TOPICS 2021.11.16 │ 12:00

オンエアから5年――
名作『ジョーカー・ゲーム』を監督・野村和也と振り返る②

世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋、帝国陸軍の結城中佐によって、スパイ養成を目的とする“D機関”が秘密裏に設立された――。放送から5周年を迎えた『ジョーカー・ゲーム』。監督・野村和也とともに名作を振り返るインタビューの後編は、驚きの背景美術秘話からスタート。キャラクターと一緒に駆け抜けた、激動の昭和初期を追憶しよう。

取材・文/高野麻衣 

当時の若者たちの生きざまを鮮やかに描いてあげたかった

――野村監督といえば、時代考証や背景美術へのこだわりでも知られています。2020年に『憂国のモリアーティ』がスタートしたときも、周囲のシャーロキアンたちが「この背景は△△ですごく厳密だ」などと語り合っているのを散見しました。ヴィクトリア朝のロンドンと同様、昭和初期、つまり1930年代のアール・デコ華やかなりし東京も、じつはファンが多い時代ですよね。
野村 そうですね。ただ、資料探しには本当に苦労しました。チーフリサーチャーの白土さんからも言われたんですけど、この時代って、大正浪漫といわゆる昭和の中間にある空白期。とくにカラーの資料はほぼ残っていないんです。当時モノクロで撮られた写真にあとから着彩したものを参考にしたんですけど、建物の壁がパステルピンクとかイエローだったりして、華やかなことに驚きました。

――日本国内でですか?
野村 はい、国内で。だから、ちょっと抑え目にはしましたけど、大東亜文化協会のまわりの建物もピンクやイエローにしています。そういうのが普通にあった、洗練された時代なんですよ。もちろん、汚いところもいっぱいありますが、そんな美しい色彩の中で生きていた若者たちは、現代の若者たちと同じようにきれいな青空を見て、きれいな街並みに胸を躍らせたはずだ、と。その生きざまを、ちゃんと色も含めて鮮やかに描いてあげようっていうのは、かなりこだわった部分ですね。

――愛ですね。しかも『ジョーカー・ゲーム』の場合、同時代のマルセイユ、上海、ロンドン、満州、ベルリン……全部描き分けですよね。
野村 はい、全部。スタッフにはかなりの苦労をかけてしまいました。普通は設定って、作ったらなるべく使い回すというか、ベースとなる舞台があって、話数によっては新しい舞台が出てくるくらい。それが『ジョーカー・ゲーム』はほぼ毎回違う舞台ですからね。都度都度、細かいところまで調べないといけない。新聞紙もよく登場しますが、あれも当時の新聞をわざわざ白土さんに調べてもらって、その形式に則って書いてもらったんです。当時は紙面に広告が多かったので、ありそうな広告をわざわざ作って、街中の看板もひとつひとつデザインを起こして作ってもらって……。とくに第6話のあじあ号はめちゃくちゃ苦労しました。鉄道ファンは多いので、推計モデルや模型を作っている方はいると思うのですが、内装の情報がとにかくなかった。トイレなんて、まったく情報がありませんでしたから。残っている動画や写真を必死で集めて、色も含めて徹底的に調べてもらい、当時最先端の情報で作り上げました。

舞台がどこでも作る以上は徹底的に作り上げる

――トイレ、重要なポイントですものね。これ、読んだ方が絶対また見て確認したくなるディテールです。
野村 そもそも自分は、歴史は詳しくないんですよ。全然詳しくないくせに、歴史ものばっかりやっているんです。最初の監督作が『戦国BASARA弐』で、僕が持っている戦国時代の知識は『戦国BASARA』ですから(笑)。

――だいぶ超越していますね(笑)。
野村 そのわりに昭和初期とか19世紀ロンドンとか歴史ものばかりやることになり、歴史好きと思われがちなんですけど、全然知らないんです。ただ、自分が知らないといっても、お客さんは詳しい方が多い。そういう方々がメイン層だと思っているので、違和感がないように徹底的に作り込まないと、作った上でちゃんとお芝居をさせないと世界観に没入してもらえないと思ったんです。作る以上は徹底的に作り上げる。それはもう、舞台がロンドンだろうが昭和初期の日本だろうが関係がない。だから、結果的に自分の作るタイトルって背景の密度がどうしても上がってしまう。美術さんには本当に苦労をかけるんですよ。

――やっぱり、信頼しているスタッフを集めるのですか?
野村 そうですね。といっても、メインとしては2社ぐらいしか関わったことはないんですけど。『ジョーカー・ゲーム』と『憂国のモリアーティ』をお願いした美峰さんと、『風が強く吹いている』のスタジオ風雅さん。『風が強く吹いている』は現代の話ですが、箱根駅伝を目指す話だから、実在の街の中を走るでしょう?

――たしかに。現代だからといって気が抜けない!
野村 そうなんですよ。実際にある街だし、箱根駅伝なんて詳しい人はめちゃくちゃ多いですし、調べれば簡単にわかってしまう。アニメだからって、そこで噓はつけない性格なんです。

イベント情報

『ジョーカー・ゲーム展』開催中

会期 2021年11月3日(水・祝)~11月28日(日)
開場時間 11:00~20:30 
     ※最終入場は閉場の30分前まで。
     ※最終日11月28日は17時閉場。
開催会場 有楽町マルイ8F イベントスペース
     (東京都千代田区有楽町2-7-1)
主催 ムービック
入場料 当日入場券 1,800円(税込)
    記念コイン引換券1,000円(税込)
    ※当日券は会場のみでの販売となります。
    ※前売券で予定数を達した場合、
     当日券の販売はございません。

お問い合わせ 有楽町マルイ 03-3212-0101
     (受付時間11:00~19:00)
     ※運営状況や当日券の販売状況については
      公式Twitterをご確認ください。

  • ©柳広司・KADOKAWA/JOKER GAME ANIMATION PROJECT