TOPICS 2024.08.02 │ 12:00

師匠に聞け!『機動武闘伝Gガンダム』30周年
マスター・アジア役 秋元羊介インタビュー

皆さん、お待ちかね! 『機動武闘伝Gガンダム』が放送30周年を迎えました。シリーズの異色作と呼ばれたのも今や昔。時代を超えて愛され続けるスタンダードとなった今作の魅力を、あらためて掘り下げます。ご登場いただくのは、本作のナレーターであるストーカー役ならびに東方不敗マスター・アジア役として圧倒的な存在感を見せた秋元羊介さん。大ベテランの逸話をご堪能あれ。それではインタビュー本文に……レディー・ゴー!!

取材・文/前田 久

まさかあんな重要な役になるとは思わなかった

――『機動武闘伝Gガンダム(以下、Gガンダム)』が放送30周年を迎えました。
秋元 この30年、だいたい毎年、何らかのかたちで『Gガンダム』関係の仕事があるんです。去年もストーカーとしてナレーションを1本録りました。あれは担当者がまだやりたがっていたから、今年も話が来るんじゃないかと(笑)。他にもゲームとか『Gガンダム』の役を演じる機会はいろいろと多いですね。

――じつに息の長い作品ですね。
秋元 本当に。ありがたいことです。だから作品に関係する思い出も多いんです。

――ぜひ、いろいろと聞かせてください。まず、そもそも『Gガンダム』への出演はどのように決まったのでしょう?
秋元 オーディションなどはなく、突然「今度こういう作品の仕事が入りました」と連絡をいただきました。当時はそういう、それまでの仕事のお付き合いの流れでお話をもらうことが多かったですね。最初はストーカー……つまりはナレーター、作品の語り部としての依頼だったんです。作品の案内役だから、1年間ずっと出番があるというので「ああ、これはありがたい仕事だな」と思ったのを覚えています(笑)。

――総監督の今川泰宏さんとの、それまでのご縁は?
秋元 今川さんはこの前にも『ミスター味っ子』とかOVAの『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』でも呼んでくれていましたね。私のアテレコ業界に入ったきっかけが、『砲艦サンパブロ』っていう映画の吹き替えなんです。スティーブ・マックイーンが主役で、マコ岩松という日系の役者さんが出ていて、そのマコさんの役に私を使いたいと音響監督が呼んでくれたのが初めての声の仕事でした。その頃の私はテレビ映画の野球のスポ根もので監督役をやることもあったし(※TBSドラマ『ガッツジュン』萩原哲雄役のこと)、あるいは時代劇に出ることが多かったんですよ。そういうのを見て気に入ってくれて、声の仕事に呼んでくれたんですけど、そうしたらそのあと、マコさんの吹き替えが持ち役になった。いろいろな作品で演じましたね。今川さんはたぶん、そういう仕事を見ていてくれて、名前と声を覚えてくれたんじゃないかと思います。

――最初からマスター・アジアとの兼役のオファーではなかったのでしょうか?
秋元 全然ですね。最初はマスター・アジアの「マ」の字もなかったです。マスター・アジアは第12話で出てくるんだけど、たしかその前の収録で「秋元さん、来週から出てくるマスター・アジアって役もやってもらうから」と今川さんが言うから「ああ、そうですか」と(笑)。

――あくまで軽い感じで受け止めた。
秋元 それがまさかね、あんな重要な役だとは思わなかった。ただ、マスター・アジアってセリフがわりと時代劇調でしょう? さっきも言ったけど、私は時代劇を結構やっていて、自分でも時代劇調のセリフは得意だと思っていたんです。だから「ハマり役だな」と思いましたよ。

ほぼ同い年でマスター・アジアを演じた

――マスター・アジアのビジュアルを初めて見たときの印象は覚えていますか?
秋元 「いやあ、こんなカッコいい役をやっていいのかな」って(笑)。じつは今日も来る前にマスター・アジアの出ているところを見返してきたんだけど、初登場からいいじゃないですか。

――ドモンを颯爽と助けて、痺れますよね。
秋元 「これを俺が演(や)っていいの?」って感じでしたよ。だけど、いざ演ってみたら、もう気持ち良くてねぇ!! 最初からのめり込んで演りましたよ。

――台本以外に、今川さんから役について説明はありましたか?
秋元 何にもないですね。まったく任されて「好きにやってください」でした。音響監督の浦上靖夫さんからも、何も言われたことはないですね。当時、私の年齢が50歳ぐらいで、マスター・アジアの設定も49歳。年格好も同じなんですね。そして音響監督の浦上さんも50歳で、ほぼ同い年だった。だから何となく同い年ってことで親近感があったんですよね、お互いにね。

――物語が進むにつれて、マスター・アジアの秘密がどんどん明かされますよね。じつはドモンと敵対することがわかり、真の目的がわかり、さらには病も発覚する。
秋元 そうしたことは、すべて演じているうちにわかってきた感じですね。先に展開を教えられるとか、そういうことはまったくなかった。

――となると、次の台本が届くたびにびっくりしたんじゃないですか?
秋元 どちらかと言うと、「こんなにもずっと出ていていいの?」と、そっちに驚いていました(笑)。1話の長さはだいたい25分なんですけど、あるときなんて、そのうちの20分くらい私がしゃべっている気がした。ストーカーのしゃべりが前半と後半にそれぞれあって、そのあいだの部分もマスター・アジアがほぼ全編しゃべっている。こんなに公共の電波を独占してもいいのかな?と、思わず考えてしまうこともありました(笑)。

――しかもただしゃべるだけではなくて、ストーカーのナレーションも次回予告も、マスター・アジアのセリフも、とにかく叫ぶ。
秋元 ストーカーは「皆さん、お待ちかねーっ!」で始まって「レディー・ゴー!!」で終わらせるのが基本でしたからね。ちなみに「レディー・ゴー!!」の「レ」は「R」じゃないですか。だから頭に「う」の音をつけて「ゥレディ・ゴォー!!」みたいに読んでいたんですよ。そう意識することで、ちゃんと「R」の発音だと強調しようと思っていた。そういう細かい工夫も、いろいろとしていたんですけどね(笑)。

作品情報


今川泰宏総監督書き下ろし
『機動武闘伝Gガンダム外伝 天地天愕』

公式サイトにて公開中!
https://g-gundam.net/sidestories/

【あらすじ】
第13回ガンダムファイト決勝大会開会式を前に新生シャッフル同盟となったドモン達は各国のガンダムファイター達から代替わりの意図を問われ、答えに窮する。答えが出ないまま、マスター・アジアとドモンの演武とともに決勝大会の開会が宣言された。そこへ謎の五体のガンダムが現れ、《ダーク・シャッフル》と名乗るのだった…。

 

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