「トゲトゲ」には企画が動き出した頃の自分が反映されているのかも
――まずは本作への参加の経緯から教えてください。
花田 もともとは平山さん(平山理志プロデューサー)がサンライズにいた頃、シリーズディレクターの酒井(和男)さんと3人で、フル3DCG作品の企画をゼロから作っていたんです。でも、平山さんが東映アニメーションに移られて、その企画は一度白紙に戻って。そこから東映アニメーションで新しい企画を作り直すことになったのですが「ステージで展開できる、深夜向けアニメの企画にしてほしい」というようなことを平山さんが言い出して、それはどうなんだと(笑)。これまでに近いテイストの作品をやってきていたので、正直なことをいうと、この企画が始まった当初、僕はずっと不機嫌だったんですよ(笑)。
――うーむ(笑)。
花田 そんな経緯があって「音楽ものをやりたいなら、『バンドもの』だったらやってもいいです」といった提案をしたのをおぼえています。その話は通ったものの、平山さんからは「『楽器を持っていないバンド』と謳っているグループもありますが、こういうのはどうでしょうか?」とか「バンドメンバーにメイドの格好をさせるのはありでしょうか?」といった話が出てきたので、まだそのあとも僕は相当イライラしていたと思います。もしかしたら酒井さんが「トゲトゲ」という言葉を思いついたのは、この頃の僕を見ていたからでは?なんて思うくらいでしたよ。毎回打ち合わせをするたびに、トゲが出ちゃうような話を聞かされていたんです(笑)。
――あはは。「バンドもの」を提案した裏には、どんな思いがあったのですか?
花田 少し語弊があるかもしれませんが、当時、アニメの「バンドもの」で描かれている内容が、どちらかというと「アイドルもの」に近いんじゃないかなと思うところがあったんです。だから本来の「バンドもの」を目指したら新しいことができそうだな、という感覚が漠然とありました。それがあったから、自分からグイグイと押して書いていったというのが、最初の流れでした。
――作品からは少し離れますが、花田さんはこれまでの人生で、バンドとどういう関わり方をしてきたのでしょうか?
花田 もともと邦楽ロックがすごく好きで、ライブハウスにもよく通っていたんです。あと、その手の映画や小説も好きなんですよね。『グミ・チョコレート・パイン』とか『青春デンデケデケデケ』とか。そういうものに触れてきたから「『バンドもの』ってこうだよね!」みたいな思いがすごくあって、いつか自分でもやってみたかったんです。だから初期は、平山さんと酒井さんに「アイドルもの」と「バンドもの」では根本的に描くテーマやストーリーの方向性が違うことをどう伝えていこうかな?と思うことが多々ありました。そのすり合わせには、少し時間がかかったかもしれないですね。
第5話の話し合いでようやく方向性が固まった
――そうして走り出したバンドもの企画が、現在のストーリーにまとまり始めたのは、いつ頃なのでしょうか? 平山プロデューサーは「第1話の脚本の初稿に驚いた」みたいなお話を取材でよくしていますが。
花田 初期の頃はどうしても、イメージしていた「バンドもの」というニュアンスが通じずにかなり紛糾しました。おそらく何度かそういうことがあって「もう具体的に書いていったほうが早い」と思って、いきなり次の打ち合わせで第1話の脚本を書いていったんだと思いますね。平山さんが「驚いた」とおっしゃっていたのは、心の準備をされていない状態で読んだからだと思いますよ(笑)。
――いやいや、内容にも驚いていたようですけれども(笑)。ともあれ、そこからはスムーズに初稿の作業が進んで、かたちが見えてきたんですか?
花田 そのままずっと書いていきましたが、「腹が決まった」と感じたのは第5話ですね。衣装をどうしようか?と話し合う際、やっぱりまたメイド服みたいなものだとか、アイドルものっぽい企画に寄せる意見が出てきたんです。そこで「いや、ガールズバンドって素人なんだから、チャットモンチーやSHISHAMOみたいな、Tシャツにデニムとかでいいんじゃない?」と言ったら「いやいや、それじゃあアニメ映えが……」というようなことを返されたんですよ。そこでまた意見が対立したんですけど、僕が脚本で胸元に字が書いてあるTシャツを着せて「これじゃなきゃイヤだ!」と押し通したんです(笑)。この作品はアイドルものにはしない、という僕からの最後通告でした。
――話題になった「不登校」「脱退」「嘘つき」のTシャツを。
花田 あれを「わかった、それでいこう」と皆さんが受け入れてくれたとき、僕の中ではようやく「まとまったな」という感覚がありました。ここで衣装が決まるまでは、バンドものといっても、もうちょっと明るい作風や、女の子たちが賑やかにやっているイメージがなんとなくあったと思うんです。でも、第5話の話し合いのあとで「もうこの方向で行くんだ」と僕の中でも腹が決まりましたし、現場もその空気になったのかなと感じています。それまではけっこう手探りでしたね。
――今のお話だと、最初にシリーズ構成をある程度固めてから脚本の執筆に入ったわけではないんですか?
花田 そうです。オリジナル作品に関してはそうやって初稿をどんどん書き進めて、行き詰まったら戻って考えるということが多いかもしれないですね。『宇宙よりも遠い場所』もそうでした。先日、知り合いのライターさんともそんな話をしたので、僕に限った話ではないのかもしれません。一応、ざっくりと先の展開も決めるんですけど、やっぱりその通りにはいかないことがたくさんあって、試行錯誤の中で書きながら、どこまで掘っていけるかを探っていくことはよくありますね。
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