現代からタイムリープを見つめたタケミチの「協力者」
「ボクに協力してください! 君なら姉さんを救える!」
過去と現在を行き来するタイムリープの実行者として、世界を変えようとした花垣武道(以下、タケミチ)。だが、それはひとりで実現できるものではなく、時間移動を発生させる引き金役=トリガーが別に存在していた。タケミチの中学時代の彼女であった橘日向(以下、ヒナ)の弟、橘直人(以下、ナオト)である。初めてのタイムリープで過去にやってきたタケミチの口から、近い将来、姉とともに死を迎えることを聞かされたナオト。通常であれば、「怪しい予言者」のようなタケミチの言動はにわかに信じがたく、無視したとしてもおかしくはない。
だが、ナオトはタケミチを信じた。実感の込もった彼のメッセージと、のちにそれがタイムリープのトリガーだと知る「握手」によって。その後、彼は「来るべき時」に備えて自己研鑽に励み、刑事という立場を得てタケミチの協力者となる。大好きな姉を守りたい――その意志においてはタケミチに勝るとも劣らないナオトの想いなくして、その後、幾度も繰り返されるタイムリープはかなえられなかったであろう。
加えて、刑事らしい情報収集能力と推察力で、姉を死に追いやった直接的な要因である「東京卍會(以下、東卍)」を分析し、「佐野万次郎と稀咲鉄太を会わせない」、「龍宮寺堅を救う」など、過去に戻るタケミチに一定のミッションを提示。それがヒナの死の回避につながらなくとも、改変された状況を冷静に判断して次のミッションを提案し、一方で現代でも東卍を監視し続けた。想いを力に変え、文字通り身体を張る「動」のタケミチとは異なり、タイムリープによって起こった事実を客観的に検証する「静」のナオト。一見、正反対だが、ヒナを死なせたくないという点においては想いを共有するふたりの組み合わせにより、徐々に「東卍」が凶暴化した真相に近づいていったのである。
だが、姉の死を回避できないまま、タケミチは6度のタイムリープを終えてしまう。さらに悪いことに東卍は凶悪化の一途をたどり、完全な反社会組織となっていた。それでもナオトを突き動かしていたのが、東卍の幹部・稀咲鉄太の存在だった。以前から組織の凶暴化に大きな影響を与えていると疑っていた彼が、タケミチに対して何らかの執着を持っていることが判明したのである。そしてナオトは、同じく現代の改変をあきらめていないタケミチを再度、送り出す。「東卍の凶悪化を止めること」をミッションとして。今を生きている者が動かなければ、過去も未来も変えられない――表向きには「静」に見えるナオトの滾(たぎ)る想いは、姉を救うまで不変なのである。