TOPICS 2024.01.08 │ 12:00

TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー
④ 山田役・阿座上洋平

北海道最大の繁華街「すすきの」から5駅離れた「北24条」の小さなスナックを舞台に、人生経験豊富なママ&チーママのコンビとぶっ飛んだ客たちが巻き起こす情熱の嵐。ボケがさらなるボケを生み続ける『スナックバス江(以下、バス江)』いう作品で、唯一の常識人であるサラリーマンの山田を演じるのは、阿座上洋平。その静かな奮闘を、本人の言葉で語ってもらった。

取材・文/前田 久

生々しいのに実態がつかめない明美の謎

――山田と森田以外に、気になるキャラクターはいますか?
阿座上 明美は山田がいないときはツッコミに回るんですよね。高橋李依ちゃんは本当に器用に立ち回るのですごいなと、あらためて感じました。明美もじつは何を考えているのかわからない人だと思うんです。話数によって、まるで別人かのように振る舞いますよね。なんというか、本当に大事にしているものがなさそうに見える。そこが明美の本当の魅力じゃないかと思っているんです。

――ああ、たしかに……言われてみれば彼女は「虚ろ」なのかも。
阿座上 森田は「モテたい」という思いが中心にあるし、山田も「ここでちゃんとツッコまないと、大変なことになる」みたいな考えが行動の軸にある。バス江ママにしろ、タツ兄にしろ、小雨にしろ、みんな何かが奥底にあるんですけど、明美だけは見えないんですよね。だからこそ、気になる存在です。元カレの借金を肩代わりした理由とか、そもそもなぜ「スナックバス江」に勤めるようになったのかとか、聞きたいような、聞きたくないような。でも、どこかのスナックに、こういうチーママがきっといるだろうなという感じもするんです。あまり自分のことを話さずに、まわりをひたすらいじって楽しむような人。そして、明美の人間性にツッコむ人が誰もいないことによって、このスナックにおける人間関係の絶妙なバランスが生み出されている。そんな気もしています。

――深いです……。
阿座上 バス江ママも急におかしなことを言い出したりしますけど、でも彼女にはどこかマスコット的な部分があるじゃないですか。だからなんとなく安心して見ていられるんですよね。明美は存在としては生々しいのに、ぽっかり見えない部分がある。怖いです(笑)。

山田は本当に常識人なのか?

――ところで、山田といえば風間先輩の存在もポイントかなと思います。
阿座上 風間先輩は本当にノリがウザいんですけど(笑)、でもウザさが控えめのときは意外と常識人なんですよね。場をしっかり盛り上げてくれるし、なにより初めて山田を「スナックバス江」に連れてきたときに、お店のヤバい状態を見てひとりで帰っているんですよ。それだけで常識人なことがわかるじゃないですか(笑)。

――たしかに!
阿座上 その反応がまともなんですよ。山田は置いていかれて、結局「スナックバス江」になんだかんだでなじんでいますからね。だから風間先輩はいいボケ役だし、すぐに「ち○ぽ」と連呼したりするのはどうかと思いますけど――じつは登場人物の中ではまともなんですよね。ひょっとすると、山田よりまともかもしれない。

――山田は「スナックバス江」のあの場の空気に取り込まれている時点で、常識人ではない……。
阿座上 たぶん、彼は刺激的な日々を求めていたんじゃないかな。普段の行動が真面目すぎて。そんな風に想像したりしますね。

――このインタビューではいろいろな発見があって、作品の見え方まで変わってきそうです。
阿座上 山田を演じていると、あの世界を俯瞰して見ることができるんです。だから「みんなおかしいけど、じつはいちばんおかしいのは山田じゃね?」ということまで考えてしまう。本当のところはわからないですけどね(笑)。ただ、原作の時点で本当にセンスのあるボケとツッコミですから、役者がひとつひとつその面白さを細かく拾っていくと、逆にこの面白さが消えてしまうかも、とも感じたんです。だからいろいろ考えてはみたものの、現場では流れに乗せてもらっているだけ、というシーンも多々あります。監督も『バス江』のファンだし、他のスタッフやキャスト陣とも仲よくやりとりをしながら収録ができているので、そこで生まれる空気には全幅の信頼を置いています。作品全体から生まれてくる面白さを楽しんでいただけたらうれしいですね。endmark

阿座上洋平
あざかみようへい 8月7日生まれ。群馬県出身。青二プロダクション所属。主な出演作に『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(グエル・ジェターク役)、『それでも歩は寄せてくる』(田中歩役)、『スプリガン』(ジャン・ジャックモンド役)、『鴨乃橋ロンの禁断推理』(鴨乃橋ロン役)など。
作品情報


TVアニメ『スナックバス江』
2024年1月12日(金)よりTOKYO MX他にて放送開始!

  • ©フォビドゥン澁川/集英社・「スナックバス江」常連一同