原作でも映画でも、イェジの瞳は重要な意味を持っている
――イェジとソレでは外見が大きく違いますが、ビジュアル上の芝居のつけ方や、演者の芝居のつけ方でどのような変化を出すように心がけたのでしょうか?
チョ・ギョンフン監督 イェジとソレは、デザインの段階からアプローチの仕方がまったく違いました。絵柄自体が変わるとでも言いましょうか。本作をアニメで作った理由のひとつなのですが、イェジがソレに変わる際に絵柄そのものを変えることによって、変身したあとの相対的な華やかさと突出した印象を表現することができました。芝居のつけ方としては、イェジは人の視線を避けて委縮している感じを出すことにこだわり、ソレは以前の自分の姿から段階的に自信に満ちていく姿、あるいは礼儀知らずの姿に変化させることで芝居のバランスを取りました。もちろん、そのつど怒りや悲しみなどの感情を表現するときは、制限された3Dのキャラクターとして表現できる最大値を引き出すために努力しました。また、イェジとソレ以外でこだわったキャラクターは、意外かもしれませんが、施術者です。とても女性的でありながら、ふてぶてしく世俗的なイメージを担当のアニメーターが絶妙に表現してくれたと思います。
――劇中ではイェジが瞳をほめられるシーンが出てきます。この瞳は何か明確なイメージがあって色合いを決めたのでしょうか?
チョ・ギョンフン監督 原作でも映画でも、イェジの瞳はとても重要な意味を持っています。劇中、目のモチーフがさまざまな小道具や演出を通して表現されていますが、瞳の色についてはかなり悩みました。現実と完全に異なる瞳の色にすると違和感が出そうなので、東洋人の基本的な瞳の色にほんの少し紫色を加えたんです。よく見ると、宝石のような感じがするとでも言いましょうか。他のキャラクターに使われていない瞳の色をいろいろテストして、やはり紫の系列がいちばんきれいだったのでこれに決めました。一般的な2Dアニメで瞳を表現する方法と大きな違いはありませんが、製作過程でイェジの眼球をマッピングするときは、他のキャラクターよりもはるかに高い解像度でディテールにこだわって作業を進めました。
――日本の観客に向けて、「ここに注目してほしい」というポイントを教えてください。
チョ・ギョンフン監督 『整形水』はアニメを作るというより、実写映画を作るつもりで制作した作品です。既存のアニメとは多少異なる印象があるかもしれませんが、その点は寛大に受け入れていただき、ストーリーの流れに注目して見ると、あっという間に映画が終わっていると思います。リラックスして気軽に見られるホラー映画なので、楽しんでいただければ幸いです。
- チョ・ギョンフン
- 短編アニメーション『便秘(原題)』(1996)、『空腹(原題)』(2000)、『復讐不可能2(原題)』(2001)を監督後、アニメ制作会社スタジオアニマルを設立し、監督およびプロデューサーとしてさまざまな作品の制作に携わる。スタジオアニマルで制作した代表作に『メディカルアイランド(原題)』(2003)、『ゴーストメッセンジャー(原題)』(2010)、『ハングオン!(原題)』(2014)など。『整形水』は長編商業映画デビュー作となる。