TOPICS 2021.11.16 │ 12:00

オンエアから5年――
名作『ジョーカー・ゲーム』を監督・野村和也と振り返る②

世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋、帝国陸軍の結城中佐によって、スパイ養成を目的とする“D機関”が秘密裏に設立された――。放送から5周年を迎えた『ジョーカー・ゲーム』。監督・野村和也とともに名作を振り返るインタビューの後編は、驚きの背景美術秘話からスタート。キャラクターと一緒に駆け抜けた、激動の昭和初期を追憶しよう。

取材・文/高野麻衣 

いい声の男性に惚れちゃいそうになる⁉

――ああ、だから監督の作品は「体感5分」なんですね、きっと。画面の情報が濃密だから。背景、もう一度見直したくなりました。ところで監督は「僕の人生、男だらけです」とおっしゃっていましたが(笑)、それは如何なることなのか伺ってもいいですか?
野村 もう、運命としか思えないんです。僕は男兄弟だし、親友も男兄弟だし、近所には仲のいい男の子しかいなかった。中学での運動部や高校での生活も、ほぼ男子しかいなくて。上京しても男子寮だったし、ホントにつるむのが男子しかいなくて(笑)。I.Gに勤め始めて、ようやく同世代の話せる女性がチラホラ増えたなっていう人生です。

――そして、男性の声も好きに?
野村 いい声の男性って、なんか惚れちゃいそうになるんですよね(笑)。過去にふたりほど、自分よりひと回り上の業界の先輩に、すごくいい声の方がいらっしゃって。おひとりは最初に入ったSTUDIO 4℃っていうアニメ制作会社の監督だった森本晃司さんなんですけど、カラオケの歌も普段の声もすごくまろやかで、いい声なんです。もうひとりは監督の梅津泰臣さん。自分が当時関わっていたタイトルでご一緒させていただいたときは、打ち合わせをしているだけで、声がよすぎて惚れそうになりました(笑)。お人柄のよさは大前提として、いい声の男性はすごく印象に残るんです。

50歳までにSFをやりたい

――今後、監督の愛する「男たちの世界」で、こんな挑戦をしてみたいというアイデアはありますか?
野村 できれば50歳になるまでにSFをやりたいですね。雰囲気としては、映画『第9地区』のようなSFドラマです。『第9地区』は、武器や宇宙船のデザインはもちろん好きなのですが、人間である主人公とエイリアン――ふたりの男の関係性がストーリーの軸になっているところがいい。あとは『インターステラー』とか『コンタクト』とか。『月に囚われた男』っていう作品も好きです。月にある施設にひとりだけ残されて仕事をしている男性と、AIとのコミュニケーションを描いた物語です。SFというと、宇宙空間で戦ったり冒険したりというイメージが根強いと思います。もちろん、そういうのも大好きなのですが、僕はどちらかっていうと、そこで展開される静かな人間模様が好きで。自分がやるなら、そういう人間ドラマに重きを置くようなものになるのかな、と思います。

――それこそ二人劇というか、ものすごく監督のテイストに合いますね。
野村 でも、そういう話をすると「ああ、野村さん好きそうですよね」「また地味なヤツを」みたいに言われるんですよ(笑)。まあ、いつかやれればいいな、と思います。

――『ジョーカー・ゲーム』と同時代の物語も、また見てみたいです。
野村 たくさん調べものをしなきゃいけないので大変なんですけれども、調べもの自体は好きなんですよ。白土さんでも見つけられなかったものを見つけてやるっていう、謎の競争心で(笑)。

『ジョーカー・ゲーム』は自分の人生の一部

――素晴らしい記憶をたくさん伺ってきましたが、5年経った今、『ジョーカー・ゲーム』は監督にとってどんな存在ですか?
野村 間違いなく、自分の代表作のひとつです。新しいアニメーション作る上でも、ベースになっているところがあって。だから、自分の身体の一部だと感じることもあります。当時は苦労もいっぱいありましたが、作っている間、自分もその時代に生きているつもりでいましたから、キャラクターと一緒にその時代を駆け抜けたっていう記憶があるんですよ。だからこそ、身近に感じる。キャラクターもだし、その時代もだし。そうやって自分の人生の一部になっているんだろうな、と思います。

――そう伺って、作品への愛を噛みしめている方は多いと思います。
野村 こちらこそ、『ジョーカー・ゲーム』を好きになってくれてありがとうございます。ネット配信で過去の作品が見やすくなって、どのタイミングで見るかは自由になってきています。作品に触れた瞬間が新しい出会いなので、ちょっとでも楽しんだり、また見直したりしていただけたら、本当にありがたく思います。

――そうですね。また5年後に10周年記念インタビューをしましょう。
野村 ははは、そんなことになれば最高ですね。でも、さすがに忘れてくれてもいいんですよ。誰も恨みはしませんから(笑)。endmark

野村和也
のむらかずや 1978年生まれ、長野県出身。アニメ監督、演出家。STUDIO 4℃を経て、フリー。『戦国BASARA弐』で監督デビュー。主な監督作品に『ROBOTICS;NOTES』『攻殻機動隊 新劇場版』『風が強く吹いている』『憂国のモリアーティ』など。
イベント情報

『ジョーカー・ゲーム展』

会期 2021年11月3日(水・祝)~11月28日(日)
開場時間 11:00~20:30 
     ※最終入場は閉場の30分前まで。
     ※最終日11月28日は17時閉場。
開催会場 有楽町マルイ8F イベントスペース
     (東京都千代田区有楽町2-7-1)
主催 ムービック
入場料 当日入場券 1,800円(税込)
    記念コイン引換券1,000円(税込)
    ※当日券は会場のみでの販売となります。
    ※前売券で予定数を達した場合、
     当日券の販売はございません。

お問い合わせ 有楽町マルイ 03-3212-0101
     (受付時間11:00~19:00)
     ※運営状況や当日券の販売状況については
      公式Twitterをご確認ください。

  • ©柳広司・KADOKAWA/JOKER GAME ANIMATION PROJECT