あかりの変化には親戚のおじさんのような感慨があった
――大人になった5人のメインキャラクターや新キャラクターたちのビジュアルは、原作者・あfろ先生の原案があるそうですね。
京極 脚本の方向性が固まったあたりであfろ先生に要望などをお伝えし、どんどんデザインを上げていただきました。それを見ながら、こちらでさらにイメージを膨らませていきました。
――原案を見て、とくに変化に驚いたキャラクターはいましたか?
京極 千明の髪型については第1作目の大人バージョンからガラッと変えたものを最初にいただいて驚きました。それがまた大人っぽくてカッコいいんです。結局、他キャラとのバランスを考えて今のデザインに落ち着きましたが、あfろ先生の千明に対する熱いこだわりを感じました。あと、(犬山)あかりについては、やはりびっくりしましたね。
――小学生が大学生になっているので、いちばん変化が激しいですよね。
京極 でも「なるほど、こう来たか……!」と思いましたし、「ちょっと見ない間に、こんなに大きくなって~」という親戚のおじさんみたいな感慨がありました(笑)。
――(斉藤家の愛犬の)ちくわが元気なのもうれしかったです。
京極 ちくわに関しては、あfろ先生から「ここだけは守ってください」という作画時の注意点をいただいたんです。「お年寄り感」を出すために目を開けないということだったのですが、これまでそういった指示をいただくことはあまりなかったので、犬に対する愛情やこだわりを感じました。
映画も空腹時には要注意!
――7月16日(土)には『ゆるキャン△』の舞台でもある山梨県身延市で「道の駅しもべオートキャンプ場~ゆるキャン△の里~」がオープンします。キャンプ場作りに関する取材は、やはり、この「ゆるキャン△の里」で行ったのですか?
京極 じつは僕は「ゆるキャン△の里」のことは全然知らなくて、かなりあとに聞いたのですが、最初はエイプリルフールのネタだと思いました(笑)。ロケハンでは、本栖湖キャンプ場のオーナーさんにお話を聞いたり、実際に脱サラをして一度潰れたキャンプ場をリニューアルオープンされた方にお話を聞いたりしています。それが「芦安キャンプサイトNo.2」というキャンプ場で、モデル地のひとつなんです。管理しているのは20代の若い方で、20代でキャンプ場を作るのも有り得る話なんだと非常に触発されました。話を聞いていると、やはり草刈りが大変そうで、キャンプ場は作ったあとの維持が大事なんだなと感じました。
――TVシリーズと同じく、なでしこたちの作るキャンプご飯が美味しそうで、空腹時に見るのは危険な作品になっています。キャンプご飯のメニューもオリジナルですか?
京極 基本的には「こういう季節で、こういうシチュエーションで食べるご飯なんです」とお伝えして、先生からアイデアをいただいています。先生の料理のアイデアは目の付けどころが新鮮ですし、いつも驚かされます。
どうやったら映画らしい盛り上がりを作れるか考えた
――本作は、京極監督にとって初の劇場監督作にもなりました。「映画」ということでこだわった点や、TVシリーズとの違いがあれば教えてください。
京極 ドラマの起伏などは、TVシリーズを1話ずつ作るのとは違ったやり方があると思うので、脚本の田中(仁)さんたちと相談して、どうやったら映画らしい盛り上がりを作れるかと考えました。ただ、あまり激しい起伏は『ゆるキャン△』という作品にそぐわない。かといって、映画としてのある程度の起伏は作らないといけない。どんな物語がいちばん『ゆるキャン△』らしさを感じられるのか、そのさじ加減には悩みました。作品のカラー的に「王道」の手法が採りにくい難しさはありましたね。
――公開初日から、多くの『ゆるキャン△』ファンが映画館を訪れていますが、監督として現在はどのような心境ですか?
京極 この情勢下で、わざわざ映画館まで足を運んで見ていただいた皆さんには本当にありがとうございますという思いです。もともと『ゆるキャン△』は見た方によって、いろいろな感じ方ができる作品だと思うので、この映画でもいろいろなことを感じていただけたならうれしいです。これからも『ゆるキャン△』をよろしくお願いします。
――映画『ゆるキャン△』に興味があって、まだ劇場に足を運ぶ前の読者の方にもメッセージをお願いします。
京極 僕らはTVシリーズを第1作目、『SEASON2』と作ってきて「やり切った」という思いがあったと同時に「『ゆるキャン△』って、まだまだ奥があるんだな」と感じることも多かったんです。いろいろな魅力を秘めている作品ですし、この映画ではまた新しい魅力も感じてもらえると思うので、これまでのお客様はもちろん、新しいお客様にもぜひ見ていただきたいなと思っています。
- 京極義昭
- きょうごくよしあき アニメーション演出家。『黒子のバスケ』『東京喰種』『スタミュ 高校星歌劇』などの作品に演出として参加し、2018年『ゆるキャン△』で初監督。映画『ゆるキャン△』は初の劇場監督作となる。