TOPICS 2021.08.17 │ 12:00

上田麗奈 ニュー・アルバム『Nebula』
フォト&インタビュー 前編

声優として数々の話題作でヒロインを演じる一方、音楽活動でも独創的な作品を発表し続け、注目を集める上田麗奈がニュー・アルバム『Nebula』をリリースする。前編となる今回は、前作『Empathy』から3月に開催された1stライブを経て、本作にいたるまでの心情を追った。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/矢澤睦美(Sweets) スタイリング/下田 翼(ant.)

制作中に襲ってきた「スランプ」

――『Empathy』では「自分のこだわりとスタッフの方にまかせる割合を『50:50』にして作った」と語っていましたよね。『Nebula』ではどのようなかたちだったのでしょう?
上田 最初に「この曲はこういう感情で、時系列はこうで」という大枠は私が決めたんですけど、曲を発注して、プリプロをやって……というその後の作業は、もう「0:100」ぐらいの感覚でした。

――心の流れみたいなものをアルバム全体でひとつのストーリーに落とし込む、その方針がまず決まったと。
上田 そうですね。『RefRain』は自己紹介の曲が多くて、本当に自分っていう領域の中で完結したアルバムでしたが、それに対して『Empathy』はアラカルトのような形式で、いろいろなところにつながっていくアルバムでした。つながった結果、自分以外のものと自分を比べちゃったり、劣等感を感じたり、嫉妬したりっていうところから脱却していく経験を描こうと思ったのが『Nebula』なので、自分が本当に体験したことをセットリストのようにつなぎ合わせて「これで!」とお渡ししました。そこから、どの曲をどのアーティストの方に担当してもらおうか、という話し合いまでは立ち会っています。この曲の、この感情を表現してもらうにはこの方がいいんじゃないか、とか……。

――曲のキャスティング会議みたいなことをやったわけですね。
上田 そう、まさにキャスティング会議ですね。私から名前を挙げたのはコトリンゴさん、広川恵一さん、あとrionosさんあたりで、埋まっていなかったところをスタッフの方から紹介してもらって、という感じです。

――そこから今回は「0:100」でおまかせしたという作業の展開はどうでしたか?
上田 じつは一度、つまずいてしまったんです。上がってきたデモを聞いて、もう少し違う感じも聞いてみたい、という話をしているあたりで、微妙に噛み合わなくなってきてしまって。ちょうどその頃、アフレコでもコロナ禍で収録のスタイルが変わったことにとまどって、スランプ気味だったんです。掛け合いのシーンを抜き録りで演じたときに「今の私のお芝居、成立していたかな……」と不安になったり。

――難しい心理状態だったのがアルバム制作にも影響していたと。
上田 自分に自信がなかったので、意見を言うのも怖くて。何が正解かもわからなくなって、もう少し違うものにしたいけど、どうしたらいいのか、それを言語化するのも怖い……そんな状態でした。そんなスランプの状態で完成した音源もあって、最終的にできあがったものに関しては後悔はしていないんですけど、果たしてみなさんにはどう聞こえるんだろう? と思う気持ちはあります。

――そういう状態から戻ってこられたのは何がきっかけだったんですか?
上田 ライブが挟まったからですね。

――ああ、そのタイミングでライブが入ってくるんですね……。
上田 本当はライブの前に全部の作業を終わらせる計画だったんですけど、私がそういう状態になっちゃったので、「1回ライブに集中しましょうか」と。ライブを終えた頃にはコロナ禍での収録にも慣れてきて、普段の自分を取り戻せていました。

――ヘビーな状況でのライブだったんですね。
上田 当日はプレッシャーでロボットみたいになっちゃうんじゃないか、と不安だったし、怖かったです。でも、終わったあとに感謝の気持ちがすごくあふれてきて。自分が集中して取り組めて、まわりの人たちもすごく大事にステージを作ってくれた実感があったし、みんなで何かを生み出す楽しさをあらためて味わえたのが大きかったのかな。この感謝をスタッフの方たちにお返ししたいという気持ちになりました。

自分を絞り出して何かを作るのは大変、だけど――

――『Nebula』を含めた3作を並べてみると、上田さんの中にあるものをそれぞれの切り口で表現することに挑んできた成果だと思う一方で、いつも大変な作り方をしているなと思うんですが……。
上田 めちゃくちゃ大変です(笑)。でも、私って読解に瞬発力がないタイプなんです。じっくり考えずにやったら、本当に混乱したまま終わってしまう。それは避けたいなと思っていて。せっかくたくさんの人が集まってくれているのに、そんな状態で終わったらもったいないし、失礼ですよね。だから、過去のことも未来のことも今のことも、常に考えておかないと対応できないし、そうしないと納得したものができないんだと思います。endmark

上田麗奈
うえだれいな。富山県出身。81プロデュース所属。2014年にTVアニメ『ハナヤマタ』の関谷なる役で初主演。他に『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ギギ・アンダルシア役、『ポケットモンスター サン&ムーン』マオ役、『SSSS.GRIDMAN』新条アカネ役、『私に天使が舞い降りた!』星野みやこ役など。2016年にソロデビューを果たし、今年の3月には1stライブ『上田麗奈 1st LIVE Imagination Colors』を開催した。
作品情報

上田麗奈『Nebula』
品番/LACA-15884
価格/3,300円(税込)
発売日/2021年08月18日

〈収録曲〉
01.うつくしいひと
作詞・作曲・編曲/rionos

02.白昼夢
作詞・作曲/ChouCho 編曲/村山☆潤

03.Poeme en prose
作曲・編曲/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

04.scapesheep
作詞・作曲・編曲/TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

05.アリアドネ
作詞・作曲/山田かすみ 編曲/Saku

06.デスコロール
作詞/良原リエ 作曲・編曲/Babi

07.プランクトン
作詞/上田麗奈 作曲・編曲/広川恵一(MONACA)

08.anemone
作詞/Annabel(siraph) 作曲・編曲/蓮尾理之(siraph)

09.わたしのままで
作詞/Annabel(siraph) 作曲・編曲/照井順政(siraph)

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作詞・作曲・編曲/コトリンゴ