5人きょうだいの名前は仮の名前をそのまま採用
――オリジナルキャラクターである魔法使い5人のきょうだいはどういう経緯で生まれたのでしょうか?
大森 脚本の吉田玲子さんの発案です。初期プロットの段階で、仮の名前で「わん」「つー」「すりー」「ふぉー」「ふぁいぶ」と付けられていたのですが、その名前の語感が妙にかわいくて、そのまま使おうと満場一致で決まりました。「『ふぁいぶ』ってかわいいよね」と(笑)。そして「魔法使い」というアイデアに刺激を受けたのか、なんと会議の翌週にはサンエックスのデザインチームから今のデザイン案があがってきました。そのデザインをもとに吉田さんがさらにイメージを膨らませて、各人の性格や個性を掘り下げながらシナリオを作っていったんです。本作のシナリオ制作では、スタッフ間の意思のキャッチボールがとてもうまくいったおかげで、スムーズにお話が出来上がりました。
――デザインが固まるまでの経緯をもう少しくわしく教えてください。
大森 作者・デザイン担当のよこみぞゆりさんを中心としたデザインチームの主導で作られました。初期プロットに「青い大満月」と「ナイトパーティー」という要素があったので、帽子やステッキに星がついています。また、みんな青や紫など夜に映えそうな色づかいで構成されていますね。
――前作同様、まるで手描きのような温かみのある映像でしたが、今作も全編CGで作られているのでしょうか?
大森 前作も本作もほとんどが手描き調のCGなのですが、ちょっとした小道具や、ほんの数カットしか出てこないようなキャラクターは手描きです。作画したものをパーツだけ動かしてCGっぽく見せる、ということをやっています。本作では、僕の提案でメインのすみっコ以外にもいろいろと小道具やキャラクターが登場するため、手描きで制作しなければいけないものがやたらと増えてしまって、現場スタッフにはかなりの負担をかけてしまいました。
セリフはなくてもすみっコたちの感情は伝わる
――子供向けのキャラクター作品を作る難しさを感じることはありましたか?
大森 『すみっコぐらし』のキャラクターたちは、みんな言葉をしゃべりません。作品世界の中では言葉を使ったやりとりをしているようですが、少なくとも我々がわかる言葉での意思疎通はしていないので、映画の制作では「セリフを使った表現はしない」という縛りがあったんです。そのため、基本的には画を見ているだけで何が起こっているかがわかるようにする、ということを意識しました。最初のうちはとまどいがありましたが、やがて顔を見合わせたり、少しだけうつむく、といった細かいアクションですみっコたちの感情を表現するのが面白くなってきました。表情の変化もあまりないし、手足が短いので細かいジェスチャーもできないのですが、逆にやれることが制限されているからこそ、集まったり離れたり、すみっこにちょこんと座ったり、コロコロ転がってみたりなど、いろいろなアクションで彼らの感情や言いたいことを表現するのが楽しくて。ちょっとした表情や動きの違いだけでもいろいろなことを伝えられるんだな、という発見がありました。