『ハイガクラ』ならではの世界観
――『ハイガクラ』への出演にあたって、原作マンガを読んだ印象は?
石川 人間と神仙が共存する中華ファンタジー風の世界「仙界」を主軸に、我々が暮らす現代社会とを行き来しながら、逃げ出した神を探すという設定が斬新で面白く感じました。作品特有の常識や概念がいくつも登場しますが、それらがわかりやすく物語に組み込まれているので、作品世界に没入しやすく、夢中で読みふけってしまいました。主人公である一葉が抱えている謎と、その相棒である滇紅が抱えている秘密がストーリーの根幹に深く関わっていて、話数が進むごとに徐々にそれらが解明されていく。その過程で生まれるドラマや葛藤が丁寧に描かれていて、興味深く拝見しました。
――本作の世界観は非常に独特ですが、石川さんがとくに面白いと感じた設定は?
石川 仙界に住む人間が現代社会に行く際は、有害な空気に侵されないように「仙桃」という果実を食べる必要があるという設定です。また、水面を通してふたつの世界を行き来するという要素も含めて、簡単には行き来できない点が面白いなと思っていまして。これらの要素があるおかげで、ふたつの世界の間にどれだけの隔たりがあるか、そして仙界がどれほど特殊な場所なのかが伝わるので、練りこまれた素晴らしい設定だと感じました。一葉が仙界に帰るための水場を滇紅に探させたら、公衆トイレの個室へ連れて行かれてキレる一幕が原作で描かれていましたが、そうした移動の際に巻き起こるちょっとした騒動も面白いです。
あらゆる点で真逆な「赤滇紅」と「白滇紅」
――滇紅役のオーディションではどんなことを意識しましたか?
石川 滇紅は明るく無邪気な赤い髪の「赤滇紅」と、戦う際の姿である「白滇紅」というふたつの形態があり、それぞれに人格が大きく異なります。ただ、僕は声を変えてキャラクター性に違いをつける器用さを持ち合わせていないので、オーディションの際は芝居に幅をつけることでふたつの人格の違いが伝わるよう演じました。でも、その後、オーディションに合格して壱話(一話)のアフレコに臨んだ際に「声の高低でも『赤』と『白』のメリハリをつけていただけますか」というディレクションをいただきまして。正直、これは難しいなと思ったのですが、「赤」と「白」がワンカット内でシームレスに交代するシーンがあるので、人格が明確に変化したのを視聴者に伝えるためにも、声の高低に差をつける必要があることがわかりました。
――滇紅の人物像について、石川さんはどのようにとらえていますか?
石川 まず「赤滇紅」は、基本的には明るく天真爛漫で自由奔放なヤツですが、意外と冷静に物事を見ているところがあるんです。相棒である一葉の様子をそれとなく観察していたり、戦いの場では鋭敏な感覚で戦況を把握して立ち回るなど、さまざまな事柄を俯瞰して見ているところに意外性を感じました。なにかあるといつも一葉にどつかれていますが、それでいて一葉のことを事あるごとにおちょくったりもしていて。滇紅には自分たちが「いじり&いじられ」な関係であることを冷静にとらえている部分があるのだと僕は見ています。
――では「白滇紅」についてはどうですか?
石川 「白滇紅」は現時点では謎だらけで、ほとんどなにもわからない状態ですよね。肆話(四話)で封印されているところを一葉に解放されましたが、なぜ封じられていたのか、そして何者なのかは謎に包まれています。非常に尊大で一葉のことを試すような態度をとっていますが、自分の触れられたくない部分を探られるとすごく感情的になる。失った記憶を取り戻したいけれど、一葉に助力を求めるのはプライド的に許せない。そして、いろいろな思いを素直に伝えられないから余計に態度が尊大になっていく。むしろ尊大な態度で胸中を悟らせないようにしているのかな。あらゆる点で「赤滇紅」とは真逆で、まさしく対極に位置する存在だと思います。
――石川さんから見た一葉の印象は?
石川 生まれが特殊で過酷な人生を送っている一方で、弱者に対する寄り添い方も知っているから、ちょっと大人びて見えますよね。でも、意外と年相応な面もある印象です。よく見ていると、いろいろな出来事に対して取り乱したり動揺したりすることが多くて、自分自身のことがまだよく見えていない若者であることが見て取れるんです。また、滇紅に接するときはクールで強気ですが、育ての親である白豪(はくごう)に対しては甘えん坊な一面をのぞかせる。そんなところに一葉の人間臭さが表れているように思います。
- 石川界人
- いしかわかいと 10月13日生まれ。東京都出身。ステイラック所属。主な出演作は『ダンダダン』(ジジ/円城寺仁)、『ハイキュー!!』(影山飛雄)、『僕のヒーローアカデミア』(飯田天哉)など。