TOPICS 2023.06.26 │ 12:00

『マッシュル-MASHLE-』の「悪」ではない敵役たち
アベル役・梅原裕一郎×アビス役・七海ひろき対談(後編)

主人公・マッシュと敵対する七魔牙(マギア・ルプス)との戦いも深刻さの度合いを増しているTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』。その七魔牙の中心人物であるアベル役・梅原裕一郎と、アビス役・七海ひろきの対談インタビュー。後編では、自身とお互いのキャラクターについて抱いている印象を直撃。敵でありながら複雑なバックグラウンドを持ち、演じるにあたり解釈の深さが求められる難役への思いを聞いた。

取材・文/清水素子 撮影/松本祐亮

アビス役に決まってからアベルへの印象も変わった

――七魔牙(マギア・ルプス)を率いるアベルとアビスのコンビ感に期待しているファンも多いと思うのですが、お互いが演じるキャラクターに対する印象を聞かせてください。
梅原 さっき七海さんがおっしゃったように、アビスは出自の面で抱えているものがあって、そこはアベルが心に傷を負った過去とも共鳴して、波長が合っている気がするんですよね。アベルからすれば、アビスを仲間にして行動をともにするのはそんなに重大なことではなく、単純にアビスの能力を買ってのことだったんですけど、おかげでアビスは自分の居場所を見つけることができた。そのふたりともが不器用な感じなのは、すごく似通っているなと思います。あと、原作を読んでいるとアビスは……まず、性別がわからなくて(笑)。
七海 そうですよね。私も「どっちだろう?」って(笑)。
梅原 「あれ、これ、どっちなのかな?」みたいなところも含めてミステリアスだと思います。しかも七海さんが演じられることで、そのミステリアスさがよりいっそう増大したなというのは、アフレコ中も感じましたね。

――七海さんから見たアベルはいかがですか?
七海 まず、アビスをやるなんて考えていない段階では、アベル様は、現実ではなかなか言えないような台詞も躊躇なく発してしまう人物で、そのうえ人形に話しかけたりとか、本当にキャラクター性が濃いなと思っていました。ただ、「弱肉強食」というモットーを掲げてはいるけれど、そこに至るまでの物語を見ていると根底には優しさがあるんだろうなと。そして、アビスを演じることが決まってから見ると、アベル様は「欲しかった言葉をくれた人」なんですよね。今はもう崇拝にも似た感情というか(笑)、「この人がいるからこそ自分は生きる意味がある!」と思いながら見てしまうキャラクターになっています。

――やはり、自身の役どころとシンクロしてしまうんでしょうね。
七海 そうですね。私は演じるうえで役を通して見る部分があるタイプなので「自分を導いてくれた人だから無条件に守る!」という思いは、やっぱりどこかにありますね。

マッシュとの出会いは「未知との遭遇」

――ひとつ気になっているのですが、アベルもアビスもマッシュとの戦いの最中に、自らの生い立ちやトラウマを語りますよね。敵として戦いながら、なぜ彼らはマッシュに心を開いたのか? おふたりはどんな風に解釈しましたか?
梅原 戦いの中の会話を見ても、マッシュってかなりフラットな思想の持ち主ですよね。アベルもアビスも強い思想を持って凝り固まったところがあるので、柔軟で何ものにも染まっていない思想とぶつかったときに、マッシュの生き方のほうが人間として自然だなと感じて、彼の側にだんだん寄っていったのかな、という印象はあります。アベル、アビスはともに魔法の中で生活している人なので、彼らから見て魔法が使えないマッシュという人物は……なんていうんでしょうね、そもそも自分の常識外から来た生き物じゃないですか。
七海 ははは。

梅原 そこで物理的に殴られて……みたいなところも含めて、未知との遭遇というか、目が覚めるような気持ちがあったんじゃないかと解釈しています。
七海 魔法の使えないマッシュに対して、きっとアビスは自分と同じように忌み嫌われる存在として育ち、同じような思想を持っていることを期待していたと思うんです。それが全然違う感覚に引っ張られて、自分もこういう風に生きられたらいいのに……という、アベル様とはまた違う憧れみたいな部分を持ったのではないかと考えながら、アフレコをしていました。なにより初めて「友達になろう」と言ってくれた人だから、そうやって自分と同じ土俵に立ってくれるというところにも、すごく魅力を感じたと思います。

アベル、アビスの変化はもちろん、ギャグにも期待して

――そういったキャラクターのバックグラウンドまでもがしっかりと描かれているのが『マッシュル-MASHLE-』のよさですよね。今後、アベルやアビスとマッシュたちとの関係性が、どのように進展していくのか楽しみです。
梅原 今後の話でアベルの過去の出来事だったり、アベルとアビスの出会いが明らかになっていくので、そこで彼らがなぜ今、こういった考え方を持っているのかが理解できると思います。そこには同情というか、共感できる部分も多少なりともありますので、敵役として登場したものの、根底には温かい人間らしいものがあることを知ってもらえるとうれしいです。最終話までバトルの続く、かなり見応えある作品になっていますので、ぜひともよろしくお願いします。
七海 アベル様とアビスの関係性もそうですが、とにかくアベル様はとてもカッコいいです! さらにマッシュのカッコよさも描かれているので、それに対するアビスの心の変化みたいなものも感じていただきたいです。そして、この作品の大きな魅力のひとつにギャグがあると思うんですけど、個人的にはアベル様の戦闘中に……ちょっとギャグっぽいひと言があるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。すごく面白くて、アフレコ中、笑うのを我慢していました!

――「本当に敵なの?」と思うくらい、アベルもアビスも魅力的なキャラクターですもんね。
七海 そうなんですよ。すごく面白いので期待していてください!endmark

梅原裕一郎
うめはらゆういちろう 3月8日生まれ。静岡県出身。アーツビジョン所属。主な出演作に『ゴブリンスレイヤー』(ゴブリンスレイヤー役)、『彼女が公爵邸に行った理由』(ノアボルステア・ウィンナイト役)、『SSSS.DYNAZENON』(山中暦役)、『スパイ教室』(クラウス役)など。
七海ひろき 
ななみひろき 1月16日生まれ。茨城県出身。アンドステア所属。宝塚歌劇団での活動を経て、俳優、声優、アーティストとして活動。主な出演作に『かげきしょうじょ!!』(里美星役)、『ヴィジュアルプリズン』(イヴ・ルイーズ役)、『六道の悪女たち』(布留川葵役)、『RWBY 氷雪帝国』(シオン・ザイデン役)など。
作品情報


『マッシュル-MASHLE-』
TOKYO MX他にて毎週金曜24時00分より放送中!

  • ©甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会