Febri TALK 2021.07.09 │ 12:00

広江礼威 マンガ家

③オタクをやっていてよかったと思える
『神秘の世界エルハザード』

自身の作風とは真逆ながら、オタクとして愛してやまないという『神秘の世界エルハザード』。インタビューの第3回は、偏愛に満ちたアニメ&キャラクター論を深掘り。

取材・文/岡本大介

僕の中のクソオタクな部分が、イフリータを愛してやまない

――『神秘の世界エルハザード』は95年のテレビ放送作品ですから、先に挙げた80年代の2本に比べると新しい作品ですね。
広江 これは多感な青春時代に出会って影響を受けた作品というよりは、ひとりのオタクとして好きな作品ですね。TVアニメは長年にわたってそこそこ見ていますし、数も多いので選ぶのはなかなか難しかったんですけど、『神秘の世界エルハザード』は僕の中ではすごくスタンダードな90年代アニメなんです。自分がオタクをやっていて良かったと思える代表格のような作品なので、今回選んでみました。

――「オタクで良かったと思える作品」ですか?
広江 そう。異世界ファンタジーなんだけど、やっていることは意外とミニマムで、どこか四畳半系というか、安心できるお話なところが個人的にすごくツボで。キャラクター全員に明確な特色や役割があるのもいいんです。

――たしかに。主人公たちは現代から異世界に飛ばされてきますが、冒険を重ねていってもキャラクター性や関係性がほとんど変わらないんですよね。
広江 そうなんです。全体を貫く安心感がまずあって、そのうえでキャラクターがいいんですよ。僕はとくにイフリータが大好きで、彼女はOVAだとクールな性格なんですけど、TVアニメだとかなりの天然ボケで、僕はそのTVアニメのポンコツな感じがたまらなく好きなんです。僕の中のクソオタクな部分が、あのイフリータを愛してやまないんですね(笑)。

――広江さんの作品にはなかなか登場しないタイプのキャラクターですよね。
広江 そうですね。自分でもこういうキャラが描けないかなって試してみることもあるんですが、僕には描けないんですね。ずっとジレンマなんですけど、そこは純粋にオタク的な目線で憧れています。

――イフリータの他にも好きなキャラクターはいますか?
広江 これは僕の性癖ですけど、ディーバも好きです。尊大で偉そうなのに、なんだかんだ言ってイフリータのおバカなノリに付き合って一緒にポンコツになっていくところとか、最高ですね。

――好きな2キャラがどちらも敵サイドですね。敵なのに愛せてしまうところもこの作品の魅力ですね。
広江 そうなんです。なにしろ全キャラクター中でダントツに卑劣なのが、一緒に異世界に飛ばされた主人公の同級生(陣内克彦)ですからね(笑)。こいつは本当に最低なヤツなんですけど、それもまた劇中ではいい味を出している。僕は敵と味方がだんだんとグダグダになっていく展開が大好物なので、こういう図式もたまらないです。

こういう空気感や温度感の

作品って、ひとりのオタクとして

すごく幸せな気持ちになれる

――今でも見直すことはありますか?
広江 じつは今回久しぶりに見直してみたんですけど、テンポがゆったりとしていて、まずそれに驚きました。イフリータの登場まで13話かかっているんですけど、今やるとしたら3話か4話で出さないと、お客さんが離れちゃいますよね。90年代アニメって僕が思っていた以上に流れがゆるかったんです。でも、そういうテンポだったりギャグのノリも含めて、僕は90年代アニメが好きですね。

――ちなみに、今でもTVアニメはよく見ていますか?
広江 ちょこちょこは見ています。『Re:CREATORS』の脚本をやっていたときは勉強も兼ねてかなりの量を見ていたんですが、そこからいったん落ち着いた感じではあります。

――やっぱりハードでシリアスな作品が主体ですか?
広江 いえいえ、そんなことはないですね。このあいだまで『放課後ていぼう日誌』とか見ていましたから(笑)。

――ああ、今でも立派なアニメオタクなんですね。
広江 そうですね。『神秘の世界エルハザード』のような空気感や温度感の作品って、ひとりのオタクとしてすごく幸せな気持ちになれるんですよ。自分ではなかなかこういうものは作れないんですけど、いつかこういうものも作れたらと、そういう気持ちにもさせてくれるんです。

――広江先生はその作風から冒険小説や実写映画がお好きなイメージがありますが、アニメも創作活動の血肉になっているんですね。
広江 やっぱり僕は根本的にオタクですからね。どんな作品を作っていても、頭のどこかではマンガやアニメありきでものを考えているところがあるので、そこは切っても切り離せないと思います。endmark

KATARIBE Profile

広江礼威

広江礼威

マンガ家

ひろえれい 1972年生まれ、神奈川県出身。ゲーム会社に勤務しつつ同人活動を行い、『翡翠峡奇譚』で商業誌デビュー。代表作は『BLACK LAGOON』(小学館 月刊サンデーGX連載中)。TVアニメ『Re:CREATORS』では原作・キャラクター原案を担当するなど、幅広く活躍中。2019年よりゲッサン(小学館)にて『341戦闘団』を連載中。
『BLACK LAGOON』最新第12集、イラスト集『Onslaught BLACK LAGOON Illustrations』(通常版&限定版)は、2021年8月19日頃、発売! 『BLACK LAGOON 20周年記念展』は2021年7月16日から8月1日まで有楽町マルイにて開催!詳細は特設サイト『ロアナプラ観光協会』に。

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