すばるが悩みを解決するところはあえてはっきり見せないようにした
――SNSに、脚本執筆中に「予想外だったこと」があると書いていましたが、それはヒナのことですか?
花田 いえ、それは第1回でお話しした、仁菜を説得するのに5話もかかっちゃったことと、あとは放送後の反響です。思ったより仁菜は嫌われていないな、と。僕はもっと拒絶反応が起きると思っていたんですよ(笑)。
――そうなんですか! 僕はもう、第1話の時点でものすごく愛せていたので……。
花田 「好き」というよりは「面白がられていた」ような気もするんですけど、でも「愛されているな」という感覚があって意外でした。皆さん、心が広いというか、ストレス溜まっているのかなぁ……(笑)。
――あはは。花田さんとしては尖った、エキセントリックなキャラのつもりだった?
花田 そんな気持ちだったので、第4話までにルパたちを本格的に出せなかったら、キャラクターものとしては厳しい戦いだな、と思っていました(笑)。
――でも、第2話では「かわいい要員」のすばるが登場していますし(笑)。智やルパも含めていいバランスだと思うのですが、そこはどのように考えていったのでしょうか?
花田 すばるに関しては、最初に仁菜と桃香の間に入れることを考えると、立ち回りが上手な子がいいだろうなと思いました。ふたりが非常に不器用なので、器用な子がいるとお互い引き立つだろうと。とはいえ、それだけだと面白くならないので、ひと癖ある女の子にしています。でも、書いていくうちにキャラクターが育っていった印象がありますね。智とルパの出番が遅くなった分、すばるを第4話でギュッと前に出したことで、仁菜、桃香とのチーム感が出せて、結果的に作品の魅力が上がった気がします。
――すばるの「ひと癖」の部分、お祖母様との関係性もまた魅力的でした。
花田 すばるもまた仁菜とは違うところで悩んでいることを描こうと思ったんです。ただ、こういう子は、悩みを解決しようと動いているところを他人に見せたがらないだろうな、と。だからたとえば、第11話でお祖母さんにメールを送るくだりなども、あえてはっきりと見せないようにしています。
――終盤のすばるとお祖母様のやりとりの描き方は、カッコいいと思いました。省略の美学というか。
花田 そのあたりは、自分がこれまで脚本を書いてきて思っていたことも反映されているんですよ。第4話であそこまで描いているのなら、その先はあえて描かなくとも大丈夫じゃない?と。大事なのはそこからにじんでくる人間性だと思うんです。現実で仲のいい人に対して「何か事情があるんだな」と察することはあっても、具体的に何かまではわかる必要がない。でも、その「何かある」ところから見えてくる性格とか言葉で、好きになったり、嫌いになったりする。キャラクターの描き方もそれでよくて、むしろ場合によっては、そっちのほうが好いてもらえることもあるのかもしれない。強く意識していたわけじゃないですけど、なんとなく考え続けていたんです。
――……という話を聞いたあとで恐縮ですが、桃香がすばるをどこでバンドに誘ったのかが気になっていて。あれは裏設定があるんですか?
花田 あれは普通にネットで募集をかけて……というつもりでいました。第1話のあと、桃香が川崎に残る決心をしてから募集をかけて、仁菜が予備校に行っている間に何度か会ったりしていたんだろうな……くらいのニュアンスでしたね。お互いにバンド経験があるので、意外とツーカーで話もサッと通じたんじゃないかな。
揉め方、悩み方はアニメ作りの現場から想像した
――智とルパの設定はどのように生まれたのでしょう?
花田 ルパは「ベースはやっぱり凶暴じゃないといけないよね」みたいな話をして、ああいうキャラクターになりました。智ちゃんは「ピアノで優秀な成績を収めていた子がバンドをやる」というところからの発想でしたね。性格の部分でいうと、キーボードは「末っ子」にしたかったんです。
――「末っ子」ですか?
花田 トゲナシトゲアリの5人のかけ合いって、基本的に家族のイメージで考えているんですよ。桃香がお父さんで、ルパがお母さん、長女がすばるで、長男が仁菜。で、次女が智なんです。お父さんと長男がいつもちゃぶ台をひっくり返して喧嘩していて、残りの女子3人が「もう、しょうがないな〜」ってそれを見ている。お母さんが「やめなさい」と言うとやめるんだけど、長女が間に入ってもやめない、みたいな。そのバランスの中で、智ちゃんは「どうにかしなさいよ」と思いながら見ている、いちばん年下のちょっと冷めた女の子というイメージでした。
――キーボードとベースのコンビで、プロ志向で、ふたりで共同生活を送って家賃を抑えつつ、宅録の環境をしっかり作っている……というあたり、リアリティのある設定でした。あれはどうやって作品に盛り込んだのですか?
花田 宅録をしている人に取材しましたね。キーボード奏者が宅録をやっているというのはわかりやすい設定でしたし、そこは描きやすかったです。ディテールに関しては、先に脚本を書いて、疑問点が出てきたら監修で指摘してもらいました。第3話や第5話の、ベースがいない状態で3人で歌うときにどうするか、といったことも、いったん脚本を書いてから調整しています。
――実際にバンド活動をしている人からの反響も大きいので、そこにちゃんと響くリアリティの出し方も気になるところです。
花田 演奏の表現に関しては、酒井さんや平山さんをはじめ、設定関係の皆さんのディテールの拾い方がすごく効いているんだろうなと思います。精神性とか曲作りとかに関しては、取材で話を聞いているうちに「揉め方といい、悩み方といい、要するにアニメを作るのと大きな差はないな」という感じがしたんですよ(笑)。たぶん、こういうことがあるよね、きっとこういうことも起きるよね……と想像したことを書いて、それをぶつけていきました。それこそ、桃香が会心の曲を書いたけれど全然評判にならないとか、アニメでもよくある話だよなと思うわけですよ。思いを込めて「この伏線の張り方は完璧だ!」と思っていても、誰も気づいてくれない……みたいなことが山ほどある(笑)。
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