――『マッシュル-MASHLE-』の原作は『週刊少年ジャンプ』に連載中の人気作ですが、最初に読んだときはどんな印象を持ちましたか？
梅原　オーディションの段階で読ませていただいたときは、なじみ深い魔法の世界のお話だったので、わかりやすいといえばわかりやすい作品だなと。あとは、主人公のマッシュが持っている空気感が作品全体を引っ張っていて、たとえば真剣なバトルの最中にギャグが挟まってきたりとか、そういったところがこの作品の面白さなんだろうなというのは感じました。

七海　私はもともと原作を読んでいたんですけど、やっぱり戦いの中にも笑いが入ってくるのは、すごく面白いところだなと思っていました。おかげで読んでいるときに、シリアスな展開でもそこまで暗い気持ちにならず、ちょっと明るくなれるんです。あと、家族愛とか友情といった、いわゆる熱い部分が描かれているところが好きだなと感じていました。最終的にマッシュが、どんな強い敵でも筋肉でねじ伏せていくという、さわやかでスカッとしたところも個人的にとても気に入っています。

――そのうえで、どんな意気込みでオーディションに臨んだのでしょうか？
梅原　じつは僕、オーディションの段階ではアベルは受けていなくて。
七海　えぇ!?
梅原　他のキャラクターを受けていたので、オーディションで原作を読んだときは、アベルをまったく意識していなかったんですよ。そのあと「アベル役に決まりました」と聞いて、僕は読者としても、演じる立場としても敵役のほうが好きなので、アベルを演じられるのは本当にうれしいなと思いました。
七海　私は最初からアビス役で受けさせていただいたんですが、『ジャンプ』作品に出させていただくのは夢だったので「絶対やりたい！」と思っていたんです。だから、アビス役に選んでいただけて本当にうれしくて、最初のアフレコのときに「本当にありがとうございます！」と言いました（笑）。

――そんな熱いエピソードがあったんですね。
七海　はい。「これは言っておかないと！」と思っていたので。

――配役が決まり、担当することになったキャラクターについては、どんな人物だと解釈し、どんなことを意識しながら演じていますか？
梅原　アベルは過去のとある出来事のせいで、選民思想みたいなものを持ってしまったキャラクターです。社会的にはあまりよくない思想ですが、彼の中では確固たるものがありますので、そこにおける迷いはないんですよね。「自分の信じる世界を作るんだ」という信念のもとに行動しているので、ブレがない。なので、そういった堂々とした様子は意識しました。主人公のマッシュも違う意味でブレのない人物なので、そこでのブレのなさの対決といったところは面白いのかなと思います。

七海　アビスは最初の登場時から仮面を着けているので、ミステリアスな部分を意識しながら演じたいと思っていました。アビスにも出生にまつわる秘密があって、まわりから忌み嫌われている存在で、家族からさえも敬遠されるという、とても寂しい人生を送っているキャラクターなんです。そこでアベル様に必要とされ、初めて自分の存在意義や生きる意味を知ることができた人物なので、その寂しさだったり切なさだったりが滲み出るように演じられればいいなと意識しました。

――敵役だけど、切なさも醸（かも）さなければならないのは難しいですよね。
七海　そうですね。最初の登場回は顔見世程度だったので、2回目のアフレコでは少し「悪役」のイメージで臨んだんです。そうしたら「そこまで悪いイメージを出さないでください」というディレクションをいただいて「なるほど！」と納得したんです。マッシュと出会ったことによって、固くなっていた心が解きほぐされていく部分もありますから、「THE・悪」みたいな方向性ではないんだなと。そういったスタッフの方々の意図を理解してからは、自分でもイメージを少し変えながら演じました。

――ミステリアスなうえに切なさも漂って、本当にハマり役だと思います。
七海　……だといいですね（笑）。
梅原　僕も最初はもう少し陰湿そうというか、本当に会話もできなさそうな、凝り固まった人物のイメージで演じたんですけど、そうしたら「もう少し会話ができる感じで」という細かい調整がありました。オーディションでやった役ではなく、本番で初めて演じる役柄でしたので「どんなものかな」とは思っていたのですが、大きく方向性を変えるようなディレクションはなかったです。

――堂々たる風格を漂わせていていますよね。学生だなんて信じられないくらい。
梅原　そうですね（笑）。