どうしてもカッコよくならないDの魅力
――1st seasonでの収録で、小林さんはDをどんな人物としてとらえていたのでしょうか?
小林 オーディションの段階では、いろいろなバリエーションのDを聞かせてほしいということで、あれこれキャラを変えながら演じました。僕としては、有象無象の戦闘員なのに世界征服の野望に向かって突き進もうとする使命感の重さを表現しようと思っていました。でも、さとう(けいいち)監督から「いや、そこまで重い感じではなく軽いノリでやってほしい」といわれて、僕がDに抱いていたイメージが打ち砕かれた感じがしまして。それでコミカル方面に振りつつ、シリアスな一面と明確に演じ分けていくことにしたんです。

©春場ねぎ・講談社/「戦隊大失格」製作委員会
――2.5枚目よりも3枚目寄りという感じですか?
小林 そうですね。2.9枚目といったところでしょうか。以前、原作者である春場ねぎ先生と対談させていただいたときに「オーディション音声を聞いて、いちばんカッコよくなかったから小林さんを選びました」とおっしゃっていたんですよ。Dは悪の道を突き進んでいますが、カッコよくしてはダメなんです。ビシッと決めるべきところなのに、どうしてもヘナチョコな感じになってしまう。1st seasonのブルーキーパーとの勝負でも、いまいちカッコよくならなかったですからね。ただ、怪人としての凄みはなくはないし、ブルーキーパーも「今ここで倒しておかなければいけない敵」と認識するくらいの存在ではあるので、カッコよさの使いどころを模索しながら演じました。
人との触れ合いで生じたDの変化
――1st seasonでは、最終試験を通して敵であるはずの候補生たちに仲間意識が芽生えるなど、当初に比べてDの内面が変わっていったように思います。小林さんはDの変化についてどのように感じていますか?
小林 根っこの部分は変わっていないと思います。かつての彼には戦闘員の仲間がいましたし、「人間は敵」という認識しかありませんでした。でも、大戦隊に潜入して人間と関わっていく中で、仲間と力を合わせて敵と戦っていくという点で自分たちと何も変わらない存在であることを知ったんです。完全に打ち解けたというよりは「お前らのこと、認めてやるよ」という感じですかね。とはいえ、今はとりあえず仲間として関わっているけれど、いつか打ち倒すべき敵という意識は捨てきってはいないので、最終的には冷酷な決断を下そうとするのではないでしょうか。それでも、敵である人間に刃を突き立てる瞬間にためらいが生じる……くらいの意識は芽生えていると思います。

©春場ねぎ・講談社/「戦隊大失格」製作委員会
――一方、Dが怪人軍団の幹部であるペルトロラに反旗を翻したのは意外な展開でした。
小林 Dは誕生してからこれまでの13年間で、彼なりの「悪の美学」みたいなものが内に生まれていました。でも、そのビジョンは幹部のものとはだいぶ乖離していたんです。それでもかつての彼なら「幹部のいうことは絶対」と従っていたでしょう。しかし、大戦隊に潜入して孤軍奮闘していくうちに芽生えたDのプライドが、幹部への不信感や不満につながり、やがて裏切りへとつながっていったんです。幹部であるペルトロラと決別するきっかけになったのは、ブルーキーパーとの一騎打ちを邪魔されたこと。あの戦いはDの人生で最大の見せ場でした。「たとえここで死んでも本望だぜ」という気持ちでいたのに、一騎打ちの最中に後ろからの不意打ちでペルトロラがブルーキーパーを倒してしまった。つまり、一世一代の大舞台を汚されたことへの復讐なんです。これまで復讐の対象はドラゴンキーパーの5人でしたが、復讐のターゲットが増えたことで、さらなるイバラの道を歩むことになってしまった。それも、彼がまだ青臭い年頃だからこそ生まれた衝動なのかなと思っています。

©春場ねぎ・講談社/「戦隊大失格」製作委員会
身震いするほど熱かったブルーキーパーとの一騎打ち
――1st seasonでとくに印象に残ったシーンは?
小林 やっぱりいちばんグッときたのは、Dがブルーキーパーに強敵と認められるシーンです。一戦闘員でしかないDにとっては「誉れ」といっていいでしょう。1月26日に開催されたイベント「初春大直会(はつはるだいなおらい)」でブルーキーパーとの対決シーンを生アフレコしたんですが、演じながら身震いするくらいの熱さと緊張を感じたんです。だからこそ煮え切らない決着になってしまったことを無念に思っているDにはすごく共感できるし、僕自身も消化不良な感じがずっと抜けていません。

©春場ねぎ・講談社/「戦隊大失格」製作委員会
――4月13日からスタートする2nd seasonの見どころを教えてください。
小林 2nd seasonからDはグリーン部隊に配属されることになります。「なんでDがグリーン部隊!?」と意外に思われる方もいるかもしれませんが、物語が進むにつれてグリーン部隊こそDにとって最適な居場所だったと感じられるはずです。僕は原作でもこの学園編がいちばん好きで、ミステリアスな謎解き要素や、ちょっと怖いと思っていたグリーン部隊の従一位・翡翠かのんの魅力が紐解かれるなど、注目の展開が目白押しです。いろいろなキャラクターの意外な一面が見えてくるので、どうぞご期待ください。
- 小林裕介
- こばやしゆうすけ 3月25日生まれ。東京都出身。ゆーりんプロ所属。主な出演作は『日本へようこそエルフさん。』(北瀬一廣/カズヒホ)、『ババンババンバンバンパイア』(立野李仁)など。