TOPICS 2022.03.31 │ 12:00

日本のアニメファンに衝撃を与えた『時光代理人 -LINK CLICK-』黒﨑静佳プロデューサーインタビュー②

制作元である中国の動画配信プラットフォームbilibiliでは、すでに第2期の制作も決定しているオリジナルアニメ『時光代理人 -LINK CLICK-』。第2期日本版の放送を望む声が続々と上がっている本作について、ローカライズを担当した黒﨑静佳プロデューサーのインタビュー後半をお届けする。

取材・文/犬地リコ

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

視聴者を引き込む「キャラクターの厚みの作り方」

――全編を通じての感想やキャラクターの印象について、あらためて話を聞かせてください。
黒﨑 私の中で印象がいちばん変わったのはやっぱりトキ/程小時(チョン・シャオシー)(以下、トキ)ですね。最初は猪突猛進で、素直であるがゆえにトラブルも起こしやすく、リンクの関係性もあってヒカル/陸光(ルー・グアン)(以下、ヒカル)に手綱を握られている印象でした。それが第5話以降さまざまな経験を経て、自分で考えて能動的に動くようになり、終盤ではトキが作戦を立ててヒカルを動かすまでに変化していて。そこに至るまでの脚本の組み立て方がすごく上手です。序盤はオムニバス形式でトキたちとは無関係な他人の事件を何本かやって、第5話ではトキ自身とリンクする事件を経験し、後半では友達が関係する事件が起こって親身にならざるを得ないシチュエーションが発生する。前半では視聴者に我慢を強いる構成だと思うんですけど、キャラクターの変化を描くにあたってはすごく有効なやり方だし、シームレスに感情移入できるようになっていたと思います。

――第1話からの一連のお話すべてが、クライマックスへとつながった感じでした。
黒﨑 キャラクターの厚みを作っていくのが本当に上手ですよね。視聴者も最終話に至るまでのトキの経験を見てきたからこそ、エマに真摯に向き合う姿に深く感情移入できたんだと思います。いろいろな人の人生を見てきたから出てくる言葉、という感じで。

サスペンスとしてカッコいいストーリー構成

――一方、相棒であるヒカルは最後まで謎の多いままでしたね。
黒﨑 私はもしかしたらヒカルが裏切るか、あるいは過去改変した結果、現在存在しているキャラクターだったらどうしようかと思っていたんですけど(笑)。最後の最後でまさかのリン/喬苓(チャオ・リン)がジョーカーになってしまったので、お話的にはますます読めなくなりましたね。

――リンは序盤ではお話を回すためのサブキャラクターのような印象でしたが、話数が進むにつれて黒﨑さんの言う「キャラクターの厚み」が増していった感じがありました。
黒﨑 脚本とキャラクターの作り方がよくできているんですよ。少しずつ人間味を増していくことで視聴者の解像度も上がるし、序盤でさり気なく登場していたキャラクターが後半では事件に絡む重要なキャラクターとしてカードが切られるというのは、サスペンスとしてもカッコよかったです。

自然な掛け合いに垣間見えたプロの業

――終盤でキーキャラクターとなったエマと劉旻(リウ・ミン)について、エマ役を小清水亜美さん、劉旻役を河西健吾さんが演じていますが、キャスティングの経緯を教えてください。
黒﨑 ゲストキャラクターは音響監督さんが候補を選んでくださったのですが、どのキャラクターも声がすごくマッチしていたのでスムーズに決まりました。劉旻については「ちょっと印象が残る方がいいです」とお話ししたところ、河西さんをご提案いただいて、無邪気さと邪悪さが混在している劉旻の声を演じていただくのにピッタリな方だなと。

――エマは普段の気弱そうな声とトキがダイブしている際の声とでかなり演技に幅がありましたが、収録の際にスタッフやキャスト間で打ち合わせはしたのでしょうか?
黒﨑 感染対策で一度に同じブースで収録できる人数に限りがあるので、小清水さんとトキ役の豊永利行さんはじつは一緒には録っていないんです。録音の順番もキャストさんのスケジュール次第で豊永さんが先だったり小清水さんが先だったりしたのですが、おふたりともベテランなのでうまい具合に台本の意図を汲んで、相手がいない状態でもすごく上手に演じてくださいました。エマとトキのシーン以外でもバラバラに収録しているシーンはたくさんあるのですが、出来上がった映像を見ると掛け合いに全然違和感がなく、キャストの皆さんのプロの仕事を見せていただきました。

ローカライズで大事にしたのは、視聴者の感情

――劉旻と「赤い目の人物(劉旻やリンを操っていた謎の存在)」の演じ分けについてもキャストさん主導で台本からイメージを起こした感じでしょうか?
黒﨑 そうですね。でも「赤い目の人物」については明確に誰とも言われていないので、この先のお話で全然違う人物像が明らかになるかもしれないというのがあって……。

――翻訳者さんが悩んでいたのと同じ問題が生じてくると。
黒﨑 劉旻の演技に限らず、我々のやったこととしては「視聴者として最初に見たときの第一印象を再現した」というのがいちばん近いかもしれません。我々のお仕事はローカライズなので、あくまでも完成した作品をお預かりしているだけなんです。だから当然、制作陣の真意まではわからない。けれど作品を見たときに視聴者が受け取る感情というのは国をまたいでも変わらないはずなので、自分が泣いた場面では泣けるお芝居や演出を入れるし、混乱したところでは日本語でも混乱を招くような翻訳やお芝居をしてもらうという。

――普通の日本制作のアニメとはプロデュースの方向性も根本から違うんですね。
黒﨑 視聴者感情を指針にするというのはあまりないので、すごく面白いですね。作り手としての知識や考え方と、受け手の視聴者としての感情の両面から見て作っていくというのは、こういった作品じゃないとできないことだと思いますし、単純に演出やシナリオの使い方という面でも新鮮なポイントが多くて勉強になりました。

――最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
黒﨑 まずは1クールお付き合いいただき、ありがとうございました。普段日本で放送されているような作品とは見せ方も作り方も違っていたかと思いますが、単純に物語として楽しんでいただけていたらなによりです。最後までご覧になった方は絶対に続きが気になっているかと思いますが、皆さんのご支持があれば続きも見られるかもしれませんので、ぜひ楽しみにしていていただけるとうれしいです! 今は情報伝達の速度が早く、海外の配信作品もすぐに見られる時代ですので、日本国内に限らず世界中の作品に興味を持っていただけたら、もっともっと面白い体験ができるんじゃないかと思います。endmark

黒﨑静佳
くろさきしずか アニプレックス所属。『Fate』関連作品や『活撃 刀剣乱舞』など女性人気の高い作品のプロデュースの他、中国で作られた作品のローカライズも数多く手がける。
商品情報

Blu-ray&DVD
時光代理人 -LINK CLICK- 1
【完全生産限定版】
好評発売中
(vol.2:4月27日、vol.3:5月25日発売)

Blu-ray:¥13,200(税込) ANZX-15151-2
DVD:¥11,000(税込) ANZB-15151-2

■収録内容

本編ディスク2枚組
収録話:1~4話(ノーカットオリジナル版)
収録音声:日本語吹替音声・中国語音声
※オープニング・エンディングは日本語吹替版の内容です。

■完全生産限定版特典
◆三方背BOX
◆特製ブックレット
◆特典映像
・ノンクレジットオープニング・エンディング映像
・オープニングアイキャッチ
・TV版冒頭映像
・各話予告映像
※仕様・特典は変更となる可能性がございます。

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