これが最初で最後かもしれないから、楽しんでやってみようと
――アニメのキャラクターデザインは初めてということですが、どのような経緯で参加したのですか?
いみぎ ある年の冬コミ(冬のコミックマーケット)で監督の足立(慎吾)さんと偶然お会いしたのがきっかけです。まさか自分がアニメーションのキャラクターデザインをするなんて想像もしていなかったので、お誘いをいただいたときは本当に驚きました。
――足立さんのことはもともと知っていたのですか?
いみぎ もちろんです。『WORKING!!』や『ソードアート・オンライン』も大好きで、足立さんの描く「シンプルだけどかわいい」絵のイメージには、ずっと昔から影響を受けていました。
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――足立さんは、いみぎさんの絵について「自分もこんな風に描けたら」と思っていたそうです。お互いに影響を受け合っていたんですね。
いみぎ そうなんですか? それはめっちゃうれしいですし、光栄です。たしかに足立さんと本編の映像の話をすると、よくお気に入りのカットが共通していたりするんですよ。おそらく好きな方向性やこだわりが似ているのかなと思います。
――初めてのキャラクターデザインということで、不安はありませんでしたか?
いみぎ もちろんありました。最初にお話をうかがった際は、てっきりキャラクター原案だけかと思っていたので、「キャラクターデザインもお願いしたい」と頼まれたときは思わず「原案だけじゃダメですか?」と返しちゃいました(笑)。それまで三面図すらも描いたことがなかったので、無理だと思ったんです。それでも足立さんに「サポートしますから」とおっしゃっていただいたことで、むしろいい機会だと思い、お引き受けすることにしました。アニメのキャラクターデザインのお仕事なんてこれが最初で最後かもしれないから、楽しんでやってみようと。
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相棒がシンプルな分、千束は特徴をはっきりと
――初期の世界観は今よりハードでシリアスだったと聞いていますが、キャラクターデザインの方向性は当初から変わっていったのでしょうか?
いみぎ 最初にざっくりとしたラフを描いていたときは、今より頭身も少し高く、目も小さかったと思います。足立さんとやり取りをしていくなかで、世界観の変更に合わせて現在のタッチにだんだんと移っていきました。
――足立さんからはどんなオーダーがありましたか?
いみぎ ほとんどなかったと思います。デザインするうえで決まっていたのは、たきなは黒髪ロング、ミカはアフリカ系という2点くらいですね。
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――まず千束(ちさと)のデザインから聞かせてください。髪色や髪型が特徴的ですね。
いみぎ 当初のイメージでは、髪色はほとんど白で描いていました。そこに青みがかった影が入っていたんですが、それは王道なのでちょっと変えようと。それで黄色系の影が入った白色になりました。髪型に関しても、相棒であるたきながシンプルなぶん、千束にははっきりと特徴を出したいなと思い、リボンと巻き髪を付けました。リコリスたちは基本的に制服で描かれるので、シルエットだけではっきりと誰かわかるようにしたかったという狙いもありますね。
――身体つきもしっかりしていますよね。
いみぎ たきなを軽々と持ち上げていますからね。僕がとくに好きなのは第6話のアクションシーンで、真島の撃った弾を避ける千束の動きなんです。本当に最小限の動きだけで避けていて、それだけで千束の強さが伝わってきますよね。その後の真島の「まじかよ!?」という表情も合わせて好きなシーンですね。
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たきなのツインテールは千束が作ってあげている
――続いてはたきなです。たきなは最初から「黒髪ロング」で決まっていたんですよね。
いみぎ そうです。たきなは性格的にもストレートで飾り気がないので、デザイン的にも極力シンプルにしようと思い、あえて王道な感じを出すように意識しています。ですので、とくに悩むこともなく、千束よりも早めに完成しました。
――喫茶リコリコの制服ではツインテールになっているのが特徴ですね。
いみぎ 元のデザインがシンプルなだけに、せめて髪型では遊べるようにと思っていました。とはいえ、たきなは自分で髪型をアレンジする性格ではないと思うので、僕の中では千束がツインテールを作ってあげているという設定があります。
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――たきなは劇中でどんどんと変化していくキャラクターですよね。
いみぎ 変わっていくたきなを見るのはとても楽しいですね。第3話で千束に持ち上げられてクルクルと回るシーンも印象的ですし、その後の帰りの電車でのやりとりもかわいかったなと思います。
――物語も終盤へ入っていきますが、いみぎむるさんが個人的に注目しているポイントはどこですか?
いみぎ 千束とたきなが今後どうなっていくのかがやはり気がかりで、そこが作品の核ですよね。千束がたきなに絡む感じや、ふたりの仲のいい雰囲気というのが多くの視聴者さんに受け入れられて、僕自身、反響の大きさにびっくりしている状況なんですが、ぜひ最後までふたりを見守っていただけるとうれしいです。
- いみぎむる
- 兵庫県出身。マンガ家、イラストレーター。2008年に『キミに幸アレ!!』でマンガ家デビュー。他のマンガ作品に『サイトーくんは超能力者らしい』『この美術部には問題がある!』。小説『負けヒロインが多すぎる!』やゲーム『Fate/Grand Order』などのイラストも手がけている。
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