TOPICS 2023.03.28 │ 12:00

作りたかったのは「背中を押してくれる作品」
『ツルネ -つながりの一射-』山村卓也監督インタビュー①

弓道にかける高校生たちの思いを爽やかに描き出す青春アニメ『ツルネ -つながりの一射-(以下、つながりの一射)』。約4年ぶりの新作となるこの第2期を、山村卓也監督はどんな思いで手がけてきたのか。インタビューの前編では「弓」を描くうえで大切にしていることや、この作品ならではの魅力について、じっくりと話を聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

――第1期と第2期の間に『劇場版ツルネ ─はじまりの一射─(以下、はじまりの一射)』の公開がありましたが、TVアニメの第1期からは4年ほど時間が空いたあとの第2期になりました。制作決定を聞いたときの第一印象はどんなものでしたか?
山村 第1期のときには描けなかった湊たちの魅力を、より掘り下げて描きたいと思いました。あと今回の第2期では、いろいろ新しいことにも挑戦していますね。第1期では色味がワントーンの画面でしたが、第2期では陰影を強調しつつ彩度を高くして、よりきらびやかな画面構成にしています。じつは『はじまりの一射』もそのようにしていて、たとえば、弓道場に光が差し込む場面では、斜めに入っている影をしっかり際立たせました。それによって、弓を引くシーンをカッコよく締める効果を狙っています。

©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会

――そんな変化があったんですね! 作品を拝見すると、静的なレイアウトでしっかり見せる一方で、弓を引くシーンはダイナミックな動きで見せたりと、緩急がはっきりした構成が魅力的です。
山村 第1期を制作していた際、弓道の試合を見に行く機会があって「静と動が入り混じった競技なんだな」と知りました。そのときの自分の感覚をアニメーションにしたい、と思いました。さっきまで笑いながらわちゃわちゃしていた高校生たちが、いざ弓道場に入って弓を引くと、大人顔負けの表情になる。しかも弓が当たっても外れても、表情が変わらない。その凛としたカッコよさを描きたいと思ったんです。

――なるほど。あと第2期でも目のアップや、瞳を使った細やかな芝居が印象的です。
山村 よく「目は口ほどにものを言う」と言いますけど、たとえば、何かを言われてキャラクターが動揺したとき、それがどこに表れるかというと目なんです。そんなふうに、キャラクターたちが抱えている感情を目で表現したかったというのがあります。あと弓道の試合に行くと感じるんですが、その場にいる人たちは弓を引いている人のことをしっかりと見ているんです。そういう真剣な眼差しを描きたかったというのもありますし、『ツルネ』は湊がいろいろな人の射(しゃ)を見ることによって成長していく物語でもある。そういう意味で、瞳の描写は大切にしたいと思っています。

©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会

――監督は全13話のうち、8本の絵コンテを担当していますね。
山村 描きました(笑)。もともと第2期の制作が始まった頃から、全話数の絵コンテを描きたいと思っていたんです。冒頭の3話は物語の指針になるエピソードでもあるので自分で描きたい、と。とくに第2期は『はじまりの一射』に比べてカメラワークなど、いろいろと変えている部分があったので、スタッフ全員にコンテの形で方向性を示したかった、というのがあります。結局いろいろと立て込んだので、全部は描けませんでしたが……。

――カメラワークが変わっているというのは、具体的にはどういうところでしょうか?
山村 第1期では、弓を引くシーンは基本的にカメラは固定で、矢を放つ瞬間にカメラを動かすような表現でした。今回の第2期では3Dを駆使して、大胆にカメラを回り込ませる手法も使っています。弓道をよりダイナミックに、よりカッコよく見せたいな、と。

©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会

――ちなみに弓道の動作が丁寧に描かれていることにも驚かされるのですが、取材をしたのでしょうか?
山村 第1期のときに、湊たちの流派の高段者の方々の取材をしました。

――そうだったんですね。コンテに話を戻すと、第5話は海斗と七緒にスポットを当てたエピソードになっています。
山村 脚本を読んで「ここは絶対に自分がコンテを描こう」と思いました(笑)。というのも、海斗と七緒のすべてがここに詰まっていると思ったんです。第1期のときに、ふたりの関係を描き足りなかったという思いがあったんですが、それが今回はかなえられるな、と。

――幼少期の回想シーンが挟まるなど、ふたりの背景がよく伝わってきました。
山村 海斗と七緒はお互いに守り合っている関係だと思うんです。海斗は七緒を直接守っているし、一方の七緒は寄り添うことで海斗を守っている。ただ、ふたりは互いを対等な存在としては見ていなかったんです。この第5話を通して、守りたい存在から対等な存在へと、ふたりの関係が変わっていきます。

©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会

――第1期における、湊と静弥の関係とも重なるところがあるように思います。
山村 そうですね。第1期のときは七緒が湊を励ましていましたけど、今回は湊が七緒を励ます側に回る。そこがすごくいいな、と思います。

――続く第6話も、監督のコンテ回ですね。このエピソードでは、女子部員たちにスポットが当てられています。
山村 妹尾と花沢、白菊の3人も、ちゃんと日々頑張って弓を引いているんだよ、というところを見せたかったんです。あとは女子の試合をただ描くだけではなくて、それを見た男子たちが影響を受ける。そこを描きたかったんですよね。弓道のシーンをずっと描いているとカメラワークがだんだん悩ましくなってくるんですが(笑)、うまくいったかなと思います。女子部員たちが弓を引く凛とした姿をちゃんと見せようと思った結果です。endmark

©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネⅡ製作委員会
山村卓也
やまむらたくや 京都アニメーション所属。アニメーション監督、演出、原画を担当。『ツルネ -風舞高校弓道部-』が初監督作となる。
作品概要

TVアニメ第2期 『ツルネ -つながりの一射-』
TOKYO MX、ABCテレビ、BS11他にて好評放送中。

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