TOPICS 2021.10.14 │ 12:00

個人制作からから商業作品のフィールドへ
気鋭のアニメーション作家・谷耀介監督インタビュー②

川崎競馬場作PRアニメーションを手がけた気鋭のアニメーション作家・谷耀介監督。東京藝術大学大学院在学中から活動を本格化し、国内外の賞を数多く受賞するなど、新世代作家として業界注目の存在だ。アニメーション作家としての特徴、そして今後の活動について聞いた。

取材・文/日詰明嘉

この作品は、マス向けの表現としての第一歩

――『二人の“馬の日”』は、ライティングや色彩設計が特徴的でした。これはどのように考えていきましたか?
 自分にとって絵を描く際に色や光は根源的な部分なので、絵として際立つように考えて決めています。印象派や表現主義のようなテイストが好きなので、色の衝突を空間に落とし込むことは常に意識していますね。キャラクターに関しては、シンプルさを洗練させることを突き詰めつつ、リムライト(立体感を強調するための光)を効果的に使ったりして情報量をどう増やしていけるかを試してみました。色を見たり、作中の色を構築していくことが本当に好きなんです。今作でもコンテのあとに背景のカラースクリプト(シーンごとの配色やライティングをまとめたもの)をすぐに起こしました。

『二人の“馬の日”』のカラースクリプト。

――今作の制作ツールおよび制作期間について教えてください。
 作画はいつもTVPaintを使っています。背景はAdobe Photoshop、編集はAdobe Premiareを使いました。いつも使用しているものばかりです。コンテまでは紙に鉛筆で書いて、それ以降はデジタルで作業しました。中割りと色を塗る作業は伊藤圭吾さんと鵜飼ゆめさんに手伝ってもらっています。制作期間は2カ月ほどで、30秒の作品としては自分の中では標準的な長さでした。

――クリエイターとしてやってみたかったことは詰み込めましたか?
 そうですね。最初のカットでの、手描きの地面と奥にある建物を3D的に見せるのは一度やってみたかった演出でした。芝生は背景動画で、セル塗りではなくPhotoshopで油絵っぽく仕上げています。後ろのビルやビジョンは素材を別に描いて、After Effectsの3Dカメラを使って調整しつつ、描いた芝生に合うように動かしています。昔のマルチプレーン・カメラの引きのように疑似3Dで見せていきました。

――作品を作り終えての感想を聞かせてください。
 背景をたくさん描くことが、そこまで苦ではないことの発見がありましたね。アーティスティックな作品の背景はタッチで押し切るような傾向がありますが、描き込んで情報量を増やしていくことの楽しさを味わえた気がしています。作品としてはマス向けの表現の第一歩となるものを作れたかな、と思います。

作品情報

川崎競馬PRアニメーション 『二人の“馬の日”』
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