TOPICS 2024.04.26 │ 18:00

自分の好きを見つける物語
『夜のクラゲは泳げない』竹下良平監督インタビュー②

4人の少女たちによる匿名クリエイティブ活動を描いたオリジナルTVアニメ―ション『夜のクラゲは泳げない』が面白い。ガールミーツガールをきっかけに自分の「好き」を見つけ、手を取り合いながら前へと突き進んでいく圧倒的青春感と、そこに立ちはだかる壁。インタビューの後編では、竹下良平監督にキャスト陣の起用の決め手を聞きつつ、これまでの展開を振り返ってもらった。

取材・文/岡本大介

キャスト陣の芝居には100%満足

――メインキャストの4人について、起用の理由やディレクションのポイントを教えてください。
竹下 光月まひる役の伊藤美来さんについては、ごく普通な女子高生という設定でありつつも、とても耳に残る芝居や声で、そこが主人公としての華があると思ったのがポイントでした。アフレコでお願いしたのは、ツッコミ役でもあるので、やや意地悪な雰囲気を出してほしいということ。日常生活で小さな我慢を重ねていたことによる、少しだけひねくれたような意地悪さがまひるに欲しかったんです。山ノ内花音(やまのうちかの)は女の子が憧れる女の子なので、カリスマ性のあるかっこいい芝居が必要なんですが、同時にどこか抜けているところもあるので、そのギャップが大切でした。高橋李依さんの芝居からは、まさにそのギャップをすごく感じて、彼女しかいないと思いましたね。

竹下 渡瀬キウイは4人の中でも、とくに感情を爆発させる芝居が必要なシーンがあるんですが、富田美憂さんはその爆発力を見事に表現していました。キウイってネットでは強気だけどリアルでは弱気なので、アフレコではとくに内弁慶な感じをお願いしました。そして、高梨・キム・アヌーク・めいについては、とにかく島袋美由利さんのオタク芝居がすごくうまくて、そこに尽きます(笑)。島袋さんは現場でもほぼディレクションが必要なかったくらい、最初から完全にめいだったと思います。

――皆さん、序盤からキャラクターをしっかりつかんでいた印象ですか?
竹下 そうですね。むしろ「まひるってこういう子だったんだ」とか、自分たちが知らなかったキャラクターの新しい一面をキャストさんたちに丁寧に補完してもらえたような気がしていて、監督としては100%満足しています。

――現在第3話までが放送中です。第1話ではとくに電車や雑踏の音など、渋谷のリアルな雰囲気が伝わってくるのが印象的でした。
竹下 第1話と第2話は私が絵コンテを担当しているのですが、つねに音を想像しながらコンテを描いています。とくに第1話に関しては「電車」を演出の軸にしているんです。たとえば、ゴーッという電車の通過音は、まひるの気持ちを急かす役割もあるし、全体的に感情の揺れ動きを暗示していたりもします。

――先ほどのお話の中にも出てきましたが、渋谷の街並みを望む歩道橋でのシーンも印象的でした。
竹下 このシーンはまひると花音、ふたりの最初の心のすれ違いを描くシーンなので、かなり力が入っています。脚本からコンテ、さらに作画でも試行錯誤を繰り返しましたね。長い会話劇とメインキャラ同士の言い争いが続くシーンということもあって、視聴者にストレスを与えないよう、作品理解が高く、演出目線の作画が描けるメインアニメーターの太田(慎之介)さんに担当していただきました。とてもうまく映像に落とし込んでくださっています。あとは風景が印象的に見えるよう、ライティングにもこだわっています。

特別じゃないまひるたちを身近に感じてほしい

――第2話は、めいのピアノシーンなど、高難度な作画も光っていました。
竹下 めいのピアノシーンは、音源的にはピアニストのハラミちゃんに弾いていただいています。また、作画は動画工房生え抜きの演出家である大迫(光紘)君と、同期のアニメーターの水野(公彰)君という若いコンビが、実際にハラミちゃんの演奏を見に行ったうえで作業しています。運指など、そこで撮影させてもらった映像を見ながら描いているので、大変だった分、きっと思い入れは強いと思います。

――竹下監督が第2話で印象深いシーンはどこですか?
竹下 最後の家電量販店でめいが花音とまひると一緒に写真を撮るシーンですね。第2話で描きたかったのは、最初は推しとそのファンの関係だった花音とめいが、友達になった瞬間です。めいは最初、ファンが推しを撮影するように、遠くからこっそり花音のことを撮影しようとするんです。でも、それに気づいた花音が、まるで友達に見せるかのような笑顔をカメラに向けるんですよね。めいはこのときに初めて花音が自分のことを友達だと認めてくれていると気づき、だからこそ、自分も一緒に写真の中に収まろうとカメラの向きを変えます。こういう「ファンから友達になった瞬間」を第2話を通して描きたいと思っていました。

――第3話はいかがですか?
竹下 第3話は、特定のシーンというよりは、シナリオの流れ全体が好きですね。キウイがクラスの人気者ではなく、じつは学校に行っていなかったという秘密が明らかになる流れと、まひるが学校の文化祭でアメノウズメを演じるサビのダンスシーンがうまく絡んでいます。キウイが家を出て、まひるに今のありのままの自分を見せるまでの流れが綺麗に描けたんじゃないかなと。

――さて、第3話で4人のキャラクターが揃いました。第4話以降の見どころについて聞かせてください。
竹下 この4人が抱えている問題って、じつはまだ解決しているわけではないですよね。たとえば、まひるはやっと絵を描き始めましたけど、クリエイターとしては一歩目を踏み出したばかりですし、花音がアイドル時代になぜ人を殴ったのかなども明らかになっていません。第4話以降では、この4人が悩んだり成長したりしながら、過去の自分を認めて受け入れていく姿を描きたいと思っています。

――今は動画や音楽などの作品を投稿している人も多いですし、クリエイターを目指す学生や若者にも刺さりそうですね。
竹下 そうですね。そもそも私たちもクリエイター集団ですから、クリエイターの「あるあるネタ」をたくさん詰め込んだつもりです。それに、まひるたちは決して特別な存在というわけではないですから、きっとキャラクターたちに共感してもらえると思うんです。そのうえで、見ている人も自分の中にある小さな「好き」を大事にしようと思っていただけたら、私としては本当にうれしいです。ぜひ最後まで楽しんでください。endmark

竹下良平
たけしたりょうへい 宮崎県出身。主な仕事に『エロマンガ先生』監督、『ポケットモンスター 放課後のブレス』監督、『呪術廻戦』第2クールEDのコンテ演出、『先輩がうざい後輩の話』OPコンテ演出など。
作品概要

オリジナルTVアニメ『夜のクラゲは泳げない』
好評放送&配信中!

  • ©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会