いつの間にか周囲に認められているのがマッシュの面白さ
――『マッシュル-MASHLE-』は原作の連載開始当初から大好きな作品だったとのことですが、どういった部分に魅力を感じていましたか?
田中 主人公のマッシュが魔法を使えない孤独な存在であるにもかかわらず、まったく劣等感を抱いておらず、マイペースに筋肉で問題を解決していくところですね。普通なら努力(修行)して強くなっていき、周囲の人たちを認めさせていくものだと思うのですが、マッシュはそういう部分を見せないにもかかわらず、いつの間にか周囲に認められていく。その話の流れが今までの『ジャンプ』作品と違って面白いと思っています。
――アニメ化にあたって意識したことや、原作者の甲本先生やプロデューサー陣から受けた要望などを、差し支えのない範囲で教えてください。
田中 アニメ化にあたっては、やはり独特な雰囲気を持つマッシュをどうやって表現するかについていろいろと試行錯誤しました。何を考えているかわからない、つかみどころのないキャラクター感を大切にしたかったので、会話を普通よりもワンテンポ遅らせたり、他のキャラクターたちとは違って、ほとんど瞬きをさせないなど、細かな部分を意識するようにしました。
――本編の制作中、とくに楽しかった、または苦労した話数やシーンなど、印象深いポイントを教えてください。
田中 第5話でマンドラゴラを調理するシーンと、マッシュたちの前にドットが登場するシーンが楽しかったです。どちらも声優さんにすごく楽しく演技していただいたので、声に負けないように作画を頑張らなければならないのが大変でしたが、面白くもありました。あとは第9話が印象に残っています。ランスvsワース、マッシュvsアビスと、ふたつも闘いがあったのですごく大変でした。闘いだけでなく、ワースとアビスの過去の話もあり、どうやって20分の尺にまとめるか、非常に悩みました。
――シリーズ構成の黒田洋介さんやキャラクターデザインの東島久志さんなど、スタッフとのやりとりで思い出に残っているエピソードがあれば教えてください。
田中 シリーズ構成の黒田さんは、とにかく話のまとめ方がうまいなと感じました。原作にはないギャグなども、話の腰を折ることなくすごく自然に足していただいたので、本当に助かりました。また、昨今のアニメ作品と比べると、『マッシュル-MASHLE-』のキャラクターデザインは線の数が少ないのですが、東島さんのデザインはそんな中でもキャラクターたちの魅力を最大限引き出してくれているところがすごいなと感じています。
バトルとシュールさを楽しんでほしい
――キャスト陣の演技についてはいかがでしたか?
田中 マッシュ役の小林(千晃)さんには、とにかく感情を表に出さないよう、つかみどころがないキャラクターとして芝居をお願いしたのですが、それがすごく大変だったと思います。ですが、そんな難題にも真剣に向き合いながらマッシュというキャラクター演じていただいて、感謝しかありません。あとは、皆さんが楽しんでアフレコをやっていたのが印象に残っています。とくに、レモン役の上田(麗奈)さんと、ドット役の江口(拓也)さんのふたりの演技には何度も笑わせていただきました。
――ちなみに、監督には筋トレや筋肉に関する思い出はありますか?
田中 すみません。ときどき思い出したように腹筋をすることくらいしかないので、筋トレに関する思い出はありません……。筋肉をつけたいなという願望はありますので、今後の課題にしようかと思っています。
――最後に、アニメ『マッシュル-MASHLE-』の視聴者に、メッセージをお願いします。
田中 いつもご視聴ありがとうございます。これからも『マッシュル-MASHLE-』という作品の楽しさ、バトルの迫力、シュールさを大事にしつつ、少しでも魅力的な作品をお届けできるようスタッフ一同頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。
- 田中智也
- たなかともなり アニメーション監督、演出家。主な参加作品は『Engage Kiss』(監督)、『ヴィジュアルプリズン』(監督)、『七つの大罪 戒めの復活』(副監督)、『エルドライブ【ēlDLIVE】』(助監督)など。
『マッシュル-MASHLE-』
TOKYO MX他にて毎週金曜24時00分より放送中!
- ©甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会