TOPICS 2022.01.04 │ 12:00

『戦闘メカ ザブングル』40周年 湖川友謙インタビュー①

主人公なのに饅頭(まんじゅう)のような丸顔が特徴的な『戦闘メカ ザブングル(以下、ザブングル)』の主人公ジロン・アモス。前作となる『伝説巨神イデオン(以下、イデオン)』から一変したキャラクターデザインと、本来描きたかった『ザブングル』ならではのギャグについて、キャラクターデザインおよびチーフ作画監督を務めた湖川友謙(こがわとものり)氏に聞いた。

取材・文/富田英樹 撮影/篠部雅貴

紆余曲折あった『ザブングル』の企画スタート

――2022年は『ザブングル』が放送されてから40周年となる記念の年ですが、もともとは『エクスプロイター』という別の企画だったそうですね。この企画のスタート段階の事情についてお聞きしたいのですが。
湖川 吉川惣司さんとの初顔合わせで『イデオン』のシリーズ中盤で考えていたキャラを持参したんだけど、吉川さんは『イデオン』のキャラを想像していたらしく、「こんなキャラデザインで他はどうするの?」と聞いてきた。で、俺が「世界観はできているので、他は右手が勝手に創ってくれます」と答えたら、「僕は『太陽の牙ダグラム』みたいなキャラしか描けない」と言って驚いていました。なんで吉川さんは、この企画を降りちゃったんだろうね?

――いや、それを聞きたくてお伺いしているんですけども……。
湖川 あ、そうか(笑)。でも、当時はそんな事情まで突っ込んで聞く気もなかったから、よく知らないんです。突然の話だったので驚いたというだけで。

『エクスプロイター』初期カラーボード ①ジロン・アモス(企画セールス用原案) ②エルチ・カーゴ(企画セールス用原案) ③キッド・ホーラ(企画セールス用原案) ④エルチ・カーゴ(企画セールス用原案第2稿) ©創通・サンライズ

――企画の変更はさておき、その段階ですでにキャラクターデザインの原型はあったわけですね。
湖川 そう、当初からギャグをやりたかったからキャラクターデザインにもそういう要素を取り入れていたんだけど、当時はそれが受け入れられなかったみたいで。昔はアニメ雑誌も多かったから、たくさん取材に来るんだけど「サンライズのロボットものの主人公が、こんな丸顔でいいんですか?」ってみんなから文句を言われた(笑)。

――ロボットアニメの主人公としては異色でしたね。
湖川 サンライズのロボットアニメの主人公がアンパンみたいな顔なのはなんでだって聞かれても、いや、それは俺がやりたいからだとしか答えようがない(笑)。でも、放送が始まってみたら人気も出たし、デザイン的には間違っていなかったわけだよね。

――吉川さんと仕事を一緒にしたことはないんですか?
湖川 吉川さんが絵コンテで演出は別の人がやったのを一本、作画した記憶はある。当時、サンライズが井荻に借りていた別室に呼び出されて、行ってみたらお富さん(富野由悠季)がいたんです。それで開口一番に「僕でいい?」って言われた。「今回はかわいいキャラなのね」とか言っていたのをおぼえています。だからキャラクターデザインは吉川さんに見せた段階からほとんど変化はなくて、世界観やストーリーをお富さんが考えてからは、それに合わせて衣装を変えたりした程度ですね。

ドタバタ劇ではない「動きの中のギャグ」

――ギャグをやりたかったというのは、キャラクターデザインではなくてアニメーションとしてのギャグということですか?
湖川 それは両方ですよ。キャラも動きもギャグをやりたかった。それで『ザブングル』以前にもギャグをやろうとして「つぶし」「伸ばし」(※編注:動きのデフォルメ)や「リアクション」とかいろいろと試したことがあったんだけど、そのドタバタだけを真似されて蔓延してしまったことがあるんです。それは変な恰好(かっこう)をさせるだけとか、表層的なことなんだけど、俺が本当にやりたかったのはそうじゃない。『ザブングル』では、そうじゃないギャグをやりたかったんです。

――ドタバタではない作画のギャグというのはどういうものですか?
湖川 動きの中にキチッと洒落が成立しているギャグ、と言うのかな。日本人は変な恰好をさせれば面白いと思っている人が多いけど、そうじゃなくて、なんでこんな動きをさせるのかというところで面白さを見せたかったわけです。

――カートゥーン的な面白さですか?
湖川 あれはあれで素晴らしいものだけれど、それを日本のアニメでやれる人はかなり少ないと思う。これは俺自身も悪いんだけど、『ザブングル』でやりたかったことをお富さんにきちんと言っていないんだよね。こういうギャグをやりたいと伝えていなかったから、それは絵コンテにも反映されないわけですよ。第1話なんか普通に作劇しているだけで9,000枚もかかってしまった。だから『ザブングル』の世界というものを、俺ひとりが勝手に考えていたわけですよ。しかも、スタートしてすぐに劇場版の『イデオン』に移ってしまったものだから、毎週『ザブングル』を見ては「こんなの『ザブングル』じゃない」と思っていた。『ザブングル』に戻って来られたのは第27話からだったから、この時点ではもう本来やりたかったギャグはできない。だから、めちゃくちゃやってみたの。そうしたら演出もそれが面白いと思ったのか次第にそういう絵コンテになってきたけれど、作画は終始ドタバタで終わってしまった。俺はドタバタは嫌いなので、『ザブングル』ではそうじゃないものができなかったのがとても悔しいという思いがあるんです。でも、『イデオン』の劇場版とどっちをやるべきだったかというと、発動篇をやらないというのも問題があるでしょ?

――大問題です。
湖川 そうだろ(笑)。『ザブングル』も気になるけど『イデオン』はきちんとやりたいし、どっちもやるのは時間的に不可能だったから仕方がない。だから『ザブングル』の後半はめちゃくちゃにやってみたんだよね。若かりし頃の思い出ですよ、32歳くらいの頃だね(笑)。endmark

湖川友謙
こがわとものり アニメーションクリエイター。1950年生まれ、北海道出身。彫塑家を志して上京するも、なぜかアニメーション制作会社へと就職する。その後はアニメーターとして活躍し、1980年代には富野由悠季総監督によるサンライズ作品にキャラクターデザイナー、アニメーションディレクターとして数多く参加、『無敵鋼人ダイターン3』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』などで一世を風靡した。
商品情報

戦闘メカ ザブングル

Blu-ray BOX
2022年3月発売予定

  • ©創通・サンライズ