター・アジアが登場してから、作品のトーンが少し変わる印象です。主演の関さんはこれを当時、どう受け止めていたのでしょう?
 超級覇王電影弾を初めて撃ったとき、師匠の顔が飛んでいくじゃないですか。あそこで『ミスター味っ子』的な、今川ワールドが『Gガンダム』にも色濃く出始めた気がしましたね。当時はもう、痺れていました。「面白い!」って。僕は今川さんに魅了されていたんですよ。突飛だけど、ただ変なだけじゃないところが良くて「次は何をやってくれるんだろう?」と毎回楽しみでした。師匠が登場したあたりは、先代のシャッフル同盟の人たちが出てきて、みんなが洗脳されてしまうくだりも印象深いですね。

――第14話から第16話のあたり。
 あのへんは戦うシーンが多くて。楽しかったし、大変だったんです。

第37話「真・流星胡蝶剣!燃えよドラゴンガンダム」のアフレコ秘話

――共演者の方で、印象深かったお芝居はありますか?
 やっぱり(大塚)芳忠さんの、いわゆるアメリカの「ヤンキー」みたいなお芝居が「すげえ!」と思いました。日本語しかしゃべっていないのに、でもアメリカ人だってわかるじゃないですか。「ヘイ! ジャパニーズ!」みたいな、あのセリフの感じにめっちゃ憧れて、よく真似していました。あとは(山口)勝平さんが本当に世話好きというか、とても良い先輩で。「真・流星胡蝶剣」の回がありますよね?

――第37話ですね。サイ・サイシーと二度目の対決。
 ああいうとき、勝平さんは始まる前から下地作りをしてくれるんですよ。「今日は大声合戦だね! 負けないからな!」みたいに声をかけてくれて。そう言われると「こっちも負けないように頑張ろう」と思えるじゃないですか。おかげですごく楽しかったです。のめり込んで、流れに乗って演じるのがたまらなくて。

――劇中のふたりさながらですね。
 ちなみに、あの回でドモンはサイ・サイシーに「今、楽にしてやろう」と言ってから「ヒート・エンド!」という相手を爆発させる決めゼリフを言うんですけど、これはどういう気持ちで言っているんだろう?と思ったんです。それで浦上さんに「これはサイ・サイシーを本当に殺す気なのか、じつは体裁でやっているのか、どっちなんですか?」と聞いたら、浦上さんから「殺すつもりだ」と言われたので、じゃあ、そういう気持ちでやろうと。

――極めてシリアスに演じられた。
 映像では、そこで広瀬正志さんが演じるネオ・チャイナの偉い人が「そこまで!」と言って止めてくれて、イーブンになって事なきを得る……という流れなんですけど、広瀬さんが僕らの勢いに負けじと、すごい気迫でセリフを言ってくれたんです。本当に素敵なお芝居だったんですけど……アフレコ中、眼鏡をかけていらっしゃったので、言ったはずみに眼鏡がポーン!と飛んで。

――そ、それは……。
 で、画面か何かに当たって、カランカラン……と音を立てて転がって。そのセリフのあと、ドモンがサイ・サイシーを心配して声を掛けるんですけれど、目の端に眼鏡が飛んでいくのが見えちゃったもんだから「サイ・サイシー!」という呼び声が笑っちゃっているんです。でも、OKが出たんですね。その頃、僕は自分からは録り直したいとは言わないように決めていたんです。それは監督の決めることで、こちらからいうのは役者のわがままだと思っていた。だからOKが出た以上、とくに何も言わなかったんですよ。きっと大丈夫なんだろうなと。でも、オンエアを聞いたら、やっぱり笑っているんですよ(笑)。誰もが迫真の演技をしたがゆえの、ちょっとしたアクシデントですね。あの回は野沢那智さんがゲストで、サイ・サイシーのお父さん役を演じてくださって。今川さんが大好きだから呼んだそうで、とても楽しそうにされていて、現場もその話題で持ちきりだったのをおぼえています。

僕のパートは毎回、全部録り直していた

――『Gガンダム』のゲスト声優は、洋画吹き替えの大御所の方が多いですよね。
 そうそう。今川さんが『スタートレック』や洋画がお好きなので、普段は吹き替えを中心に活躍されている方を呼んでくることが多かったんです。
――『スタートレックTNG』のピカード役の麦人さんがゲストで出演したと思ったら、終盤では大活躍していたり……。
 キラル・メキレルね。あれも好きなキャラでしたね。あのキャラクターが出てくる回(第28話)のアフレコも印象に残っています。戦っているときのアドリブをステレオタイプじゃないものにしたいと思って、細かい格闘のところを自分なりに工夫したんですよね。

――『Gガンダム』の現場では録り直しもたびたびあったとか。
 基本、僕は全部録り直しでした。全員で本番を通して収録してから「ここを録り直します」と個別に言われるんですけど、僕の場合は出ているところ全部なんですよ。しかも1回で済むわけじゃなく、何度もやる。もちろん、本番では一生懸命やっているんですけど、「もう1回やるんだよな」と覚悟はしているような感じでした。息芝居といわれる、ちょっとしたアドリブも結構厳しかったんですよね。戦闘中の息だけで20テイク近く重ねることも結構ありました。

――壮絶ですね。
 たまにすぐOKが出るものもあって、何が違ったのかは今となってはわかりませんけれど、そのときの経験が原点にあるから今もこの仕事を続けられているところがあると、本気で思います。あの頃は他の現場に行ってすぐOKが出たりすると、逆に疑心暗鬼になっていたんですよ。浦上さんの現場であんなに直されているのに、他で一発でOKなわけがなかろう、と。そうやって不安になったことで「自分でもっとちゃんと管理しないと、他では言ってもらえないんだな」と理解したんです。

作品情報


今川泰宏総監督書き下ろし
『機動武闘伝Gガンダム外伝 天地天愕』

公式サイトにて公開中!
https://g-gundam.net/sidestories/

【あらすじ】
第13回ガンダムファイト決勝大会開会式を前に新生シャッフル同盟となったドモン達は各国のガンダムファイター達から代替わりの意図を問われ、答えに窮する。答えが出ないまま、マスター・アジアとドモンの演武とともに決勝大会の開会が宣言された。そこへ謎の五体のガンダムが現れ、《ダーク・シャッフル》と名乗るのだった…。

 

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