――最初に、あらためてこのシリーズのキャラクターデザインのコンセプトを聞かせてください。
坂本　雨宮さんは『SSSS.GRIDMAN』のとき、「ライトなアニメファンに受け入れられたい」と言っていましたよね。
雨宮　そういう層に向けた深夜アニメのようなデザインにしたかったのと、特撮が原作ではあるけれど特撮から離れたい、というのが最初にありました。特撮に寄せると子供番組的になりがちなので、もう少しハイエンド寄りにしたかったんです。ただ、ヒロインだけを売ろうとは思っていなかったので、ヒロインにここまで人気が出たのは「ありがたい」という感じです。
坂本　デザインの面では、トレードマークになるような髪型にはせず、服装もできるだけ実際の学生が着ていそうなリアルなものにすることを意識していました。

――版権イラストを描くときに、とくに意識していることはありますか？
坂本　アニメ本編は、僕が全部に手を入れるわけではないので、キャラの描き方に振れ幅が出ますけど、デザインした身として、どのキャラにも「こういう感じで描きたい」というイメージが自分の中にあって、イラストはそのイメージで描いています。あとは、六花を例に挙げると特徴のひとつに太ももがあるので、そういうアピール部分はちゃんとお客さんに満足してもらえるように意識しています。ただ、僕としては許容範囲のつもりで描いているのですが、「太すぎじゃない？」と言われることもあります。
中村　私は、発注でいただいた衣装とキャラ感のすり合わせを、すごく意識しています。
雨宮　発注（の衣装指定）に、突飛なものが多いからね。
中村　そうなんです。この衣装を着せなければいけないんだけど、キャラ感は崩したくない、という部分をうまく落とし込むことに、すごく気を使っています。中でも難しいのがアカネで、本編中のどの時点なのかによって表情が違ってくるから考えてしまいます。
坂本　僕はお着替えについて、本編の延長線上で着ているというより、「役者が仕事でコスチュームを着て楽しんでいる」くらいの印象で見てもらえたらうれしいと考えています。僕自身は、お着替え系のイラストはほとんど担当していないのですが、お着替えが嫌ということは全然なくて、いろいろな衣装をキャラに着せられるのはうれしいですよ。

――キャラによって、描きやすさに差はありますか？
中村　めちゃめちゃあります。私はずっと、六花が描きづらいです。ヘアアレンジをしすぎると六花ではなくなってしまうし、表情も意外と幅が狭いから、すごく難しいです。
坂本　六花は僕も描きづらいですね。六花は女の子グループでいるときは結構笑ったりもするキャラなんですが、裕太や内海の男の子グループにいるとクールに見えるので、本編ではすまし顔の印象になっていますよね。だから、アカネや夢芽はわりと笑顔にできるんですけど、六花は「どうやって笑わせるか」という意図を持って描かないと、うまくいかないですね。
――描きやすいキャラはどうでしょう。
中村　夢芽です。本編で振れ幅が大きかったキャラなので、イラストでも幅が出しやすいんだと思います。あと、夢芽は盛り耐性があるので、厚化粧をしても夢芽のままでいてくれるんです。六花は盛り耐性がないので……私の中での六花の至高はキャラ設定の立ち絵で、あそこからずれると六花でなくなってくる感覚なんですけど、厚化粧をすると、すぐに乖離してしまいます。
坂本　僕も『SSSS.DYNAZENON』が終わってからは夢芽がいちばん描きやすいです。ちょっと遊びやすくて。

――もともと単独で売るつもりはなかったというヒロインたちが、非常に高い人気を保ち続けている理由は何だと思いますか？
雨宮　いろいろなメーカー様に展開していただいて、いまだに新規の絵が出続けているのは、円谷プロさんのおかげだと思います。「番組は見たことがないけど、六花だけは知っている」みたいな人が生まれるのが理想だったので、僕としてはうれしいですね。
坂本　あと、版権イラストを描く仕事は基本的にトリガー社内で回しているんですけど、トリガーの若い子は上手い子が多いので、それも大きいと思います。現行作業のアニメが忙しい中で、合間を縫って受けてくれるんですが。過去の版権イラストを描いた子もステップアップしているので、今思えば贅沢な描き下ろしが多くなっていますね。
中村　私の周りのアニメーターさんにも、このシリーズの制作には参加していないけど版権を描きたい、という人がいます。そういう人が出てくるくらい、キャラがいい意味でひとり歩きしている感じはします。
雨宮　お付き合いしたことがない会社さんからも、発注をいただければ我々は受けていきたいので、発注お待ちしております！