TOPICS 2022.07.12 │ 12:00

聖地巡礼のススメ 2022①
アニメ聖地の「探し方」教えます!

作品の舞台をたずね歩く聖地巡礼は、今や多くの人が楽しむアニメ系カルチャー。その魅力と楽しみ方をFebri独自の視点で徹底解説。第1回は地図をテーマに、いちばんの基本である“聖地の場所”の調べ方、探し方を解説する。

文/浅野健司

自分で聖地を探すには?

あのシーンの場所がどこなのか、どれだけ検索してもわからない……。そうなったら、いっそ自分で探してみよう。実際、巡礼マップに載っていないような聖地は、ファンの地道な探索によって発見されたものがほとんどなのだ。もちろん、一枚の画像から場所を特定するのはかなり難しいが、宝探しのような面白さがあり、聖地巡礼の隠れた醍醐味ともいえる。

そこで聖地を探索するための基本的な手順を、下の写真を例に解説してみたい。手がかりとして、撮影ポイントは「埼玉県秩父市周辺」であることを提示しておこう。こういうときもグーグルマップが役立ってくれる。実際に地図を見ながら、一緒に探してみてほしい。

こちらが例題となる写真。電車は大きなヒントになりそうだが、この場所はいったいどこ?

稀少要素で範囲を絞ろう

聖地を探す際のポイントは、特徴的な部分に注目することだ。この写真で言えば、電車と踏切、背後の山と、そこに立つ鉄塔のような建造物になる。
電車が写っているということは、線路がある場所。しかも山があまり離れていないので、山沿いだけ捜索すればいい。鉄塔はよく見ると左右に腕のようなものが伸びているから、送電線の可能性が高い。地図の航空写真で線路周辺をチェックしていくと、秩父鉄道の樋口駅、武州日野駅、白久駅付近の山中に送電線を発見できるはずだ。

このように、わずかな要素からでも、かなり範囲を絞ることができる。希少性の高い人工物や自然によって形成された地形は、特徴的であるだけに大きな手がかりとなるのだ。

 

この写真の中では、○で囲った部分が特に目を惹くポイントだろう。電車に詳しければ、車体から路線名を推理することも可能だ。

次に注目したいのは、右下にほんの少し写っている道路の線。黄色っぽく見えるので、おそらく車道のセンターラインだと思われる。航空写真を見ると、線路沿いを通っていて黄色のセンターラインがあるのは国道140号線くらいだ。

先ほどのエリアでこれほど線路と国道が近接しているのは、武州日野駅と樋口駅付近。しかし、樋口駅付近では送電線が線路とは反対側の山に建っているため、位置関係が同じにならない。ストリートビューで確認してみても、線路の位置が低く雰囲気が異なるから、除外していいだろう。

うっかり見逃してしまいそうだが、わずかに写ったこの線も大きな手がかり。探索に行き詰まったら、画像を慎重に再チェックしてみよう。

ここまで来れば、武州日野駅周辺の踏切をストリートビューでしらみつぶしに確認しても見つけられるだろうが、せっかくなので写真から推理してみたい。

聖地を探す上でもうひとつ重要なポイントは、「複数の手がかりで探す」こと。たとえば「踏切」というだけでは数が多すぎてヒントとして弱いけれど、他の要素と組み合わせることで限定され、グッと役立つ情報になる。そこで注目したいのが、写真中央の柵に囲まれた空間だ。

柵に囲まれたこの空間は何だろう。歩道部分が橋になっているようにも見えるが……? 明確にわからないものでも、周辺の状況から推理すれば手がかりになり得る。

ガードレールや柵は落下防止の目的で設置されることが多いが、たしかに窪みになっているように思える。では、何の窪みかと考えたとき、山の近くという地形を考慮すれば、そこから流れ込む川や水路ではないかと推測することができる。つまり、条件としては「国道と隣接した線路を、踏切のある道が横切っていて、その隣に川(または水路)がある場所」ということになる。

しかし、地図上では条件に合う場所に河川を示す表示は見当たらない。そこで再び航空写真に切り替えてみると、武州日野駅のすぐ西側にある踏切付近に、蛇行した河川のような地形を見つけることができた。最後にストリートビューに切り替えてこの踏切を確認すると、写真と同じ風景が見えた。これで場所の特定は完了だ。

地図ではわからなかったが、航空写真では、北側の住宅地へと伸びる川が確認できる。念のためのダブルチェックが実を結んだ。あきらめない心も大事だ。

聖地探しはハマると深い!

聖地探索はいかがだったろう? 広大なエリアからピンポイントの一箇所を探り出す作業に、パズルを解くような快感をおぼえたあなたは、かなり聖地巡礼向きな人かもしれない。コロナ禍で外出もままならない昨今、休日は地図を見ながら聖地を探し、バーチャルで巡礼を楽しんでみてはどうだろうか。

さて、地図にまつわる話は、ひとまずここまで。次回は実際の聖地で役立つ、写真撮影について解説していこう。endmark