TOPICS 2021.08.23 │ 12:00

『トロピカル〜ジュ!プリキュア』特集(全3回)
キャラクターデザイン・中谷友紀子インタビュー

『プリキュア』シリーズのキャラクターデザインを務めるのは、この『トロピカル~ジュ!プリキュア』が2回目となる中谷友紀子。華やかで明るいテイストは、どんな試行錯誤を経て生み出されたのか。シリーズ最新作の舞台裏について、じっくりと話を聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

海の生き物は、長生きするものほど身体が大きくなる

――シリーズディレクターの土田さんや村瀬プロデューサーがこだわっていたのは、どういうところでしょうか?
中谷 土田さんは整合性をけっこう気にされていたかなと思います。「この角度でこのパーツはどうなるんですか?」とか。村瀬さんはサマーに関して、「あまり見たことがない感じにしたい」とおっしゃっていました。セーラーの襟のモコモコの形状は、それで出てきたアイデアです。私は最初、普通のセーラー襟でデザインしていたんですが、「これだと普通すぎるので、どうにかなりませんか?」と。なので、襟のデザインはそれぞれキャラクターごとに特徴をつけて。襟はけっこう重要でしたね。

――敵方のデザインはどれも海の生き物がモチーフになっていますが、やっぱり「あとまわしの魔女」ですね。身体がものすごく大きいという設定ですが、これはどこからきたアイデアなのでしょうか?
中谷 私は最初、普通に若い女性でデザインを考えていたんです。そうしたら土田さんから「もっと歳の行った、何百歳とかのキャラクターなので」と。海の生き物は、サメやクジラのような長生きする生き物ほど身体が大きくなるので、それにならって身体を大きくしています。人魚の女王様も身体がすごく大きいんですけど、それも同じ理由ですね。「あとまわしの魔女」のまわりにいる召使いたちは、土田さんがベースとなるスケッチを描いてくださったので、それに少しだけ手を入れて今の形になりました。「人じゃない感じにしたい」とおっしゃっていたので、エビとかナマコとかカニとか――とくに下半身はそのまま、モチーフになった生き物の形を生かしたデザインになっています。

感情を乗せたキャラクターのお芝居を描くのは楽しい

――第17話「人魚の奇跡!変身!キュアラメール」で、中谷さんは作画監督を担当しています。キュアラメールが初めて変身するという重要なエピソードだったわけですが、作画監督を手がけてみていかがでしたか?
中谷 ローラの感情がマックスになるあたりに重点的に修正を入れています。変身前、怒り心頭で「絶対に許さない!」と言っているローラと、その後、人間になった喜びを爆発させる場面ですね。そこは力を入れて修正を入れました。作画監督は本当に楽しくて、久々にできてうれしかったですね。

――デザイン作業よりも楽しいですか?
中谷 楽しいですね。やっぱり感情を乗せたキャラクターのお芝居を描くのは楽しいです。第17話では、いいところだけ作画監督をやらせてもらって、申しわけないなと思っているんですけども。

――あと、今回の『トロピカル~ジュ!プリキュア』はコメディ要素が強いこともあって、キャラクターの崩し顔が多い印象があります。あれは中谷さんのほうでどの程度まで指示しているのでしょうか?
中谷 じつは、設定にはキャラクターのギャグ顔みたいなものはないんですよ。ただ、第1話は土田さんが描かれたコンテの時点でギャグ顔の表現がかなり入っていたので、その影響が大きいんじゃないかなと思います。あと、第1話の作画監督が上野ケンさんだったので、かなり自由に、コミカルにやっていただけたんです。あの第1話が基準になって、他の作画監督さんもやられているのかな、という感じはしますね。私自身、総作画監督としてちょこちょこ修正を入れているんですけど、みなさん、かなり自由にやっていただいています。

見た目とは裏腹に、地に足がついた題材を扱っている

――今回の『トロピカル~ジュ!プリキュア』は、中谷さんの中でどういうシリーズになっていますか?
中谷 かなりローカルな題材を、細かくやっているなと思います。お弁当作りだったり、保育園に保育士の体験に行くエピソードだったり、日常のリアルな部分、地に足のついた題材を丁寧にやっているなあ、と。なので、見た目とは裏腹に、シリーズとしてはじつはそんなにぶっ飛んでいない(笑)。もちろん、キャラクターのお芝居や表情は、面白おかしい感じになっているんですけど、扱っている題材自体はかなり地に足がついているな、と思います。ギャグものは見るのも描くのも大好きなので、キャラクターたちがとにかくコロコロといろいろな表情をして大騒ぎするのが楽しいですね。

――中谷さんが『プリキュア』シリーズで大切にしているところはどこでしょうか?
中谷 考え始めると難しいんですけど……。やっぱり自分が子供のときに見て、感じたアニメの原体験。私自身、『美少女戦士セーラームーン』だったり、『魔法騎士レイアース』を見て育ってきたので、そのときに動いた感情を呼び起こしながら作っているところはあります。

――シリーズはこれから折り返し地点に入るかと思いますが、今後の見どころ、ポイントを教えてください。
中谷 これ、どこまでしゃべっていいのかわからないんですけど、「30分の枠でこんな変わった構成をやるんだ!」という回があって、そこが個人的には楽しみです。あと、この記事が載る頃には夏休み編が始まっていると思うんですが、まなつの実家がある南島乃島で、彼女たちがいったいどんな体験をして、どんな思い出を作るのか。ぜひ楽しんで見ていただければ、と思います。endmark

中谷友紀子
なかたにゆきこ。1986年生まれ、愛知県出身。高校卒業後、スタジオガッツに所属。アニメーターとして関わった主な作品に『プリキュア』シリーズのほか、『ONE PIECE』『名探偵コナン』『ベイブレードバースト』『ヘボット!』など。
書籍情報

中谷友紀子 東映アニメ―ションプリキュアワークス2
2022年9月16日(金)発売 
監修/東映アニメーション
価格/2,860円(本体2,600円+税10%)
A4変形判/112ページ
ISBN/978-4758017831
発行/一迅社 

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