一葉と滇紅の奇妙なバディ感
――壱話(一話)と弐話(二話)で描かれた一葉と滇紅の関係性を見て、どんなバディだと感じましたか?
石川 物語の序盤だけを見ると「ここからこのふたりでいろいろな事件を解決して、関係性を深めていくんだろうな」という、バディもの特有のワクワク感がありますよね。でも、よくよく見てみると、一葉と滇紅それぞれが謎や秘密を抱えていて、お互いにすべてをわかり合える仲ではないことが見えてくるんです。壱話と弐話はあとになって振り返ると「そういえば、最初の頃のふたりはこんな感じだったな……」と感慨深く思えるエピソードになっていたと思います。
一葉が見せたさりげない優しさ
――壱話と弐話でとくに印象に残っているシーンはどこでしょうか?
石川 働き者の牛鬼(ぎゅうき)が大切にしていた主からの贈り物を、一葉が譲り受けるシーンです。牛鬼の主である武夷(ぶい)がひどいヤツで、牛鬼に贈ったものが現代社会で拾った「特選肩ロース 広告の品」と書かれたシールなんです。でも、字が読めない牛鬼は意味がわからず喜んで受け取ったんですよね。それを見た一葉は、シールと引き換えに大切な首飾り「斎」を1日だけ貸す提案をして、牛鬼に余計な悲しみを与えないよう事を収めました。一葉の飾らない優しさと気遣いが垣間見えましたし、一葉役の大塚(剛央)さんのお芝居から、努めて明るく振る舞っているけれど、ものすごくイヤなものを見てしまった一葉の思いがビシビシ伝わってきて、強く印象に残っています。一葉は滇紅にはいつもひどい扱いをするけれど、他の人に対してはこんな風にさりげない優しさを見せられるヤツなんですよね。
「赤滇紅」誕生の経緯
――一葉と滇紅の過去を描いた肆話(四話)では、ふたりの出会いが描かれました。
石川 壱話に登場した「白滇紅」の存在が、じつは本来の滇紅の姿だったことが肆話で明らかになりました。それでは「赤滇紅」はどうして誕生したのかというと、一葉の粗雑で乱暴な「歌」の副作用だったと。本来、歌士は歌で神を魅了して自分の力を認めさせるものなんですが、一葉の場合は「歌でぶん殴る」という表現そのままの強烈な歌いっぷりのせいで、「白滇紅」の様子がおかしくなってしまった、と。
――一葉の場合は「歌」というか「デスボイス」みたいな感じでしたからね。
石川 肆話は滇紅の身に隠された最初の謎に迫るエピソードではありましたが、まだまだいくつも謎が隠されています。この先、お話が進むにつれて少しずつ謎が明かされていくので、毎回欠かさずご覧いただきたいですね。
自らに課した使命に苦悩する一葉
――伍話(五話)以降の見どころを教えてください。
石川 肆話では一葉の過去と、彼がなぜ歌士という道を選ばざるを得なかったのかが描かれました。今後は、育ての親である白豪を救うという悲願と、そこにまつわるしがらみのせいで葛藤・苦悩する場面が増えていきます。また、一葉の幼なじみである西王母=白珠龍(はくしゅりん)を取り巻く仙界の複雑怪奇な政治模様も見えてきて、いよいよここから『ハイガクラ』の作品世界に関わる物語が加速度的に展開していきます。一葉の出生にまつわる秘密や、滇紅の失われた記憶にからむ謎が交錯するなかで、セリフのひとつひとつを吟味して見ていると「あのセリフは後のあの伏線につながっていたのか!」と、さまざまな事実が見えてくると思います。ぜひ細かいところまで気にしながら見ていただけるとうれしいです。そして、原作の新装版が発売されているので、原作とあわせてアニメをご覧になると、いろいろなことに気づかれると思います。原作とアニメの両方に触れていただけると、より深く『ハイガクラ』を楽しんでいただけるはずですよ。
- 石川界人
- いしかわかいと 10月13日生まれ。東京都出身。ステイラック所属。主な出演作は『ダンダダン』(ジジ/円城寺仁)、『ハイキュー!!』(影山飛雄)、『僕のヒーローアカデミア』(飯田天哉)など。