――かのん、千砂都を担当するうえで心がけていることや、印象が変わっていった部分はありますか？
伊達　かのんちゃんは「引っ込み思案な子なのかな？」と思っていて、私もそういうタイプなので「似てるかも」と感じていたのですが、TVアニメのストーリーが進むにつれて、自分以外の誰かために必死になれる、行動力のある子だとわかってきました。私にはできないことなので「なんで彼女は今動いたんだろう？」とわからなくなることがあって。でも、自分と同じじゃないからこそ、格好いい子だなとか、見習わなきゃいけないと思ったり、「私もかのんちゃんみたいになりたい」という感情が芽生えてきました。……感情表現がとても豊かな子なので、そういうところは「似てるなぁ」と思いながら全力で声を上げています（笑）。

――第1話の冒頭、家でやさぐれているシーンは衝撃でした。
岬　誰!?と思いました、私も。
伊達　家にいる私とめちゃくちゃそっくりなんです。「私かな？」と思いましたもん。
岬　……やっぱり本物のかのんちゃんなの？
伊達　伊達です（笑）。
岬　（笑）。私は「いかに裏表なく話せるか」を大事にしています。ちぃちゃんは裏表のない性格で、周りの子にもにごした言い方をしないので、どれだけ言葉をまっすぐに伝えられるかを意識しています。私にとってちぃちゃんは常に横にいるイメージで、どうやって彼女の言葉を代弁してあげられるかを考えているのですが、私自身は話し相手の顔色をうかがいすぎて言葉をにごしたり、ごまかしてしまったりすることがあるので、最初はすごく難しかったです。

――そうした話を、他のキャストとすることはありますか？
岬　なぎちゃんはけっこう悩んでいた印象があります。キャストが決まって、みんな最初に自己紹介ボイスを録っていたのですが、TVアニメ前半の（葉月）恋ちゃんはその印象とはガラッっと違う、かたくなで少しきつめな性格だったので「どれが本当の恋ちゃんなんだろう？」と相談されたのをおぼえています。いちばん苦労していたんじゃないかな。
伊達　（TVアニメより先に発表された）「始まりは君の空」のアニメーションMVでは笑っているのに……いつになったら笑顔の恋ちゃんが見られるのかなぁと思っていました。
岬　第8話でやっと笑ってくれたねぇ、よかった。

――かのんと千砂都のやりとりで印象に残っているシーンはありますか？
伊達　私は第11話で、ちぃちゃんがかのんちゃんのことを思って距離を置くシーンが印象に残りました。あえてかのんちゃんがつらい思いをする方向に突き放すんです。
岬　もはや親鳥と雛みたいだったよね。
伊達　私はお話を知っているから「かのんちゃんのために」というちぃちゃんの思いを理解しているけど、かのんちゃん自身はそれがわからないんですよね。それが私にとってもつらくて。他の4人で話し合う場面で、収録では私だけ後ろでみんなが話すのを見ていたんですけど、「私、ここからどうしよう……」と思っちゃって。それを乗り越えたあと、誰よりも早く駆け寄ってきてくれたちぃちゃんとかのんちゃんが抱き合って笑うシーンも「どういう気持ちで笑ったらいいんだろう」ってすごく悩みました。なこちゃんと隣り合って収録したのですが、終えたあとの脱力感は今でもはっきりとおぼえています。でも、ふたりだけで笑うって、いいなって。私たちの絆が深まった瞬間だったと思います。

岬　私は第６話の収録の日に「今日、乗り切れるかなぁ」と思ってしまうほど、お話を読んだだけで胸がいっぱいで。「かのんちゃんみたいに大好きで夢中になるものを私も持てるようにがんばる！」とか、砂場でひとり○（丸）を描いて遊んでいたような女の子が言うのにどれだけの勇気が必要だったんだろうと想像しながら、力を込めました。あとは、ダンス大会の会場に駆けつけてくれたかのんちゃんに背中を押されたあとに「待っててね」って言うんですよね。「ありがとう」でも「がんばってくるね」でもなくて「待っててね」って。これは決意の強さと、相手への信頼がないと出てこない言葉ですよね。だからこそ、第11話でちぃちゃんだけが「かのんちゃん、このままじゃダメだ」と気づけたんだと思います。
伊達　ちぃちゃんが第3話の言葉を思い出させてくれるんですよ。「『歌える、ひとりじゃないから』、それじゃダメなんだよ」って。自分に向けられた言葉じゃないのに、おぼえているんですよね。
岬　本当にちょっとした言葉や変化を見逃さないよね。

――細かな伏線がいくつも張られているシリーズですが、第３話といえば、かのんと（唐）可可のライブを見守る千砂都の表情が印象的でした。
伊達・岬　わー!!
伊達　みんな笑顔で応援していたのに、ひとりだけ含みがありすぎる表情なんですよね。
岬　うれしさなのか安堵なのか、それとも約束を交わした思い出の場所でかのんちゃんの隣にいるのが自分ではない悔しさなのか……あの表情の意味はいまだにずっと考えています。歌終わりじゃなくて、ふたりの堂々としたステージの合間にちぃちゃんの表情が入るんです。あれはオンエアを見ていて「やられた！」と思いました。